日本の広告宣伝費上位20社の広告費をグラフ化してみる+α

2009年01月31日 19:30

広告費計算イメージ先週発売された経済週刊誌のうち、『週刊ダイヤモンド』と『週刊東洋経済』が非常に資料価値の高い内容を見せていたとして、それをトリガーにして色々と考えたり図式化する記事企画第二弾。今回は「テレビ・新聞陥落」を取り上げている週刊東洋経済から、「広告宣伝費トップ20」をグラフ化してみることにする。

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広告宣伝費に関するグラフについては先に【日本の広告宣伝費上位10社の広告費をグラフ化してみる+α】ですでに(企業単体のものを)一度グラフ化しているが、今回はこれを連結ベースの広告宣伝費にまで拡大。対象企業も20社までに広げた。「週刊東洋経済」には100社までのリストがあるが、それを見た限り区切りのよい20社までならすべてが上場企業でカバーされているのが「20社」にした理由。

元記事にデータはあるが、一応全社の有価証券報告書を確認(どこも同じような言い回しを使っているので、広告宣伝費の書かれている場所を探すのはさほど難しくない)。その上で全社の直近データにおける「最新終了期と現行進行期における売上の変化」も取得した。

まずは直近終了期における宣伝広告費。連結ベースでの数字なので、先の10位までのグラフとくらべ、かなり額が増えているのが分かる。

直近〆期の広告宣伝費上位20位(億円)
直近〆期の広告宣伝費上位20位(億円)

自動車セクター及びそれにきわめて密接な関係のある企業を赤く塗ったが、約1/3が該当し、しかも額で見ればそれ以上に比率が高いのが分かる。何しろ上位5位以内に3社までが入っているのだから。ちなみに上位20位までの合計は3兆2117億円。金額ベースで自動車産業・きわめて近い企業の総額はそのうち44.1%を占めている。

ご存知の通り世界的な景気後退で、特に自動車産業では下方修正が相次いでいる。広告費の大幅削減やメディアの絞込みなども相次いで伝えられており、次年度以降は広告を受ける側(代理店やメディア)も一層苦しい思いをさせられることと思われる。

売上減少分で広告費の動向を予想

さてお馴染みの、「当方によるおまけ的展開」。広告宣伝費と共に調べた「最新終了期と現行進行期における売上の変化」は製造業を中心に多くの企業で10%前後のマイナス、残りも1ケタ台のマイナスが占めている。ただ、売上の減少幅が、昨今伝えられている利益の減少幅と比べて、意外に少ないことが分かる。「なぜ売上がさほど落ちていないのに利益が極端に減っているのか」を調べたところ、

・特別損失(罰金や取引先の倒産など)
・為替差損(円高により海外での利益が目減りする)
・評価損(手持ちの有価証券の評価が減る)
・原材料の高騰(材料が値上がりして単位あたりの利益が減る)


などの要因に大別できることが分かる。これらの要素を考えると、「広告費の変動と関係があるのは経常利益か純利益」ということになるのだろうが、少なからぬ企業がマイナス予想を出しており、前年比との比較が出来なくなる。そこで売上(小売は営業利益)の前年比を調べ、直近〆期の広告宣伝費に乗じ、次期の広告費を予想してみようとした次第。

その結果出てきた値をグラフにしたのが次の図。

直近業績予想(売上、一部営業利益)の前年比増減を基にした、次年度の広告宣伝費増減額(億円)
直近業績予想(売上、一部営業利益)の前年比増減を基にした、次年度の広告宣伝費増減額(億円)

売上ベースですらマイナスを示しているのがほとんどで、減り方も尋常ではない。なおプラスに突出しているキリンHDは利益では大きくその額を減らしている(まだプラスではある)。前年度比でまともなプラスを期待できそうなのは任天堂くらいでしかない。

また、前述したように「売上は上がっているのに利益が出ない」状態が続いており、利益の変化ベースで計算するともっと悲惨な結果が出るはずだ。


「売上が減った、利益がなくなった」「ならば広告を無くそう」というわけにはいかないのがビジネスの難しいところ。お客に知ってもらわねばブランドイメージも作れないし、そもそも商品に気がついてもらえない。それを考えると、最収益がゼロになっても広告費もゼロにする、ということはありえない。

今後はメディアの選択(紙媒体を得意とする商品もある)がいっそうシビアなものになり、今までの地位に安穏としていた広告媒体は広告出稿削減の憂き目を受けることになるだろう。


(最終更新:2013/09/05)

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