家計での支出金額にみる、中国産冷凍ぎょうざ事件のつめあと

2008年07月04日 06:30

冷凍食品イメージ総務省統計局が6月27日に発表した【家計調査報告】によると、今年初頭に発生した中国産冷凍ぎょうざから農薬系成分「メタミドホス」が発見された件に絡み、ぎょうざや冷凍食品の販売実績がいまだに低めの水準にあることが明らかになった。ぎょうざは多少持ち直しを見せつつあるが、冷凍食品はほぼ同時期に訪れた物価高などの影響もあり、前年比で低いまま推移を続けている(【発表リリース】)。

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家計調査は、全国の世帯を対象として、家計の収入・支出、貯蓄・負債などを毎月調査し、国民生活の家計収支の実態を把握。国の経済政策や社会政策の立案のための基礎資料を提供することを目的としている。結果は逐次データ化され、毎月発表されている。また、通常のデータとあわせて話題性の高い案件と家計との関連を示すデータも、追加参考資料として報告される。今回取り上げた内容も、その追加参考資料からのもの。

ぎょうざイメージ「中国産冷凍ぎょうざ」事件は【中国製餃子から農薬系成分「メタミドホス」検出、中毒患者発生】にあるように、1月30日に輸入元の【JT(2914)】が記者会見を開いたことで公式に明らかになったもの。この後さらに有機リン化合物「ジクロルボス」も検出されたり、日本国内では添付し得ないことが証明される一方、中国の生産工場側は頑として責任を認めず、当局側も協力には消極的な姿勢を見せ、現在もなお真相は明らかにされていない。一言で例えれば「うやむや」なまま。

また、この事件をきっかけに冷凍食品をはじめ「食の安全」が改めて問われるようになると共に手づくりぎょうざが大きな売上アップを見せたり、JTと[日清食品(2897)]による加ト吉を軸にした冷凍食品部門の再編話も流れてしまうなど(【日清食品が冷凍事業の新会社「日清冷凍食品」を設立・JTとの統合計画解消の結果】)、さまざまな影響を各方面にもたらしている。

まずはぎょうざそのものの家計支出金額の推移だが、事件が公になった1月30日をきっかけに大きく減少する様相を見せているのが分かる。ちなみにぎょうざには「焼きぎょうざ」「蒸しぎょうざ」「水ぎょうざ」「揚げぎょうざ」「生ぎょうざ」を含む。冷凍調理ぎょうざは含まれていない。つまり厳密にいえば今件において「とばっちりを受けた側」といえる。

ぎょうざ支出金額の推移(ピンクは前年、濃い青が今年)
ぎょうざ支出金額の推移(ピンクは前年、濃い青が今年)

次々と新しい事実が明らかになった2月・3月は大きく下回ったままだが、4月に入るとやや落ち着きを取り戻すかに見えた。しかし再び買いびかえ傾向は強まり、5月中旬以降の持ち直しまで、低い水準が続く。

数字的には1月は(月末に事態発覚のためか影響は少なく)-9.9%にとどまったものの、2月には-40.7%と4割減にまで落ち込み、3月は-29.1%、4月は32.3%、5月は-23.7%を示している。事件そのもの以外に消費性向そのものが落ち込んでいるせいもあるだろうが、一連の問題はぎょうざそのものの消費に暗い影を落としたまま、なかなか回復にはいたっていない様子が見て取れる。

一方冷凍調理食品全体でも、低迷は続いている。

冷凍調理食品支出金額の推移(ピンクは前年、濃い青が今年)
冷凍調理食品支出金額の推移(ピンクは前年、濃い青が今年)

こちらも1月末の報道以来大きくその数を減じているのが分かる。ぎょうざほどの急激な下げ方ではないものの、じわじわとその影響は深く浸透し、未だに回復に至っていない。前年同月比では1月は-9.9%にとどまったが、2月は-30.0%、3月は-27.0%、4月は-26.9%、5月に至ってもまだ-22.3%を記録している。


ぎょうざも
冷凍調理食品も
未だに前年比で
2割強の売上減

これらの公開データを見ると、「人の噂も七十五日」という言い回しがあるが、75日どころかその倍近い120日経過した5月末時点でも、ぎょうざも冷凍調理食品も前年同月比で2割強の売上減という影響を見せているのが分かる。同時期に進展している物価高、並びに消費性向の減退を差し引いても、無視できない数字といえよう。

これだけ長期間にわたり低迷、言い換えればぎょうざ・冷凍調理食品離れが続いているのは、やはり「事件(問題)が未だにはっきりとした形で解決していない」のが大きな要因だろう。事件が解明され根源が明らかになっていない以上、「また似たようなことが起きるのでは? 」という疑心暗鬼がまん延し、それが深層心理の部分で買い控えを起こしているものと思われる。ただでさえ物価高で消費者の選択眼が厳しくなっている昨今、最初からネガティブな「重し」をつけられた状態では、他の食品との競争に打ち勝つのも難しい。

あと半年もすれば売上減の値そのものは、今の状態から相当量回復することだろう。しかし消費者の心に刻まれた「不信感」はそれでもなお、消えずに残るに違いない。個人的にもぎょうざが大好きな一人であるだけに、今件は非常に残念でならない。一刻も早い「真実の解明」をお願いしたいところだ。

一方、ポジティブな考え方をすれば、今件で多くの人が「食の安全性」を改めて考えるようになったともいえる。その点では「よいきっかけ」だったのかもしれない。


■関連記事:
【冷凍ぎょうざ問題で約7割が「中国製食品の買い控え」、外食産業への影響は軽微】

(最終更新:2013/08/04)

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