日本の広告宣伝費上位10社の広告費をグラフ化してみる+α

2008年12月04日 08:00

広告イメージ先日発売された『週刊ダイヤモンドの最新号「新聞・テレビ複合不況~崖っぷちに立つマスメディアの王様」』は久々に読み応えのある内容だった。四大マスメディアの中でも影響力(と問題)の大きい新聞とテレビについて、さまざまな方面から現在抱えている問題点を取り上げ、解説を行っていたからだ。1年以上前の同系列の特集【「新聞没落」…週刊ダイヤモンド最新号を読み解く】同様、永久保存をしても良いくらいの出来。そこで今回も含めて何回かに渡り、当方(不破)自身の再確認・理解度を深める意味も含め、グラフ化・覚え書き化するべきところをまとめてみることにする。今回は「日本の広告宣伝費上位10社の広告費」のグラフ化……とプラスα。

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週刊ダイヤモンド「新聞・テレビ複合不況~崖っぷちに立つマスメディアの王様」(2008年12月6日号)では、多種多様な方面から新聞とテレビの現状にメスを入れている。非上場であるがゆえになかなか内情が伝わってこない新聞社と、公開企業でありながら理解しがたい経営戦略や対外方針を続けているように見えるテレビ局について、大きく分けると「おサイフ事情」と「しがらみと意地」の2点から分析が加えられている。今まで頭の中でもやもやしていた部分の多くをすっきりとさせることが可能になる。

2点の分析の切り口のうちの一つ、「おサイフ事情」について、分析材料の一つとして挙げられていたのが「日本の広告宣伝費上位10社の広告費」。改めて当方で調べたところ、掲載されていたのは企業個別(連結ではない)の金額。連結となるとこれ以上の額になる。また全額がテレビ・新聞に投入されるわけではないが、多くの部分がこの2媒体に費やされることもまた事実。新聞・テレビにとっては超がつくお得様であることに違いは無い。

掲載されていた上位10社の年間広告費(そのほとんどは公開財務諸表の詳細で確認が可能)をグラフ化したのが次の図。

広告宣伝費上位10位
広告宣伝費上位10位

広告イメージ時価総額や利益などさまざまな面で突っ走っているトヨタ自動車がダントツに多いことが分かる……といいたいところだが、パナソニックやホンダが案外多額の広告費を計上していることも確認できる。商品個別の告知はもちろんだが、企業全体のイメージ(CI戦略)にも積極的であるということなのだろう。ちなみに10位までの総額は6101億円となる。

また、上位10社の顔ぶれを見れば分かるように、いかに多くの自動車産業が多額の広告費を出しているか、逆に考えれば新聞やテレビが自動車産業に頼っているかも分かる。上位10社中、実に4社までが自動車メーカーなのだから。

世界的な景気後退で自動車産業の営業成績にもかげりが見えてきており、今後広告費の面でも大きな削減が行われることだろう。新聞・テレビ局にとっては頭の痛い話に違いない。


……とここまでが本題。後は当方によるおまけ的な展開。

先の【トヨタ自動車がマスメディア広告費3割カットか】や、先日の某氏による「マスコミに対して報復でもしてやろうかと。スポンサー引くとか」発言、さらには【ネットやケータイ増やしてテレビや新聞、雑誌は削減・今年の広告費動向】などにもあるように、新聞・テレビに対する広告費削減は企業にとって最優先課題の一つにも挙げられるほどの問題。その考えは上記10社でも変わらないはず。

そこで、10社の直近財務諸表と2008年度の業績予想を調べ、上記グラフで対象となった2007年度と比べ2008年度はどれだけ「売上」が落ちるかを算出。その「売上上下割合」をそのまま広告費に乗算してみることにした。なおサントリーは非上場のため2008年度予想がないので0%に設定し、イトーヨーカ堂は親会社の7&iホールディングスの数値を代用している。

広告宣伝費上位10位(2007年度・個別・億円)(2008年度は売上予想で比例算出)
広告宣伝費上位10位(2007年度・個別・億円)(2008年度は売上予想で比例算出)

緑が2007年度、黄色が2008年度予想、棒グラフ内部の数字は売上の前年度比予想値。

もちろん売上の増減がそのまま広告費の増減に直結するわけではない……が、ここは仮定として、そのようになったとしてみる(そのためにもあえて、前年比の少なめな売上を算出対象とした)。すると10社の2008年度の広告費は全体で5793億円・前年比で95.0%(5.0%減)ということになる。

一方、新聞・テレビの広告費の増減と連動するわけではない。要素としては

●中立要素
・広告費すべてが新聞、テレビに回るわけではない

●ポジティブ要素
・不特定多数への影響力は捨てがたい
・昔からのしがらみ
・売上が減った分がそのまま広告費の削減につながるわけではない
・売上が落ちればむしろ広告投入量を増やし需要を喚起する戦略もありうる

●ネガティブ要素
・新聞、テレビのマンネリ化や、娯楽・メディアの多様化による影響力の低下
・ネットや携帯へ広告費を割増する一方で、新聞やテレビへの広告費は削減する方針(上記参考リンク)
・費用対効果が新メディアと比べて見出しにくい


などが挙げられる。それらをすべて足し引きすれば、やや「ネガティブ」が多い気もするが、それでも「広告費全体の増減に比して減る」と考えれば、5.0%の減少は考えられよう。実際には数ポイントの上乗せがありうるだろうが。

先の在京キー局の中間決算報告書の分析(【主要テレビ局銘柄の第2四半期決算をグラフ化してみる】)にもあるように、テレビ局の主事業を支える広告のうち、スポット広告は軒並み10%以上のマイナスを示している。タイム広告はそれほどでもないが、足し引きすれば上記の想定「5.0%の減少、数ポイントの上乗せ」は案外的外れではない気がする。

ちなみに。

昨今の急激な企業の業務成績悪化、下方修正の嵐、さらにはテレビ・新聞媒体の影響力低下の加速(番組のマンネリズムについては本紙ダイヤモンドでも、詳しく解説が行われている)を考慮し、「仮に」売上ではなく、営業利益予想を元にグラフ化すると次のようになる。

広告宣伝費上位10位(2007年度・個別・億円)(2008年度は営業利益予想で比例算出)
広告宣伝費上位10位(2007年度・個別・億円)(2008年度は営業利益予想で比例算出)

この想定の場合、10社合計は4026億円・前年比で66.0%(34.0%減)。実に2/3に減少ということになる。広告展開媒体の重点度の変更なども考えると、この割合がそのまま新聞・テレビに行く可能性はゼロともいえない(仮定の上での仮定)。

「……とここまでが本題。後は当方によるおまけ的な展開」以降は言葉遊び・数字遊びの類に過ぎない。予想を立てる上での一つの方法論としてくらいに思っていただければ幸いだ。


(最終更新:2013/09/05)

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