「ニート」も「ひきこもり」も……「ひきこもり」調査結果を読んで(3)

2008年03月01日 19:40

時節イメージ東京都の青少年・治安対策本部は2月22日、東京都における「ひきこもり」の実態調査結果の速報値を発表した。それに目を通したコメント的な記事のパート3。ここでは「ニート」との類似点や周囲がなすべきことなどについて見てみることにする。

スポンサードリンク

引きこもりもニートも、発生事由は似たようなもの

最初の定義で「別物」としたが、ニートにおいては【「ニート」が「ニート」たるのはシャイな性格とちょっとした不幸がきっかけ】にもあるように、元々の予備要素があり、その上で何かイベント的なきっかけを元に「ニート化」してしまう傾向が強いことが厚生労働省調査で明らかにされている。

今回の東京都の速報データを見る限り、「ひきこもり」においても「ニート」同様に「元々の予備要素」が備わっている人に対し「何らかのイベント(主に不幸)」が起き、それが引き金となって「ひきこもり」群になる様子が見て取れる。

人はすべて画一的なものではなく、強い人もいれば弱い人もいる。幸運な人もいれば不運な人もいる。「ひきこもり」群及びその予備群のすべてに対し、「社会に対する甘えだ」と断じる論調もあるが、それは個人個人の個性など個別格差を無視した考えに他ならない。それぞれが置かれている環境や性格を認識し、その上で手を差し伸べるべきなのかを判断すべきだろう。

なお今回の調査結果はアンケートに回答した人のデータを元に算出されている。当然「ひきこもり」の中には調査に協力すらできない人も多数存在すると想定されるため、今回発表された「0.72%」「2万5000人」という値はあくまで参考値であり、実情の下限と見なした方がよい。

差し伸べる手と、その後が大切

差し伸べる手イメージそのような説明をすると絶望的な気分にもなるが、救われるデータも今調査では出ている。「ひきこもり」群に対し、現状を打破したいという思いから関係機関に相談したいと考えている人は「非常に思う(32%)」「思う(18%)」「少し思う(32%)」と、合わせて82%もの人が相談の意向を持っていた。

自分が「ひきこもり」の状態にあることを認識し、それが「あり地獄」のようなものだと把握し、どうにか抜け出したい。彼ら・彼女らの多くはそのように考え、外から救いの手が差し伸べられるのを待ち望んでいる。彼らに手を伸ばし、そこから引き出してくれるのは、行政など専門家らによる関係機関であり、「元々の予備要素」を構築した家族や学校など彼ら周囲の環境に他ならない。

経験と知識が豊富で適切なアドバイスをしてくれるであろう専門家の助けを得ながら、周囲が手を携えて彼らに救いの手を差し出さねばならない時が来ているのかもしれない。そして救い出した彼らを再び元の場に戻さないよう、対人関係の訓練など行政側が打たねばならない手も多数あるに違いない。


やや余談になるが「古事記」や「日本書紀」に記されている、アマテラスによる天岩戸への「引きこもり」もスサノオの行動がきっかけで起きている。アメノウズメらの踊りによる計略で天岩戸から引き出されたアマテラスだが、その後八百万の神はアマテラスが引きこもった原因のスサノオを追放するという「対処」をほどこしている。

「ニート」や「ひきこもり」対策ではとかくその状態から脱するよう促すことばかりに重点が置かれている。しかしそれではアマテラスを引きずり出したあと、スサノオを放置したままにしたのと同じ。再びアマテラスは天岩戸に引きこもってしまうだろうし、「ニート」や「ひきこもり」は元のさやに戻ってしまう。「ひきこもり」の状態から抜け出たあと、再び踏み入れないような「対処」が欠かせない。

古代の文献ですでに「ひきこもり」の対策が記されていると考えれば不思議なものだが、考え方を変えれば「物事の決まりはシンプルで、昔も今も変わらない」ということなのかもしれない。
(終わり)


■一連の記事:
【都内の「引きこもり」最低でも2万5000人、女性も29%……「ひきこもり」調査結果を読んで(1)】
【「引きこもり」の原因は十人十色……「ひきこもり」調査結果を読んで(2)】
【「ニート」も「ひきこもり」も……「ひきこもり」調査結果を読んで(3)】

(最終更新:2013/08/11)

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ