ガンホーの『ラグナロクオンライン』での通貨不正作成で思うこと(2)

2006年07月23日 18:00

先に【ガンホー(3765)、元職員による同社『ラグナロクオンライン』への不正アクセスを発表】で報じた、ガンホーの元職員(とはいえ実行時には職員そのものだったのだが)による大量のゲーム通貨偽造事件。情報の再整理と検証のその2。書きながら思うのだが、これらの要素は皆、前々から指摘・危惧されてきたことであり、「いまさら」感も否めないのが残念である。

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3.ガンホー内体制の問題

過去においてもガンホーには何度と無くシステム的な管理体制の甘さ、BOT(自動化プログラム。ユーザーが操作しなくても勝手にキャラクタが動いて敵をやっつけたりし、アイテムやお金を手にいれる仕組み)によるゲーム内でのアイテム・通貨取得によるバランスが崩れる問題などが指摘されていた。体制の強化をNHKで報じてもらったりし、努力をしている様子もうかがえたが、それでも事態そのものは改善されていないように見受けられる。【オンラインゲームに関するトラブル急増中、国民生活センターが注意】で記事にしたが、【国民生活センター】でも(ガンホーに対する意見が多かった事ががうかがえるような内容の)勧告が行われている。

利用者から寄せられた情報の大半は、「ゲーム利用時、利用規約上の禁止行為であるBOT行為やRMT(リアル・マネー・トレード)をしている利用者が多く、業者に報告したにもかかわらず取り締まりを行っていない」という苦情である。なかには、「BOT行為とRMTは密接な関係にあり、BOT行為で自動的に敵を倒し、容易に多くのアイテムや通貨を得て、RMT専用サイトやオークションサイトを利用して現実のお金と交換し、利益を得ているのではないか」というものもあった。その他、「接続障害でゲームが利用できない」、「突然、運営業者からアカウント停止処分にされた」という苦情も多い。


あたりがまさに該当する。

今件でも「不当操作」の開始からデータログ抽出による異常の検出で事態が発覚するまでに半年近くかかっていたあたり、危機管理体制への備えが(あったとしても)甘かったことがうかがえる。

リリースでは今後各種対応策を採り、セキュリティ面などで体制を強化していくとあるが、同じような発表はこれまでに何度と無く行われている以上、「おおかみ少年」の童話ではないが、「はいそうですか」と信じるユーザーも多くはないかもしれない。

【4Gamer.net】の取材では「(事態が発覚した)3月24日に定期チェックで30億ゼニーが増えたことで発覚した」とある。ここから、「ゲーム内通貨の全体量をチェックするシステムそのものは存在している」ということが確認できる。が、同時に半年近くそのチェックを潜り抜け、結果として7000億ゼニー近い通貨の不正な作成を許したということは、そのシステムが事実上ザル以外の何物でもなかったことを表している。

4.ゲーム管理側が「通貨」を創生するのは良いことか

一部記事では「GM(ゲームマスター。システム側によるゲーム内管理を行う人物。時に特定のキャラクタでゲーム内に登場する)がゲーム内通貨を作るのは良くない」という話がある。完全な自由経済である、限定された経済エリア内での金品のやり取りや経済バランスはその世界の中でのやり取りにまかせるべきであり、システム側であろうとも第三者が勝手に手を出すべきではない、というものだ。もっとぶっちゃけると「GMがフリーハンドでお金をゲットするなんてズルい」というところか。

確かにゲームとはいえ資本主義社会が構築されている以上、通貨の流通のバランス調整は非常に難しい。日銀によるゼロ金利政策だの何だのが世間で騒がれ、多種多様な意見が取り交わされていることからも分かるだろう。この問題は老舗にあたる『ウルティマ オンライン』などでも問題にされている。そして今にいたるも継続しているゲームたちは、さまざまな失敗や経験を経ながら、バランスの調整を続け、成功を収めている。

たかがゲームとあなどるなかれ。多人数が参加する市場原理が働く経済体である以上、さまざまな経済論理が働き、バランスの調整が必要なのは当然のことなのだ。

個人的には「GM側が通貨を創生すること」は悪いことではないと考えている。実際、自分が体験している某ゲームでもそういう仕組みがあることは随分前から知られている。だが「何の根拠もないところから魔法のように通貨を生み出すことの意味と危険性」について、彼らは十分に認知しており、最小限のボリュームしか実行に移さない。

例えばイベントの際にGMが成り代わった人物の設定で必要になるとか、イベントの過程で必要不可欠な要素の一つとしてアイテムや通貨が必要になった場合である。もちろん制限無い創生が破局をもたらすことは熟知し、また厳格に自制するようルール化されている。概してGM側のモラルも高い(まれに「不祥事」をやらかすものもいるが、そういうことを見つけ出すチェック体制も強固なものだし、発覚した場合の対処もきわめて厳しいものだ)。

だがガンホーは、それらの点において、「問題外」の状況だったことがうかがえる。


■関連記事:
【ガンホーの『ラグナロクオンライン』での通貨不正作成で思うこと(1)】
【その(2)】
【その(3)】
【その(4)】
【その(5)】


(最終更新:2013/08/27)

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