円高になるとどんな良いこと・悪いことがあるのか再確認してみる……(2)円高のメリット・デメリット

2008年11月28日 19:40

為替イメージ「円高」そのものについて説明したあとは、いよいよメリットとデメリットについて。細かい部分を挙げればキリがないが、大体このような形にまとめられるだろうというものを箇条書きにしてみた。

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円高になると……メリット

1.安く原材料が海外から手に入る
「円高」は「円」の価値が上がること。原材料などの輸入価格が実質的に下落するため、日本国内における原材料費・生産コストが低下する。特に鉄鋼や紙・パルプ、石油会社、電力会社など、輸入・国内消費型企業(内需型)の業績が上向く。

「円」の相対価値が上がるので、海外での現地通貨における価格が同じでも、安い「日本円」価格で購入ができる。コストが下がるので利ざやが大きくなり、利益も増える。
「円」の相対価値が上がるので、海外での現地通貨における価格が同じでも、安い「日本円」価格で購入ができる。コストが下がるので利ざやが大きくなり、利益も増える。

2.円建ての株式や債券などの金融商品が買われる
「円」が上がるということは日本の貨幣的信用が高まることをも意味する。よって、金融資本市場で円建ての株式や債券などの金融商品が買われる。これは海外から日本に資金が集まってくることを意味する。

3.海外旅行で買い物がたくさんできる
海外で買い物をする時には現地通貨に交換しなければならないが、その時のレートが「円」にとっては都合が良いため、たくさんの買い物ができる。極端な例として、「1ドル200円」の時にアメリカ旅行へ1万円のお小遣いを持っていっても50ドルにしかならないが、「1ドル100円」の時になればお小遣いは倍増して100ドルになる。

4.一部製品や輸入品が安くなる
わざわざ海外に行かなくとも、日本国内でも電力やガソリンなど輸入原材料から作られた製品や輸入品などが安く買える。最近スーパーやデパートで輸入品の「円高還元セール」が行われるようになったが、それが良い例だ。

5.輸入産業、内需型の株式が買われる
「1.」の理由により、業績が良くなると推測される(あるいは実際によくなる)ので、関連銘柄に買いが集まり、値が上がる。業績の上向きとほぼ連動した形。

円高になると……デメリット

1.輸出品の価格が上がり、輸出産業が不利になる
「円高」は海外通貨に対して「円」の価値が上がることを意味する。つまり日本国内で価格が同じでも、海外における日本の輸出品の価格は上昇してしまう。値段が上がるので、輸出品への現地での購買意欲が落ち込み、売上が減少。よって、自動車や精密機械に代表される輸出産業の業績が悪化する。

日本国内では同じ価格でも、相手国通貨との相対価値が上がれば、モノを輸出した時に相手国での販売で不利になる。
日本国内では同じ価格でも、相手国通貨との相対価値が上がれば、モノを輸出した時に相手国での販売で不利になる。

2.輸出産業の株式が売られる
「1.」の事情から、輸出関連産業の株式が(業績悪化懸念から)売られることになる。例えば[トヨタ自動車(7203)]の場合、対ドルレートで1円円高になると、年間400億円の営業損失が生じることになる。当然「業績が悪くなるだろう」と投資家からは思われるわけだ。

3.外貨貯蓄の人が損をする
金利が良いからと、外貨(外国債、外貨預金など)で蓄財してきた人も多いだろう。しかし最終的にそれらの運用資金は円に換えないと日本国内では使えない。その時、円高が進んでいると「たくさんの外国通貨を所有していても少ない日本円にしかならない」という事態におちいることになる。

外国人観光客イメージ4.外国人旅行客が減る
「メリット」の「3.」と逆で、外国から日本に来る人にとっては、自国の通貨をたくさん持ってきても少しの日本円にしかならないので、旅行が辛くなる。外国人観光客を見込んでいる観光地にとっては一大問題である。

5.海外のファンドのリバランスで日本株が売られる
これは「2.」とは別の理由。一見すると「円高になるのだから日本の株の価値が上がって海外のファンドも喜ぶのでは」と思うだろう。確かに持株が上がること自身は嬉しいのだが、そうも言ってはいられない事情がファンド側にはある。

詳しくは【「『外国人投資家』と彼らの行動について」後日談】で解説しているが、多くのファンドはリスクを回避するためにさまざまな方面の金融商品に投資をしている。そしてそれぞれの種類の割合は一定でなければならない(片寄ったらリスク回避の意味が無い)。

円高進行で日本株の資産全体における割合が増え、バランスを戻すために日本株を売らなければならないの図。ちなみに分かりにくいが、右側の円では日本株の資産評価額アップで円全体の面積が増えていることに注意。他国株式の資産「額」が減っているわけではない。 (再録)
円高進行で日本株の資産全体における割合が増え、バランスを戻すために日本株を売らなければならないの図。ちなみに分かりにくいが、右側の円では日本株の資産評価額アップで円全体の面積が増えていることに注意。他国株式の資産「額」が減っているわけではない。 (再録)

円高になって海外のファンドにおける日本株の価値が高まった場合、崩れたバランスを調整するために、一定量の日本株を手放す必要が生じてくる。ファンドが株を手放すということは、もちろん「売る」ことに他ならない。日本市場において外国人投資家の割合が多い昨今においては、「2.輸出産業の株式が売られる」よりも影響力は大きいかもしれない。

(続く)


■一連の記事:
【円高になるとどんな良いこと・悪いことがあるのか再確認してみる……(1)円高とは】
【円高になるとどんな良いこと・悪いことがあるのか再確認してみる……(2)円高のメリット・デメリット】
【円高になるとどんな良いこと・悪いことがあるのか再確認してみる……(3)円高デメリットの具体値と日本の努力】

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