札束抱えてお店に買い物……超インフレなジンバブエの買い物風景と現状

2008年03月08日 12:00

インフレイメージ先に【1週間で物価が4倍!? 経済危機のジンバブエで超インフレ状態・年間10万%の可能性も】などで紹介したように、アフリカ内陸部の国ジンバブエでは、現在世界経済史上に刻み込まれるであろうほどの超インフレ状態にある。1000万ジンバブエ・ドル紙幣などというものが発行されるほどだから、そのレベルも理解できよう(日本なら1000万円札が流通するようなもの)。そのジンバブエの現状をひと目で理解できる情景が【DailyMail】で報告されていた。

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買い物に不可欠なのは「札束の重さで壊れないバッグ」

現金輸送車に銀行の現金を運ぶ様子でもなければ、宝くじに当選した賞金を持ち運ぶところでもない。ある青年のお買い物風景。
現金輸送車に銀行の現金を運ぶ様子でもなければ、宝くじに当選した賞金を持ち運ぶところでもない。ある青年のお買い物風景。

写真を見ると「宝くじでも当たったのかそれでも起業で大成功したのか。いずれにせよ、とんでもないお金持ちだな」と思うかもしれない。しかし実際にはジンバブエの首都Harareのどこにでもある(と思われる)買い物風景。彼はこれだけ山盛りの紙幣を抱えることで、ちょっとした食料品を買い集めるための「現金」をどうにか用意することが出来たのだという。

しかし彼が持つジンバブエの通貨紙幣「ジンバブエ・ドル」は為替レート上の下落を続け、昨日まで2500万ジンバブエ・ドルで1米ドルだったものが、当日はさらに価値を下げてしまった。今や2500万ジンバブエ・ドルはイギリス通貨で50ペンス(日本円で100円)程度の価値しかない。買い物をしても、缶ジュース一本か小さなパンを一つ買ってそれでオシマイ。

ジンバブエでは超インフレを迎えたことで、買い物において「100,000 and 200,000 notes bundled together in bricks」、つまり「10万ジンバブエ・ドルや20万ジンバブエ・ドルを束にしてレンガのようにまとめた札束」がよく使われるようになった。この「札束レンガ」を買い物バッグに詰めて、お買い物に出かけるそうな。

今やジンバブエで重要なのは、「お札を大量に入れても壊れない丈夫なバッグ」と、「お札の重さを量るための秤(デジタル系が好まれる)」。ちなみに現在の一般市場レートでは、18.1キロの重さのお札(元記事では札の種類が未記載)が50ポンド(約1万円)に相当するとのこと。道端では自国の高額紙幣が打ち捨てられている情景が日常茶飯事。拾ってもそれこそ「一円の価値にもならない」からだ。

秤(はかり)で「札束レンガ」の重量=価値を計測中
秤(はかり)で「札束レンガ」の重量=価値を計測中

一方このような情勢を見て「クレジットカードや小切手を使えばいいではないか」と思うかもしれない。少なくとも上の写真の青年のように、山盛りの紙幣を運ぶ気苦労は無くなる。しかし元記事によればそれらカードなどを使うために銀行へお金を預けていると、インフレであっという間に価値を減らしてしまうので、使う人がほとんどいないという。

経済情勢と政府の動向

ジンバブエではインフレを止めるため、5億ジンバブエ・ドル(10ポンド=2000円)以上を保有するのを禁止した。また、普通のお店に商品はほとんど並べられていないが、それは政府の物価統制下で販売するとほとんど商売にならないため。人々は闇市場(もちろん政府の統制市場と比べて割高)での流通物資に支えられて生活している。

80%の失業率、止め処もないインフレ、燃料や食料、社会インフラの絶対的不足。このような情勢下においても、今まで28年間大統領の座についていたロバート・ムガベ大統領率いる政府は、3月29日に行われる国民投票に絶対の自信を持っているという。その自信が「国民に支持されるから」ではなく「自分の有利に票を操作できるから」であることは想像するに難くない。

それを裏付けるように、前回の選挙では対抗勢力に脅しをかけたり投票箱をすり替えるなどの違法行為が多数見つけられ、数々の起訴を受けている(が、大統領の座に留まり続けているということはもみつぶしたのだろう)。また、今回の選挙では西側の選挙監視団入りを拒否している。

ちなみに最新のデータでは、1米ドルあたりの為替レートは、2400~2500万ジンバブエ・ドルとのこと(【Wikipedia上の3月分データ】)。現在のドル円レートが1ドル=100円強だから、ほぼ元記事のレートとも一致する。

以前の記事で比較対象として挙げた第一次大戦直後のドイツにおけるハイパーインフレでは、国内の土地を担保にした(いわば「金本位制」ならぬ「土地本位制」)新通貨レンテンマルクを発行。通貨発行量や国債引受高を制限することで、インフレを抑えることに成功している。ジンバブエで同様の政策を行なうかどうかは不明だが、少なくとも現状の独裁体制においては、変革は望めそうにもない。今しばらくはさらなる、そして歴史上類を見ないインフレの加速を耳にすることになりそうだ。


■関連記事:
ジンバブエのインフレをグラフ化してみる(2008/07/19)】

(最終更新:2013/08/10)

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