4大既存メディア最大の「敵」は携帯電話にあらず

2008年07月20日 12:00

メディアイメージ総務省が7月12日に発表した2008年度版の情報通信白書には、情報通信業界におけるさまざまなデータが公開されており、非常に興味深い内容を持つものも多い。その中の一つ、4大既存マスメディア(テレビ、新聞、雑誌・書籍、ラジオ)に関する調査結果において、普段かたられている「4大既存メディアの最大のライバルにして敵は『携帯電話』である」という話が必ずしも適切ではないことを示すデータが記載されていた(【発表ページ】)。

スポンサードリンク

情報通信白書とは総務省が毎年日本の情報通信の現況や情報通信の政策の動向について、国民の理解を得ることを目的として作成する統計資料。政策決定の材料としても用いられる。

一部の意見には「パソコンやケータイが高機能化・普及したことで、4大既存メディアのお株を奪っている、役割の代わりを果たしつつある」とするものがある。既存メディアからすれば、自分たち自身がパソコン・携帯電話を取り込まない限り、市場・顧客を奪われることに等しく、「ライバル」「敵」扱いしても仕方のない話。特に若年層において4大既存メディアの利用度が減少しているのは【動画投稿サイトVSテレビ! 主要メディアの立ち位置変化を年齢順で見てみる】【10代は動画投稿サイトが大好き!! 年齢階層別に見た「従来四大メディア」と新情報メディアのせめぎ合い】【まだ「身近なメディア」はテレビがトップ・スピード感ではウェブが追い抜く】など他の調査でも明らかにされている。

そこで、4大既存メディアそれぞれについて「利用が減少した理由」をズバリたずねたところ、出た結果が次の通り。

メディアの利用頻度が減少した理由
メディアの利用頻度が減少した理由

このグラフから見えてくることをまとめてみると、以下の2点に集約されよう。

・「代わりに利用する他のメディア」の影響力は4大既存メディアいずれもそれなりに大きい。特に「新聞」「雑誌・書籍」などの紙媒体において顕著。
・「テレビ」は他の既存メディアと違い、(他メディアへの乗換えではなく)「メディアの利用以外に時間を使うようになった」「そのメディア自身への興味が無くなった」の割合が大きく、あわせて65.2%に達している。


前者は「4大既存メディア」から他メディアに乗り換えた人の割合が大きいことをあらわしている。「新聞」では半数近く、「雑誌・書籍」でも4割強の人が「他のメディアを使うようになったから、このメディアはもう(あまり)使わない」と答えていることになり、まさに「お客を奪われた」形。費用や内容など、天秤にかけられ相対評価的に「移行先の方が良い」と判断された事情・項目はさまざまだろうが、それぞれの既存メディアは自身から他のメディアにお客が移動する理由を真剣に考えねばならないだろう。

「テレビ」は他メディアとの
相対的な評価の下落ではなく
「テレビ自身」の評価が
大きく損なわれている

それよりも問題なのは後者。メディアの移行の主原因として「移行先の方がメリットがあるから」などの相対評価的な理由ではなく、「テレビ」自身の(メディアという項目における)絶対的な評価が下がっていることを示している。一言で表現すれば「テレビのメディアとしての価値が暴落している」。改めて指摘されると、テレビ関係サイドも視聴者の立場の人も、心当たりがある人は多いはずだ。

たとえ話で表現すると「テレビ君はクラスのみんながカッコいい服を着ているので、自分の私服が今ひとつダサめに見えるじゃないかと、一人で憤慨していた。しかし実はテレビ君自身の服が流行遅れのダサダサなものだった」というところだろうか。

さらに「他のメディアを利用するようになった」人に限定して、その「代わりのメディア」は何かとたずねたところ、どのメディアからの移行者も「パソコン」と答える人がもっとも多く過半数どころか7割以上を占めていた。

代わりに他のメディアを利用するようになったために利用頻度が減少したメディアにおいて、代わりに利用するようになったメディア(複数回答)
代わりに他のメディアを利用するようになったために利用頻度が減少したメディアにおいて、代わりに利用するようになったメディア(複数回答)

全般的に見れば「パソコン(≒インターネット)」への移行が極めて大きく、また「テレビ」「新聞」という報道メディアにおいては「携帯電話」への移行も少なからぬものがある(「ラジオ」については「テレビ」への移行も多い)。4大既存メディアが軟調さに「携帯電話の普及」を挙げている人が多いが、現状ではむしろ「パソコン」による影響力が強いことが分かる。

特に「パソコン」への移行意図が多いのは、白書でも指摘しているように「サービスの多様化や端末の多機能化・高機能化の進展、ブロードバンドの普及などによって、パソコンや携帯電話を利用すれば、一方的に流れてくる情報を受信するだけでなく、場所や時間を問わず、欲しい情報を自ら検索して入手し、また、映像や音楽を視聴するなど、様々な情報に多様な方法で接触することができるようになった」、一言で例えれば「オンデマンド」「双方向性」というメリットがあるからなのだろう。

テレビや新聞:
 ……情報受信端末+静止画と文字列
パソコンや携帯電話:
 ……情報受信端末、情報検索ツール、情報発信端末
   +静止画と文字列、音声、動画


既存4大メディアが「単なる情報の受信端末」としての立ち位置以上のものになりえないのに対し、「パソコン」「携帯電話」は「情報の検索ツール」、さらには「情報発信端末」としての役割も果たせる。表現方法も音声や動画など次元の違う様式で展開されているのに、さらに利用手段も3倍に増えているのだから、「テレビ」や「新聞」が(これらの観点で)「パソコン」にかなうはずもない。


白書では今項目のまとめとして、「ネットに接続できるテレビ、テレビを見られるパソコンや携帯電話(ワンセグ)など、従来の枠組みを超えたメディア展開が行われている。今後はメディア利用について今以上の大きな変化が起きるかもしれない」と締めくくっている。若年層を中心に起きている既存4大メディア離れや、4大既存メディアそのものの相対的・絶対的評価の低迷は、一過性のものではなく、今後も継続する現象といえよう。

あと3年後、2011年に行われる予定の「地上デジタル放送への完全移行」。これがメディアに大きな変化をもたらすターニングポイントになることは間違いあるまい。それに向けてこれからもゆっくりと、じわじわと、あるいは雪崩式に各メディアにビックウェーブが訪れることだろう。


(最終更新:2013/08/04)

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ