イギリスの「給食改革」で思わぬ波紋・親が勝手に油モノを子どもに買い与えることも

2006年12月02日 19:30

フィッシュ&チップス日本の「メタボリックシンドローム」という言葉の流行以上に、アメリカやヨーロッパにおける肥満への関心は高まっている。特に幼いころから甘いもの、カロリーの高いものに囲まれるという食生活に置かれている子どもたちに肥満傾向が強く、子どもへの食のあり方を見つめなおす方策が国を挙げて行われているのは何度と無く報じている通り。イギリスでも先日、学校給食のメニューを全面的に改定したが、思わぬ波紋を呼んでいるとの報道がNHKで行われていた。

スポンサードリンク

イギリスでも日本同様に、プラスチックスのトレイに色々なメニューを配するタイプの給食が学校で行われているようだが、放送ではある小学校が例に挙げられていた。その小学校では今年9月から、給食のメニューが全面的に変わったのだという。イギリスの食文化といえば欠かせないのが「フィッシュ&チップス」(魚のフライとポテトのフライ。安価で美味しくてお腹をふくらませる、昔ながらの「ジャンクフード」として、紅茶と共にイギリスの食文化の代表食)だが、それらの給食メニューへの盛り込みを週二回に制限するというのだ。

フィッシュ&チップス逆にこれまで週三回以上「フィッシュ&チップス」を給食に出していたのかと思うとそれはそれで驚かせるのだが、イギリスの食文化としてはそれが普通なのだろう。日本人にしてみればご飯と味噌汁に該当するのだろうか。

また、同時に野菜と果物を毎日最低二種類、メニューに取り入れることもあわせて採用された。例として取り上げた学校では野菜をふんだんに盛り込むため、給食の費用を一人当たり10円ほど増やしたという。

その学校ではトレイに子どもたちがそれぞれのおかずバーから好きなものを採るバイキングスタイルも採用しているようだが、そこで新たにサラダ専用のコーナーも設けられた。食べ放題の焼肉屋やファミレスなどで見かけるサラダバーのようなものだ。子どもたちは

「メニューはずいぶん良くなった」
「バーガーとケチャップがなつかしいけど、いいんじゃないかな」


と結構気にいっているようでもあった。

ところがこの動きに反対する動きが一部の親に起きており、波紋を呼んでいる。その親たちいわく「子どもには好きなものを食べさせるべきだ」というのだ。そのように主張する親たちは学校の柵越えに自分の子どもたちから食べたいものを聞き出し、外の店で買いこんで、好きなものを買い与えるのだという。

映像に映し出されたのは、まるでレストランで注文を聞くかのように子どもたちの声をメモに取り、「フィッシュ&チップス」や油ぎとぎとのフランクフルトを袋につめ、かごにまとめて積めて運び、また柵越しに子どもたちに「配給」する親の姿だった。まるで入院中の患者にこっそりと病院食以外のものを差し出す親莫迦な見舞い客のようで、見ていて痛々しかったというのが正直な感想。

給食イメージしかしイギリス政府では「肥満対策は待ったなし」として、給食向けの補助金を増やすなど、給食改革を進めていく方針だという。取材対象にあがっていた学校の校長も給食メニューについて「昔はピザやチップス、ソーセージなどが定番でした。給食改革は絶対必要です」と語っている。

また、メニューに野菜を増やしても子どもたちが食べなければ意味がないということで、野菜をいかに安く美味しく調理するか、給食を作る会社で特別講習も行われていた。調理師いわく「子どもは好き嫌いが多いけど、みんなの健康のためにメニューを増やさないとね」とコメントしていた。

イギリスでは先にもお伝えしているように(【イギリスでジャンクフードのテレビCMを2007年1月から規制】)、子どもを誘惑から守るため、ファストフードのテレビCMの規制にまで乗り出している。まさに国を挙げての国家事業と位置づけているようだ。

「食べたいものを食べさせたい」という親心は分からないでもない。しかし子どもの将来を考えたら、ここは涙を飲んで健康的な食生活を提供しようとしている学校の意図に従い、給食を十二分に食べさせるのが本当の親心というものだろう。

また、先に【料理を助けるDSソフト第二弾「健康応援レシピ1000 DS献立全集」12月7日発売】でも紹介した『健康応援レシピ1000 DS献立全集』あたりを推奨し(もちろんイギリス版として手を加えた上で)、家庭でも食生活について楽しみながら学んでいくというスタイルを提案するのも一つの手かもしれない。

最近では脳内物質を薬でコントロールしてダイエットを行わせるという手法も生み出されているようだが、さすがに子どもにそこまでさせるのは酷というもの。なぜこのような食事をしなければならないのか・好きなものばかり食べてはいけないのかを理解させたうえで、楽しく食事をさせるのが、賢いやり方だろう。

少なくとも休み時間中に親が学校の柵越しにオーダーを受け取り、油モノの食事をかごに山盛りに買いこんでせっせと子どもに手渡す様子は、見ていて気持ちのよい物ではないと思うのだがどうだろうか。


■関連記事:
【イギリス、「ダイエット大臣」の設置など子どもへの肥満対策強化】
【食品メーカーのウェブゲームが肥満を手助け? 子どもに人気のサイトが人気集中で非難を受ける】

(最終更新:2013/09/15)

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ