「外食節約」「娯楽やファッションをチープに」物価上昇で変わる庶民の生活スタイル

2008年03月30日 12:00

節約イメージ【マクロミル(3730)】は3月25日、消費と値上げに関する意識調査の結果を発表した。その概要はすでに【今日からできる24の電気やガスの省エネ対策】でお伝えしたとおりだが、物価の上昇と消費への影響において興味深い傾向が見られたので、今回はその件についてスポットライトをあててみることにする(【発表リリース】)。

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削る対象はまずインフラ、そして食事

今調査は3月12日から13日の間にインターネットリサーチ形式で行なわれたもので、調査対象地域は1都3県。対象は20~59歳の主婦。年齢階層は20~50代まで各10年ごとに均等割り当て。サンプル数は516。

今回注目する設問は、去年の夏以降特に顕著な物価の上昇(食品やガソリン、電気・ガス料金などの相次ぐ値上げ)が一人一人の生活にどのような影響を及ぼしているのか。さまざまな選択肢の中から複数回答で答えてもらうというものだった。

物価上昇が生活に与える影響について
物価上昇が生活に与える影響について
物価上昇で影響があるのは
「インフラ」
「食事」
「遊興費」
の順

設問全体がもともと「電気やガスの値上げ」をメインにしていることもあるが、直近で値上げが予定されている「電気・ガス」の使用をひかえるという回答がもっとも多くなっている。それに続くのは「外食費」「食費」などの食事関係の倹約、次いで「娯楽やレジャー」「ファッション」など遊興費の削減。「趣味」や「交際費」なども遊興費に含まれることを考えると、「身近なインフラ」「食事」「娯楽」の順に出品を抑えようとしている(物価上昇の影響が生じている)ことがわかる。

まずは手身近に、日常的に経費が発生している部分の見直しをはかり、それで対処し切れなければ次に食事。それでも足りなければようやく自分の娯楽にも手を出さざるを得ない、という考えだろう。厳しい物価環境の中でも、「自分のプライベート・趣味の時間はできるだけ現状を維持したい」という思いが見て取れる。

20代の節約意識は高い・物価は上がっても貯蓄や保険は断固として維持、したいが……

一方、貯蓄額の減少や保険料の見直しなどはきわめて回答率が低い。これは物価の上昇となかば連動する形で人々の頭に思い浮かばれている「年金」や医療など、社会保障への不安感から来るものだろう(参考:【9割が「年金に不安」でも「個人年金に加入」は3割】)。

20代の節約意識は高い
若年層も意外に堅実

しかし現実には
収入不足から
貯金や保険にも
手を出さざるを得ない

特に20代は上位回答層「電気・ガス」「外食費」「家での食費」の回答率が高い。この世代の節約意識の高さ(逆に考えれば現状における無駄使いさ)には少々驚き。また、できるだけこの項目で必要な節約額を果たし、他の選択肢まで手を回したくないと考えているのならば、貯蓄や保険に対する意欲が高いことも分かる。この傾向は同じマクロミルが過去に行った調査結果「20代の8割が毎月貯金している」を裏付けるものとなっている(【あなた、貯金してます? 20代の8割が「毎月貯金」】)。

もっとも現実的には20代は収入面で余裕がないのも事実。電気や外食における節約回答率が高い一方で、貯蓄や保険を削る・見直すという回答率も年齢階層別では一番高い結果が出ている。他の調査とあわせて考えると「生活が厳しくなっても将来のことを考えたら保険や貯蓄はしっかりしておきたい。けれども収入が少ないので泣く泣く削らざるを得ない」20代の悲哀が想像できる。

「安いものだけ買うために店を渡り歩く」物価上昇と小売業の不振傾向の関係

昨年夏あたりから毎月業界団体の月次レポートを元に、主要小売業の販売実績動向を当サイトでレポート化しているのはご承知の通りだが、その各レポートでも昨今において「売上高が全般的に落ちている傾向」がある。特に消費者がある程度コストを要する外食産業において顕著なものとなっている。また、大まかに「来客数は増えているのに客単価が減り、全体的に売上高は横ばいか減少」という傾向があるのも見逃せない。

消費者の節約志向
・お店で安いもの「だけ」を買う
・複数店舗をはしごする

小売業界における
「来客数増&客単価減」
の傾向を導く!?

小売業界側のデータから見られる上記のような現状と、今回の調査結果から把握できる消費者側の「外食や食費、娯楽、ファッションにかける費用を削りたい」という意向をあわせて推測すると、「消費者は複数店舗を渡り歩いて安いものだけを選んで買う」購入の傾向を強めているのではないかと思われる。言い換えれば「買い物上手になりつつある」というところか。

たまごイメージ小売業者からすれば例えば「新鮮な大セール、卵1パック100円・お一人様1点限り」のような「セールス商品でお客の足を自店舗に向かわせ、他の商品もまとめて買ってもらってトータルで収益を稼ぐ」つもりでいたのに、「卵1パックのみを手にレジに並ぶ」客ばかりのように「セールス商品のみを買う客が増えている」ことになる。

消費者側もそれだけ賢くなっている、あるいは生活が厳しくなっている表れだろう。


当方(不破)の中の人がFP資格保有者であることからあえて言及させていただくと、「保険料の見直し」は物価の上昇云々にかかわらず是非一度してほしい。必要なものを削るのではなく、不必要なもの、余分なものを削るという観点で考察すれば、多くの人の事例で無駄な部分を省き、適切な保険の加入と保険料負担が実現できるはずだ。

また、20代が(現実的に収入が少ないために切羽詰っているという実情もあるが)世間一般に思われている以上に節約意識が高いのも、今回の調査から改めて把握できた。貯金箱の売れ行きがよいのも、その傾向に関係があるのだろう。

新興国の急激な消費量の増加や、商品市場への投機資金の過剰流入など、昨今の物価上昇はこれまでとは原因が多少異なる雰囲気がある。いつ頃鎮静化するのか、予想がつきにくいのが現状だ。

消費者側としてできることは、節約、というより無駄を省くための知識の会得と実践。これは手間と時間をかければ誰にでもできる。そして何よりも、気持ちの切り替えが大事だといえよう。


(最終更新:2013/08/09)

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