都内の「引きこもり」最低でも2万5000人、女性も29%……「ひきこもり」調査結果を読んで(1)

2008年03月01日 19:40

時節イメージ東京都の青少年・治安対策本部は2月22日、東京都における「ひきこもり」の実態調査結果の速報値を発表した。それによると都内におけるひきこもりの若者(15~34歳)は出現率で0.72%、推計で2万5000人にも達することが明らかになった。また女性が占める割合が3割近くに登るなど、特異な問題ではなく社会現象の一つとして認識する必要があることを示唆する内容となっている(【発表リリース】)。

スポンサードリンク

今調査は住民基本台帳票を元に無作為抽出された、「ひきこもり」の対象とされうる15~34歳の男女3000人を対象に戸別訪問によるアンケートで行なわれ、うち1388人から協力が得られた。結果、10人が「ひきこもり」と判断されたという。

言葉の定義

ここで今調査における「ひきこもり」の定義をしておく。報告書によれば

「さまざまな要因によって、社会的な参加の場面がせばまり、就労や就学などの自宅以外での生活の場が長期にわたって失われている状態」

「『1)調査項目の「普段の過ごし方」で「自室からほとんど出ない」「自室からは出るが家からは出ない」「近所のコンビニなどには出かける」「趣味に関する用事のときだけ外出する』

のいずれかを選択し、

『2)専業主婦、妊婦など「ひきこもり」と明らかに異なる回答を除いた』

状態にある人


と定義している。

一方で類義語として「ニート」もよく話題に登る言葉であるが、「ニート」は「NEET(ニート、Not in Employment, Education or Training)」の日本語読みで、直訳すると「就業、就学、 職業訓練のいずれもしていない人」。内閣府の定義によれば「高校や大学などの学校及び予備校・専修学校などに通学しておらず、配偶者のいない独身者であり、ふだん収入を伴う仕事をしていない15歳以上 34歳以下の個人」としている。

「ニート」のカテゴリの一つとして、外出を伴わない「ニート」が「ひきこもり」とするという考え方もあるが、SOHOをはじめとする自宅勤務のような職種で糧(かて)を得ている「ひきこもり」の場合は「ニート」には該当しなくなるなど、線引きは難しい。

ひきこもりの特徴……男性・30代・他人と疎遠

「ひきこもり」状態にある人は男性が71.4%・女性が28.6%と男性の方が多い。そして年齢構成比では30~34歳がもっとも多い結果となっている。一般の年齢構成と比較すれば、この年齢層の多さが特異なものであるかが分かるはず。

「ひきこもり」と一般群の年齢構成
「ひきこもり」と一般群の年齢構成

注意したいのは「ひきこもり」の定義が(ニート同様に)15~34歳までであり、調査対象もこの年齢層に限っていること。今回は30~34歳が4割以上という結果が出たが、仮にその上の年齢層にも同じような問いをした場合、「ひきこもり」と同じ状態にあると判断される人数が多数に登るかもしれない。同時に今回調査で「ひきこもり」と判断された絶対人数は少数のため(10人+相談機関などで実施したアンケートによる18人を加えた計28人)、データに荒さがある可能性も否定できない。

調査結果では家族や学校における他人との対人関係と、「ひきこもり」との関係についても提示している。ここはまず最初にグラフ化したものを見てもらった方が早い。

家族との関係
家族との関係
学校での経験など
学校での経験など

それぞれのグラフに赤の縦線を入れ、項目を二つに区切ってみた。この区切り線の左右でそれぞれ対人関係がポジティブ・ネガティブな項目で分けられているのだが、見事に線の左右で「ひきこもり群」と「一般群」の回答率が逆転しているのが分かる。

このグラフからだけでも、率の大小はあれど、「ひきこもり」と定義されている人たちが家族・学校双方において「他人との関係」が希薄である、あるいは愛されていなかったことがうかがえる。また家族においては「両親の仲が悪かった」、学校では「勉強についていけない」など希薄感をもたらす外部的な要因も作用していることが推測される。「ひきこもり」のトリガーを引く原因は何も一つではなく、複数の要素が絡み合い、結果として発生する事象と見なした方がよいかもしれない(これは後述する)。
(続く)


■一連の記事:
【都内の「引きこもり」最低でも2万5000人、女性も29%……「ひきこもり」調査結果を読んで(1)】
【「引きこもり」の原因は十人十色……「ひきこもり」調査結果を読んで(2)】
【「ニート」も「ひきこもり」も……「ひきこもり」調査結果を読んで(3)】

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ