給食費未払いは全国で約10万人、22億円に・親の責任感やモラル低下が主要因

2007年01月25日 08:00

学校給食でのご飯炊きイメージ【給食費未納が全国で4万人・20億円を超える見通し、「保護者の責任感欠如」が過半数】でも速報の形でお伝えした、【文部科学省】調査による2005年度の全国の小中学校における給食費の未払いが、総計で22億2900万円、未払い児童数は9万8993人にのぼることが明らかになった。特に児童数では先の予想を2倍以上上回る値となり、関係者も驚きの声とため息をあげている。

スポンサードリンク

今回の調査は各地の教育委員会を通じて給食を実施している全小中学校3万1921校に対して行われたもので、そのうち43%の学校で何らかの形で未納が発生しているという。未払い額は22億2963万円でこれは全体額の0.5%に相当する。未払い児童数は9万8993人でこれは全児童の1%に相当。当然2005年度以前や2006年度にも未納があるのは明らかで、実際の「現在における総未納額」はこの数倍に達するとも推測される。

未払いが増えたかどうかについて学校側にたずねたところ、増えたと回答した学校は49%におよび、減ったと回答した11.8%をはるかに上回った。未納率を比較すると沖縄県がもっとも高く3.8%、ついで北海道1.4%宮城県1.1%。低いのは富山県と京都府の0.1%。未払いの原因としては、単に「払いたくないから」と説明するなど「保護者としての責任感や規範意識」が60%にも達しており、「保護者の経済的理由」の33%の倍近く、過半数を占めている。

未払いが増えれば当然予算が足りなくなる。未払いが多い学校では、

・材料費を切り詰めて給食を作る。メニューをローコストのものに変える。
・事務費など他の予算から足りない分を補填する。
・給食費を集めるため徴収業務にあたる専門チームを作って対応する。
・何度督促しても応じない場合には法的措置を採る。


などで対応しているという。ただ、いずれの対応策も「払っている人にまで払っていない人の負担が生じる(徴収チームを作り活動することでもコストがかかる)」という不公平が発生することに違いない。

NHKでは具体例として、宇都宮市の例を挙げていた。宇都宮市の場合、2001年から一昨年までの5年間に、3か月以上滞納している児童生徒が500人以上、未払い総額は2600万円以上にのぼっている。そこで去年の9月には給食費を滞納している40人の保護者に対して支払い督促の申し立てを行い、支払いの意志がない保護者には銀行口座の差し押さえも検討するという。

インタビューに答えた宇都宮市教育委員会学校健康課の倉田明男課長は

「払わなくても大丈夫。食べさせてくれるから。給食が出ないことはない」と未払いが浸透していく。どんどん広がっていく。最後は法的措置というのも断固として揺らぐことはない。ただ、そうならないように学校と連携をはかって、さらに対応対策に取り組んでいきたい。」


と、逃げ得は許さない基本姿勢を見せつつも、一般の借入金の督促とは事情が異なるが故の立場の難しさがにじみ出ているようなニュアンスのコメントをしていた。

文部科学省では今回の調査結果を受け、各教育委員会に対し、学校給食の重要性の周知や(経済的に支払いが難しい場合には)生活保護による教育扶助の活用を促進するなど、PTAとの連携などにも留意するよう通知している。

「給食がおいしくない」という意見があり、(【参考:「人の食べ物とは思えない」という意見も……生徒は3人に1人が「美味しくない」、保護者は9割が「美味しい」との回答】)、「義務教育なのだから子どもを『行かせてやっている』。無理に行かせているんだから無料は当然。どうしてお金を支払う必要があるのか」という意見もあるのは事実。しかし義務を守らなくても良い、という理由にはならない。

それよりも「お金のムダだ」との理由で「自分の給食費を払わない」と親が判断した、そんな話を子ども自らが聞いたら子どもはどのように感じるのか。恐らくどんな言葉よりも深く傷つくに違いない。「他人のことを考える」という基本的な倫理観は、子どもに対しても適用するはずである。その点について、「払いたくないから」と考え未払いをしている親は考え直すべきだろう。

※今件について文部科学省に確認したところ、公式サイト上など一般公開は一切行わず、報道関係者へのリリースのみの公示を行う方針であるとのこと。データを精査してさらに詳しい分析をすることは適わなくなった。残念である。


■関連記事:
【「義務教育だから給食費は支払わない」鳥取県で給食費未納458件】
【小中学校で給食費滞納18億円、余裕があるのに払わない保護者が目立つ数】


(最終更新:2013/08/23)

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ