ガンホーの『ラグナロクオンライン』での通貨不正作成で思うこと(1)

2006年07月23日 18:00

先に【ガンホー(3765)、元職員による同社『ラグナロクオンライン』への不正アクセスを発表】で報じた、ガンホーの元職員(とはいえ実行時には職員そのものだったのだが)による大量のゲーム通貨偽造事件。第一報をお伝えしたあと、さまざまな情報が入ってきたのと共に、それらをかいつまんで考え直してみた。当方(不破)が元々ゲーム「関連」業界の中の人だったのと、多人数同時参加型オンラインゲームというジャンルでごく初期段階から継続してプレイを続けているゲームがあり、システムサイドの事情もある程度把握しているという前提のもとでのお話として目を通してほしい。

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1.状況確認

先の記事やそれと前後して配信された他サイトの記事によると、今件は大体このような内容。

・ガンホーの売上のほとんどを占める『ラグナロクオンライン』で職員が不正アクセスを行い、大量のゲーム内通貨(ゼニー)を不正取得。
・該当者は6910億ゼニーを作り出し、システム側が事態を把握したときには910億ゼニーが残されていた。よって、何らかの経由で本来存在してはならない6000億ゼニーがゲーム内に流通した。
・今件の発覚は、ゲームデータの監視業務を実施している過程において、ゲーム内仮想通貨の異常値を検出し、社内調査の結果、当該元職員による不正行為を2006年3月24日に確認した(【NIKKEI NeT】)。【GAME Watch】によれば今行為は2005年10月から行われていたので半年近く「異常値」がシステム側によって検出されなかったことになる。
・流通したと思われる不正通貨は全通貨の6~17%を占める(【INTERNET Watch】)
・不正アクセスは59回、データの改ざんは850回(【NIKKEI NeT】)
・ゲーム内通貨ゼニーの現金との交換レートは、買い取りが80円から90円、業者からユーザーへの売却が100万ゼニーあたり140円から150円([このページ(Sankei Webなど)は掲載が終了しています])
・現行法では該当者へは「不正アクセス禁止法違反」(最大で1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金)しかとえない。


先の記事でも提示をした【ガンホー側のプレスリリース】では最小限のことしかかかれておらず、記者会見のようすやその後のガンホーへの独自取材から補てんされた記事などを引っ張ってみたが、だいたいこのような形だ。

2.「被害額」の再検証

プレスリリースでは該当者の自己申告で、取得したゼニーを業者と換金し1400万円ほどを取得したとある。しかしこれでは単純計算をした場合、100万ゼニーあたり23円強のレートで業者と現金との交換をしたことになる。これでは「買い取りが80円から90円」という現行レートとまったく一致しない。仮に90円で計算すると、

6000億ゼニー÷100万単位×90円≒5400万円

という形になり、5400万円という答えが出てくる。記事によって「レートがあわないので取得額はもっと増える可能性も」「3000万円」という数字が出てくるのもこのあたりからだろう。過少申告の可能性が考えられる。

下衆の勘ぐりになるが、過少申告以外に、もっと「ずる賢い」考えをしている可能性もある。万が一にでも「足がつく」のは、RMT(リアルマネートレード)業者。企業のなりわいとして行っているのなら、何らかの形で記録を残すからだ。だが個人間取引では記録はほとんど残らないといっていい。仮に、1500億ゼニーほどをRMT業者とやり取りして換金し(これは1400万円という数字から逆算)、残りを「対個人で直接売買」したとすればどうだろうか。記録を事実上残さずに現金を手に入れることができる(この「記録を残さずに」の点に注意。後ほど再度スポットライトを充てる)。

対個人売買もそれほど難しいことではない。各種オークションサイトを使えば手間はかかるが技術は必要としないからだ。

もちろん一部は自分のゲームプレーに使ったり、ただで渡したり捨てたりしたことも考えられる。だが元々「現金がほしくてゲーム内通貨を手に入れた」人物が、そのような無駄な、お金にならない行為をするとは考えにくい。


■関連記事:
【ガンホーの『ラグナロクオンライン』での通貨不正作成で思うこと(1)】
【その(2)】
【その(3)】
【その(4)】
【その(5)】


(最終更新:2013/08/27)

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