改正建築基準法で影響を受ける周辺業界たち

2007年10月22日 06:30

建築中のビルイメージ6月20日に施行された改正建築基準法の影響で、新築住宅の着工件数が落ち込んできたことはすでに【8月の新設住宅戸数、前年同月比43.3%・過去最大の下落率】でご紹介したとおり。その影響が直接建築業界だけでなく、周辺の業界にも広まる様相を呈している(参照:日経新聞)。

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住宅地イメージ半月ほど前にこの改正建築基準法の問題を話していたところ、関連業界に勤めていると思われる人から次のような指摘があった。いわく「うちでは建築資材を取り扱っているんだが、注文が急に少なくなり、自社の倉庫には在庫の山が出来ている。仕事そのものも少なくなり、ヒマだ」というもの。

先の記事では法改正で審査体制が官民共に混乱し、移行後の状況に慣れるまでしばらくは「審査通過」「建築着工」の数が激減する可能性を示唆した。この時は単に「住宅建築業界」「建築士界隈」のみに影響を与えているとしか言及しなかったが、「風が吹けば桶屋が儲かる」のことわざ通り、関連業界に、しかも連鎖反応的に影響が及びつつある。

10月19日発売の日経新聞では「住設機器・家具に波及」とのタイトルで、その関連業界に関する影響や、具体的な品目・業界名などがピックアップされていた。そこでここでは独自に追加したデータもあわせ、想定されうる「影響を受ける業界・銘柄リスト」を作ってみた。もちろんリストは「想定業界の一部」に過ぎず他にも多数該当しうること、さらにこれらの企業がすべて改正建築基準法の影響を受けるとは限らないことをお忘れなく。

■屋根や外装材
【松下電工(6991)】……7~9月期は外回り受注金額が前年同期比-10%

■ビル用サッシ
【不二サッシ(5940)】……今年度売上高目標-5%想定
【三協・立山ホールディングス(3432)】……直近四半期売上高前年同期比-5.3%
【住生活グループ(5938)】

■断熱材
【旭化成建材】……9月の工場稼動日を2日削減

■合板、石こうボード
【越智産業(7489)】……在庫増の懸念

■衛生陶器など
【TOTO(5332)】……下期受注減を懸念
【クリナップ(7955)】

■ホームセンター
【ユニリビング】……建築資材の売行き減
【コーナン商事(7516)】

■家具やインテリア
【ニトリ(9843)】……既存店売上高が二か月連続前年割れ
【島忠(8184)】

■仮住まいの提供
【日本テンポラリーハウス】……7~9月需要前年比-10%

■足場部材
【ダイサン(4750)】


さらに住宅着工の遅れは、マンションデベロッパー(住宅の開発提供メーカー)にも大きな打撃を与えている。売上があがる時期が伸びればそれだけ借りている資金の返済に時間がかかり、その分金利負担が大きくなる。たかが数か月、と思うかもしれないが、住宅・マンションの建築費はそもそも億単位という大きな額なので、わずかな期間の延長も大きな費用となりうる。費用が増えればそれだけメーカーの負担も大きくなり、住宅そのものの価格も押し上げかねない。

一方、「新築が困難ならリフォームで」という発想を持つ人・企業も。新築住宅にも大きく関わっているが、リフォームでその減少分を補うこともできるだろう。例えばシステムキッチンの【クリナップ(7955)】、社宅そのものの再生事業などを行なう【アルデプロ(8925)】など、可能性を見出せる企業も探せばいくらでも出てくるだろう。


住宅地イメージ今回の改正建築基準法の影響は年内に終息するという意見もある一方、基準そのものが厳しくなっているため長期間に及ぶ可能性を示唆する人もいる。しかし先の記事でも述べたが、基準そのものを厳しくして(特に耐震面において)、安全な住宅を提供するという考えは決して誤りではない。

住宅購入は一生ものといわれている。さらに命は一人一つしかない。基準が正しい方向で厳しくなったのなら、そのせいで「着工が遅れるから何とかしろ」というのは住宅を買う側からすれば業界側のエゴと受け取られても仕方が無い(もちろん認定ソフトの開発や基準設定、審査員などの不足をはじめ、行政側の対応の遅れは問題視されるべき)。

新しい体制に官民そして購入者すべてが真剣になって対峙すると共に、住宅取得について今一度じっくりと考え直す良い時期なのかもしれない。


(最終更新:2013/08/18)

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