1月の新設住宅戸数、前年同月比5.7%減・確実な底打ち感

2008年03月01日 12:00

住宅イメージ国土交通省は2月29日、2008年1月における新設住宅戸数のデータを発表した。それによると1月の新設住宅戸数は前年の同月比で5.7%減の8万6971戸に留まり、7か月連続して前年同月比で減少したことが明らかになった。ただし前年同月比のマイナスポイントも着実に減りつつあることなど、先月から引き続き確実な底打ち感が見受けられる。(【発表リリース、PDF】)。

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具体的な内訳は持家が4.2%、貸家は2.7%、分譲住宅は11.6%の減少。とりわけ分譲住宅のうちマンションは12.0%と先月同様非常に比較的目立つ減少率を見せた。ただ、これら列挙した数字すべてにおいて、昨月よりさらに改善された様子が見られる。先月から引き続き、全体の販売戸数同様、底打ち感を力強く体感できる。

改正建築基準法の施行は、くだんの「姉歯建設設計事務所による耐震強度偽装事件」をきっかけに全国で多数発覚した耐震偽装の再発を防ぐためのもの。住宅を着工するのに必要な建築確認の審査を厳しくして審査期間も延長。さらに検査機関以外に専門家も確認するなど、複数のプロセスを経るようにした。

事件を教訓として安全な住宅を市民に提供するという意図は正しいものであり、業界そのものの改善や住宅を供給される市民にはプラスとなる。しかし行政側の準備不足や不手際(特に「大臣認定プログラム」や審査担当者絶対数の不足)が目立ち今回の混乱、そして結果としての新設住宅戸数の減少をもたらしている。ちなみに先に【建築不況好転のきっかけとなるか・改正建築基準法に対応した「大臣認定構造計算プログラム」第一号完成】で報じたように紆余曲折がありながらも、先日ようやくプログラムの第一本目が誕生した。

新設住宅戸数の変遷
新設住宅戸数の変遷(2008年1月分まで)

グラフや各種データを見る限り、激減した8月分からほぼ横ばいに推移していたデータも10月分からは上昇傾向を継続しており、これまでの発表分で推定された「底打感」が確実に、そして力強く裏づけられた形となった。相変わらず前年同月比はマイナスの粋を脱しておらず、前年とほぼ変わらずの域に達するまでにはもう一、二か月は必要だと思われることや、「認定ソフト」の第一号が完成したとはいえ普及までには今しばらくかかること、他社のソフトが完成していない、そして何よりも景気全体が落ち込み気味であることなどから今しばらく状況の観察が必要だが、最悪の時期は脱したと見て良い。

また、着工床面積概要も同様の下落を示しているが、久々に住居用の減少率の方が小さい結果となっている。工場が21.3%減と軟調なのが気になるが、店舗用が3.0%増とわずかではあるが増加し、3か月連続の増加傾向にあるのが心強い。小売店業界における店舗の統廃合と新規展開の動きがデータとして現れているのだろう。

耐震強度偽装問題を教訓にした
「改正建築基準法」の施行
→行政の不手際などで
新築戸数などが激減
→今夏で底打ち。
本格的な再上昇の気運強まる

国土交通省では同日、住宅着工に一か月ほど先行するといわれている建築確認件数も発表している(【「最近の建築確認件数等の状況について」発表リリース】)。これによると全体では交付数において5月が前年同月比で6.5%マイナスだったのに対し6月は9.7%、7月に入ると大きく下がり39.4%、8月には24.5%そして9月には27.5%それぞれマイナスを記録しているが、10月には11.1%・11月には9.6%のマイナスと若干回復の兆しを見せていた。しかしながら先月発表された12月分データでは11.5%のマイナスと、再び1.9ポイントの下落が見られた。景気全体の後退が影響し再びマイナストレンドに向かうのかという懸念もあったが、1月のデータでは前年同月比で4.5%に留まり、ほっとさせる面もある。ただしこの時期は元々絶対件数が少ないため誤差が生じている可能性も否定できず、来月以降の動向にも引き続き注意が必要である。

国土交通省から今回発表されたデータは、先月同様改正建築基準法施行の影響の大きさ、そしてその影響による住宅不況の底打ち感の力強さを推定できるものとして注目されている。【改正建築基準法で影響を受ける周辺業界たち】でも触れたように、建設業そのものだけでなく周辺業界への影響も深刻化の一途をたどっている。底打ち感が本物であれば、これら周辺業界の状況もじきに(数か月くらいの遅れと共に)改善の方向に進むものと思われる。


(最終更新:2013/08/11)

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