7年間で39%から45%へ・食料自給率向上計画

2008年05月17日 12:00

農業イメージ農林水産省は5月16日、2007年度における食料や農業、農村の動向と2008年度における食料・農業・農村に対する政策について閣議決定された内容「農業白書(平成19年度食料・農業・農村白書)」を公開した。その中で食料自給率について現在39%に低下している値を、7年後の2015年度に45%まで高めることを目指すことを明らかにした。世界的に食料の供給不足とそれによる価格高騰が叫ばれる一方で、農業の担い手が減少し、自給率も低下している昨今、監督官公庁である農林水産省としては自給率の向上は至上命題のようだ(【発表ページ】)。

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アメリカにおけるとうもろこしの生産・使用状況。バイオエタノール用に向けられた量が全体生産量を上回るペースで急増しているのが分かる(輸出用は多少増えているようだが飼料用が特に減少)
アメリカにおけるとうもろこしの生産・使用状況。バイオエタノール用に向けられた量が全体生産量を上回るペースで急増しているのが分かる(輸出用は多少増えているようだが飼料用が特に減少)
各国における遺伝子組み換え作物の栽培状況。効率化を第一とし、遺伝子組み換え作物が急増しているのが分かる。
各国における遺伝子組み換え作物の栽培状況。効率化を第一とし、遺伝子組み換え作物が急増しているのが分かる。

今回発表された農業白書の項目は次の通り。

第I章 特集 - 農業・農村の持続的な発展と循環型社会の形成 -
 第1節 農業の体質強化と農村地域の活性化(PDF:828KB)
 第2節 地球環境対策と農村資源の保全・活用(PDF:1860KB)

第II章 食料・農業・農村の主な動向
 第1節 食料自給率の向上と食料の安定供給(PDF:1119KB)
 第2節 農業の体質強化と高付加価値化(PDF:948KB)
 第3節 共生・対流の促進を通じた農村地域の活性化(PDF:906KB)


食料自給率についてはわざわざ1項目を設け、懇切ていねいに説明している。具体的には【この項目ファイル(PDF)】が該当するが、「新興国の経済発展」「バイオ燃料の需要増大」「オーストラリアの干ばつ」などで小麦、大豆、とうもろこしなどの価格が急騰。それらを原材料とする食品価格も高騰していると現状を認識。その上で食料の6割を輸入する日本の食糧供給体制に大きな影響が出ていると指摘し、今後も状況の改善は期待出来ないことから、「日本国内で生産し消費できる食料を増産し、食料自給率を高めるべきである」と結論付けている。

具体的には熱量ベースで現在39%の食料自給率を2015年には45%にまで高める目標を設定。その目標達成のため、

1.米粉利用の推進を含む米の消費拡大
2.飼料自給率の向上
3.油脂類の過剰摂取の抑制
4.加工・業務用需要に対応した野菜の生産拡大
5.食育の一層の推進
6.国民運動を展開するための戦略的広報の推進


を重点事項と位置づけ、生産と消費の両面から取り組みを強化する、としている。

日本及び諸外国の食料自給率(熱量ベース)の推移
日本及び諸外国の食料自給率(熱量ベース)の推移

バイオエタノールの生産が急速に広まることにより、「食料を消費して燃料を生み出す」という本末転倒な話も推し進められると共に、食品原材料の価格が高騰し、身近な食品が相次いで値上げしている。そのような状況の変化によって、人間が生活していくうえで欠かせない「食料」を自国のみでどれくらいまかなえるかという、食料自給率に関する関心が高まりつつある。食料品の生産率が上がらないのは農家のなり手が増加しないのが大きな要因の一つだが、それは「農家という職業に魅力が少ない」のが最大の原因。食料の価格が上昇すれば同じ生産量でも売上は上がり、利益も向上するはずなのだが、流通機構・買い取り制度などの問題で逆に値が下がる分野もある始末。

農業白書では「お米の消費拡大」「無駄遣いを抑える」「生産量の増大」などを掲げているが、そもそも論として減反政策をはじめとする「農業の担い手」を増やすという観点にやや欠けているような気がする。場所の整備と提供、農家が「農業」をしやすいような(金銭面とモチベーションの両面で)法整備と仕組み作りが必要なのではないだろうか。


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【今日のご飯の食料自給率がすぐ分かる!「クッキング自給率」農水省が開発】

(最終更新:2013/08/06)

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