バターの生産量をグラフ化してみる

2008年06月06日 06:30

バターイメージ先に【3か月で4社が950トン、バター製造大手が増産計画発表】で報じたように、国内産バターの品不足を受けて製造4社が増産体制に入り、多少ではあるが状況が改善される兆しが見えてきた。その記事執筆の際に参考にしたのが、社団法人日本乳業協会が発表している統計データ。せっかく調べたのだからと、今回はさらにそのデータを基に直近15年ほどの年次データと、2年分の月次データをグラフ化してみることにした。

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まずは1993年以降の年次ベースのバター生産量。

年次ベースのバター生産量
年次ベースのバター生産量

ここ数年はやや生産量が減少する傾向にあるものの、急激な減少ではなく、水準としては1994年前後とほぼ同じ。今後さらに落ち込むようなら問題だが、昨今のように突然大問題が生じるような減少幅ではない。

続いて月次ベースのバター生産量。直近2年分のデータしかないのでそれをグラフ化する。

月次ベースのバター生産量
月次ベースのバター生産量

月次の場合、季節によって生産量の上下が生じる可能性があり、単純に前月との比較は誤解を招くかもしれない。そこで前年同月比のグラフを併記しておいた。

グラフからお分かりの通り、2006年後半から2007年前半にかけて「前年同月比」で大きく生産量を落とし、また全般的には少しずつ減少傾向にあるものの、こちらも直近の状況にあるような「急激な品不足」の原因としてはやや説明不足な気がする(むしろこれは「当時の」牛乳・乳製品の供給過多問題による意図的な生産調整によるもの)。今年3月はともかく、去年暮れからはむしろ前年同月比で増産しているくらいだ。

ではなぜ近頃、とりわけ今年に入ってからバターの品薄感が強く、食品業界でも問題視されているのか。その答えがやはり社団法人日本乳業協会の5月8日発の【プレスリリース(PDF)】で明らかにされていた。詳しくはリリースに目を通してほしいのだが簡単にまとめると

1.猛暑や飼料の値段が上がって材料の生乳が計画通り生産できなかった
2.国際的に乳製品価格が上昇(需要の高まりとオーストラリアの干ばつによる同国からの輸出品減少)し、そのため「国産品の方が安い!」と注目を集めている
3.バターだけでなく生クリームなど他の乳製品へのニーズも高まっているため、バターだけに注力するわけにはいかなくなった


・国際価格急騰
・国内産へのシフト
・生乳のニーズ多様化
・安全性の再認識
→国内産バターの不足

ということになる。このため、家庭用・業務用バターが不足するようになったとのこと。生産量そのものはさほど変わらないが、主に国外要因によって一挙に欲しい人が増え、対応し切れなくなったというわけだ。遠因としてはやはり環境問題(オーストラリアの干ばつ)とバイオエタノール関連(穀物市場全体の高値感形成)、というところか。さらにリリースには記載されていないが「やっぱり外国産よりも国内産の方が安心できる」という安心感を消費者が求めるようになったのも一因だろう。

今状況を踏まえすでに昨年10月から、生産者団体では北海道において原材料の生乳の増産に取り組むと共に、今年度から増産計画を実施に移している。また、業務用バターについては一部を保存が利く冷凍バターに切り替えて、需要が高まる時期に対応できるよう(要は生産・供給調整ができるよう)工夫をしていくという。


先の記事で「ただし「努力して」という表記なので実現できるかどうかは」と、やや不安な感の言い回しを使ったのは、【牛乳が店頭から消える? 酪農家の廃業で「7月危機説」(エキサイトニュース)】などで報じられているように、酪農家の廃業が相次いでいるという話を耳にしているからだ。こちらも原因は飼料価格の高騰で採算がとれなくなり、経営が成り立たなくなってしまったため。

バターイメージ実際、今回の記事を執筆するにあたり『楽天市場で「バター」』を検索してみたが、多くが品切れ、在庫があったとしても「一人あたり2点まで」などの厳しい数量制限が設けられている。いかに品不足が蔓延しているかが分かる。

鉱産物や原油などと違い、乳製品や牛乳の原材料となる生乳は蓄積は難しいし輸入も困難(加工品なら何とか、というレベル)。電力のように「必要な時に必要なだけ」供給できる体制が整っていないと、昨今のようにすぐに品不足で大きく供給バランスが崩れることになる。

米の減反政策にしても今回のバターをはじめとする乳製品にしても、極端な減産政策が農家・酪農家だけでなく消費者も大きな迷惑をこうむっている。確かに二年ほど前には「牛乳が余っている、廃棄しなければならない」という記事を書いた記憶もあり、情勢の変化が急におきたのも原因だろう。とはいえもう少し何とか(例えば兆しが見えた時点で早急な対処を講じる)ならなかったものか、という思いも無くはない。


■関連記事:
【北海道で牛乳減産指導開始(2006年4月)】
【作りすぎで「捨てた牛乳100万本」、今後その10倍の1000万本になる可能性も(2006年3月)】

(最終更新:2013/09/01)

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