アメリカで賃貸住宅が住宅市場をさらに押し下げる傾向に

2009年01月15日 08:00

アメリカのマンションイメージアメリカにおいてくだんの「サブプライムローン」の支払いが出来なくなったり、不況で手取りが減ってしまい、豪邸や、そこまで行かなくとも大きな面積を持つ家をローンが払えずに追い出され、賃貸住宅に引っ越したり、友人や親戚の家に間借りする人が増えている話を【不況下で変わる家具の好み・「大」より「小」、より省エネスペースへ】で触れた。昨今ではこのような状況が、アメリカの賃貸住宅市場にも大きな影響を及ぼしつつあることが【Dow Jonesの記事(Apartment-Complex Developers Falling Behind On Loan Payments、要登録)】で明らかになった。

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元々一戸建てや分譲マンションは需給のバランスが崩れたことと、ローン金利の急騰などで支払いが出来なくなり、差し押さえされる物件が増え、地域によってはゴーストタウン状態になっている。これはこれまでも何度と無くお伝えした通り。そして先のリンク記事にもあるように、持ち家を失った人たちは間借りをさせてもらう以外は、賃貸住宅のお世話になる。不動産不況が進むにつれて「持ち家差し押さえを受けての賃貸住宅希望者」は増加し、賃貸住宅の需要が急増。賃貸住宅の相場は一時的ではあるが上昇する。

ところが特に住宅価格の下落が著しい西海岸、カリフォルニア州やアリゾナ州、ネバタ州などで、大量に売れ残った分譲マンションを整備し、賃貸住宅として提供する動きが起きている。時間が経てば経つほど多くの(差し押さえされた)分譲マンションが賃貸住宅の材料として「提供され」るため、需給バランスは供給に大きく傾いてしまう。そして現在、マンションなどの賃貸住宅でも家賃値下げ競争が続いているという。

さらに困ったことに、住宅の販売価格と賃貸住宅の賃貸料との間には(アメリカでは)浅からぬ関係がある。「家賃を何年分払えば一軒家が買えるなら、買った方がいいかな」という考えによるものだ(【カリフォルニア州にあるHumboldt State大学の論文から、PDF】 )。

平均的な住宅販売価格と賃貸住宅の賃貸料との比率推移
平均的な住宅販売価格と賃貸住宅の賃貸料との比率推移

図は2007年までのものだが、最近では21~25の範囲で上下している。つまり「賃貸家賃と同じ支払いで21~25年ローンを支払い続けて住宅が買えるのなら、借りるより買った方がいいネ」という判断が行われているわけだ。

ここで賃貸マンションの家賃が下がるとどうなるか。当然「借りて済んだ方が都合がよい」という人が増えるため、販売物件は賃貸家賃に水準を合わせるべく、さらに値下げをしなければならなくなる。かくして住宅価格の下落が、ローンを支払えない人を増やし、持ち家から賃貸への移動をうながし、それがまたさらに賃貸家賃の下落を経て住宅価格を下落させるという、悪循環を生み出してしまっている。

アメリカのマンションイメージ住宅価格の安定、さらには上昇が景気回復のための重要な要素であること(不動産はもっと大きな資産価値であり、これが増えれば経済全体の資産価値も増加し、お金のめぐりも良くなる)を考えると、住宅問題を端に進行しているアメリカの不況はまだしばらく続きそうである。

ちなみに日本でも同じような計算が行われているが(【さあ、「金持ち父さん」になろう!バブル崩壊がチャンス、世界の不動産を安値で買え】)、現在のところ庶民向け中古マンションの賃貸料には大きな変動は起きていない。しかし先日【高額物件では10%以上も! 賃貸料も株価と共に下落する不動産市況】でお伝えしたように、高級住宅マンションでは賃貸料の下落が起きている。もっともこちらは「供給が増えて供給過多になった」よりは「需要が減って供給過多になった」割合が大きく、あまり当てはまりそうにもない。

しかし今後どうなるかは分からないのが実情。近所の分譲住宅がいつの間にか賃貸住宅に様変わりしているのを見かけたら、その物件自身ではなく住宅市場全体においてチェックをした方がよいのかもしれない。


(最終更新:2013/07/31)

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