【更新】楽天(4755)とTBS(9401)の攻防戦、本当の正念場が来月末に到来・信託期限切れ

2007年01月28日 09:00

株式イメージ[産経新聞]によると、昨年から現在に至るまで継続している[楽天(4755)]と【TBS(9401)】間の業務提携交渉が正念場を迎えているという。楽天が保有する大量のTBS株式について、この議決権を凍結する信託契約が来月2月の末に迫り、更新・他行への依頼が難しいことから、何らかのアクションを起こさざるを得ないとする指摘だ。

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【楽天(4755)、議決権一部凍結などが内容の覚書を今日にもTBS(9401)と調印】にもあるように、現在交渉中の両社は交渉継続条件として「楽天が保有する10%ほどのTBS株式をみずほ信託銀行にあずけて議決権を凍結する」ことに同意していた。ところが2月末に、この信託期限が切れてしまうのだという。

銀行法第十六条の三の2では

当該銀行又はその子会社は、合算してその基準議決権数を超えて取得し、又は保有することとなつた部分の議決権については、当該銀行があらかじめ内閣総理大臣の承認を受けた場合を除き、その取得し、又は保有することとなつた日から一年を超えてこれを保有してはならない


とあり、法的に所有の期限が区切られていることになる。

元々【みずほコーポレート銀行(8411)】が楽天とTBSの仲介役として取り入った関係からみずほ信託銀行が請け負ったこともあり、同様の条件を他の銀行に任せるのは難しいとされる。かと言って信託せずに議決権をすべて楽天が保有することになれば、TBSとしては「(議決権を振りかざして交渉はしないという)約束を守らないのなら交渉の席にはつかない」とし、楽天を袖に振ることになる。これも楽天の望むところではない。と、なれば楽天側としては2月末までに何らかの形で決着をつけなければならない。

楽天はTBSとの交渉中も【三井物産(8031)】や[電通(4324)]など、ネットに関連する企業と提携を結び、「楽天と手を結ばなくてもウチは大丈夫」という体制に移行しつつある。現時点で楽天がTBSと仮に業務提携を結べたとしても、楽天が望んでいた「対等の関係・近未来に統合」という形は望むべくもない。せいぜい「TBSのネット関連のお得意様のひとつ」程度にしか扱われないだろう。一年以上の月日と会社が傾くほどの資金注入をして、ごく普通の業務提携しか結べないとなれば責任問題が生じる可能性もある。

さらに【10月12日は「楽天の逆転記念日」!? 楽天(4755)とTBS(9401)間の駆け引き開始から1年が経過、「後ろ盾」となる時価総額は……?】でも指摘したが、TBSの株価が低迷しているせいで、楽天側としては「すべてご破算にしてTBS株式を売却する」という選択肢も取れなかった。多額の借入金までして購入したTBS株式を「損切り」するのは難しいという状況だ。

ところが先日からTBS株式は急騰し、1月以降は4000円台で推移。現在すべて売却したとなれば、取得価格約3060円に対し1000円近い利益が1株あたりで生じることになる。これなら交渉失敗・TBS株式の売却という結果になっても、楽天側の申し訳も立つ。

箇条書きにまとめると次のようになる。

・2月末で楽天が信託しているTBS株式の信託期限が切れる。議決権が手元に戻ると交渉の前提が失われる。
・TBSの株価は上昇しており、今楽天が売却しても利益は十分に出る。
・TBSは他社と相次ぎ提携し、楽天がネット事業で入る余地はあまりない。
・楽天のTBS株式購入のために調達した借入金の利子負担は大きい。


これらから推測すると、楽天側が突拍子も無い素敵なアイディアを提示しない限り、楽天・TBS間の交渉は両社にとって「打ち切り・精算」した方が「よりよい選択肢」という結論が出来る。

TBSにとっては楽天側からのアプローチが無くなり、議決権を握られなくなるのは大万歳。スピードが命のIT企業たる楽天にとっても、これ以上成功可能性の低い交渉を続けて損失を拡大するよりは、この時点で「(提携面では)損切り、(株式売却益では)利益確定」をした方が次善の策と判断できよう。

元記事では2月中旬までに楽天側が最終判断を下すであろうとしている。また、【楽天三木谷社長相次ぎ大手新聞社とのインタビューに応ず・新しい動きの前触れか】にもあるように今年に入って三木谷社長は積極的にメディアに露出をし、意気込みを周囲に感じさせる行動をとっている。さらに最近楽天は半年期限の他社株転換条項付円債(EB債※)を発行し、資金調達を行っている。

2月末のタイムリミットまであと一か月あまり。そう遠くないうちに楽天がTBSとの交渉において何らの具体的な動きを見せることは間違いないだろう。


※EB債:期限内に設定株価より一度でも下がれば(含み損込み)の株式が、設定株価より上回ったままなら利息付の現金が返還される。つまり「株価が下がれば含み損込みの株式」「株価が上がっても設定金利付の現金のみで利益は限定される」という、投資家にとってはあまりありがたくない、ハイリスク・ローリターン商品。このままでは誰も買おうとしないので(その会社の株主になりたいのなら現物株式をそのまま買えば良い)、高い金利が設定されることになる(要は高金利をエサにする)。

販売時の状況を前提に設定株価は決定されるので、EB債の発行時にはその企業の株価は上がる傾向にある。また、一度販売されれば空売りなどで株価を下げてしまえば(以下略)。

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