「著作権に問題!? でもそんなの関係ねぇ」と動画を見る割合は6割以上

2008年04月14日 08:00

動画イメージgooリサーチが4月8日に発表した調査結果によると、動画共有サイトの利用者は全体の6割にのぼり、中でも【YouTube】の利用率がもっとも高いことが明らかになった。また6割以上の人が「著作権に抵触していると判断した上でその動画を見たことがある」と答えており、著作権に関する認識がまだ薄いことがうかがえる(【発表リリース】)。

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今調査は昨年7月23日から7月30日の間にネット経由で行われたもので、有効回答数は3万6615人。男女比は51.9対48.1で年齢階層比は30代がもっとも多く37.2%、ついで40代25.7%、20代19.0%など。

調査結果からは主に、動画共有サイトについて次のような傾向が見受けられる。

・男性、若年層の認知度が高い。また今後の利用率も同様。特に10代は毎日利用者が3割近く。
・人気が一番高いのはYouTubeで57.4%。
・ニュースやブログ、知人からの紹介で利用しはじめている。
・音楽、テレビアニメの人気が高い。
・自ら投稿した人は4.1%と少なめ。


これらの傾向は動画共有サイトに関する他の調査(例えば【10代は動画投稿サイトが大好き!! 年齢階層別に見た「従来四大メディア」と新情報メディアのせめぎ合い】)と同じ傾向を示している。やはり「動画共有サイトは若年層の人気が高く、今後も高頻度で利用される」「音楽やアニメなどのように、テレビや音楽プレイヤーなど既存の娯楽メディアから代わる形で利用している」のだろう。

盛況ぶりを見せる動画共有サイトだが、問題がないわけではない。その一つが著作権に関するもの。テレビ番組の録画したものなど著作権に抵触する動画が掲載され、その利用度が高いのも問題。著作権保有者からすれば自己の権利が侵害され、ビジネスチャンスを奪われたとも受け取られるからだ(無論逆の結果が出る場合もある)。

動画共有サイトで見たコンテンツについて、著作権に抵触しているコンテンツと考えられる割合(動画共有サイトの利用者のみの回答)
動画共有サイトで見たコンテンツについて、著作権に抵触しているコンテンツと考えられる割合(動画共有サイトの利用者のみの回答)

「分からない」「著作権に問題がある動画は見ない」を除いた62.4%の人が、「著作権に抵触していると分かっている」動画をあえて見たことがあると答えている。「半分以上は著作権侵害動画だね」という回答に限定しても半数近くが占めている。「ほとんどすべて」も1割強にのぼる具合だ。これは閲覧者側の著作権への認識度が低いだけでなく、運営側の管理が行き届いていない・しっかりしていないことの表れともいえる。

著作権に問題がある動画を見るのは
「問題があるから」そのものではなく
問題だとしても「面白い・興味深い」から

しかしそれら「著作権に抵触していると分かっていても見る」人の大多数は「抵触しているから見る」のではなく、「見たい動画だから」「面白い動画だから」見ることに違いは無い。著作権保有側(主に企業側)も、既存メディアの立ち位置の変化や動画共有サイトをはじめとしたインターネットなどによる新メディアの浸透ぶりを見て、歩み寄りを見せ始めている。例えば【「YouTubeをプロモーションに使う」、コロムビアミュージック(6791)社長の決断】のように、動画共有サイトへ積極的に動画を掲載し、その影響力を利用しユーザーにも便益を得てもらおうという試みだ。

コロムビアのような「企業や芸能人・有名人などが自ら動画を掲載する」動きは多所で起きており、特に欧米のメディアでその傾向が強い(例:【CBS、動画投稿サイトYouTubeでの番組視聴は1か月で3000万回。テレビ視聴者数も増加する相乗効果】)。要は「(企業側としては)勝手気ままに流布されたのでは困る。だからある程度は掲載者・権利保有者としてコントロール権を握るけど、妥協して色々とアップロードしてあげる」という考えに基づいている。

日本でも今まで以上に動画に関する著作権規制を強める傾向があり、今後は問題性の高い動画は減少していく可能性が高い。このように「著作権などに問題のある動画が減少していくと想定した時、動画共有サイトの利用はどのように変わるのか」とたずねたところ、意見が分かれる結果が出た。

著作権などに問題のある動画が減少していくと想定した時、動画共有サイトの利用はどのように変わるのか
著作権などに問題のある動画が減少していくと想定した時、動画共有サイトの利用はどのように変わるのか
「取締強化・企業などが自主掲載」

強い拒否反応は2割
今まで通りは1割強
残りは「様子見」?

「問題のある動画が見られなくなったらもう使わない」が2割強、著作権保有者自らが掲載していく傾向が強まるのなら今までどおり利用するが3割強。元々そういった問題のあるものは見ていないが2割近く。そして分からないが3割近くを占めている。

このうち二番目については「内容が良ければ」という前提があるので、規制が強化された上で著作権保有者側が配信する動画内容が期待はずれのものに終われば、「分からない」派の一部と共に「利用しない」に転向する可能性は高い。要は過剰に反応しているともいえる「利用しない」派の2割以外は「どの程度規制・自主掲載がされ、便宜性が上下するのか様子見」していると見てよいだろう。


先のCBSやBBCなど欧米のテレビメディアでは一般の番組やニュース報道に至るまで、多くの映像を動画共有サイト上の自社チャンネルから提供し、利用する機会を設けている。単に「インターネット上から動画を閲覧できる」という利点を得て読者に満足させるのなら、自社サイト上に「動画閲覧コーナー」を設ければよい話。だが、わざわざ動画共有サイトに載せてライブラリ化するのはその集客力もさることながら、ブログパーツも提供することで「ネット上の口コミによる認知度アップの波及効果」を狙っているのだろう。

・DVDなど二次への支障
・出演者との契約問題
・コントロールが手元から
 離れるのが気になる

翻って日本のテレビメディアでは「インターネットで動画が閲覧できれば良い」としか認識していない傾向がある。動画配信はするがブログパーツなどで動画の共有化をする傾向はなく、掲載も短期間で終了してしまうのがほとんど。報道の記録化・保存化という観点からすればまったく逆行していることになる。また、娯楽系番組の場合には後ほどビデオやDVDとして発売する際に売り上げ減につながるかもしれないという懸念、さらには出演芸能人との契約問題も絡んでいるのだろう。

さらには(これは推測だが)「自分のコントロール化に無く一人歩きをされてしまうのはシャクに触る」「解釈や判断も含めて自分達の指揮下におきたい」という製作者側の意図が強く働いているものと思われる。要は「報道」という観点よりも「創造物」という点を強く意識しているのだろう。

映像(動画)も情報の一つに他ならない。インターネットの最大のメリット「蓄積」「検索」を最大限に活かせる動画共有サイトの利用は、ビジネスモデルさえ工夫すれば動画の著作権保有側にも決してマイナスにはならず、プラスに働くはず。テレビなどの既存メディアも、既存メディアに対するものの考え方同様に「上からの目線」でコントロールできないかと考えるのも一興だが、それよりも一歩下に「降りて」きて、利用者と一緒に共存の道を模索してみるのもありかもしれない。


(最終更新:2013/08/09)

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