1単元が100株に統一、その時株主優待はどうなる!?

2007年12月03日 06:30

先に【東証、正式に「売買単位を最終的に100株に集約」を発表】でもお伝えした通り、東証をはじめ日本国内の証券取引所が株券の電子化をはさんで最終的に売買単位(単元)を100株に統一する移行を明らかにした。何らかの問題が生じない限り、このスケジュール通りに単元統一は進められるだろう。そこで気になるのは「優待制度はどうなるの?」というお話。

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これは先の記事掲載直後に掲示板で読者の一人、ハバネロさんも指摘していたのだが、話のネタとして少々面白いものになりそうだったので、あえて先には触れていなかった要素。

まず前提として「最終的に単元が100株に統一される」という話がある。そして株主優待を実施している企業には「1単元から優待を提供している」ところもあれば、「複数単元を優待提供最低ラインに設定している」ところもあることに注意しなければならない。

元々1単元が100株の企業は今回の「統一案」でも何の問題もないが、関係してくるのはそれ以外の企業で、優待制度を実施している場合。例えば【優待速報カテゴリー】で調べて一番新しいデータを参照すると、【ティア(2485)】は1株から株主優待制度を導入している。また、【ティーオーシー(8841)】は500株以上から。この2例について「100株統一案」に従った場合どのような売買単位の変更が行なわれるのかを考えてみる。

1000株や500株などから100株に単元が下がる場合

まずティーオーシーのような大きな株数から小さな株数に単元が変更されるパターン。事例の場合、単純に500株→100株への変更が行なわれるだけだろう。最終終値は952円だから、売買単価は50万円近くから10万円弱に変わるだけ。何の問題もない。

優待制度は現行では「500株以上」となっているが、この優待制度に対する企業の意図が「最低単位でも株主な人に」なのか「500株くらい持っている人になら」なのかによって違ってくる。前者の場合は単元変更と同時か権利確定前に「優待権利は500株から100株に変更」となる。後者の場合は現行制度はそのままにするか(つまり最低単元の株主には優待はナシ)、あるいは「499~100株(=最低売買単位)までの株主には別途の優待制度を新設」となる。

単元変更で取得単価が'下がった'場合
優待制度を新設・対応する企業は多い。
しかし過度の期待は禁物。

具体例を挙げると【東海運(9380)】は8月1日から単元を「1000株→100株」に変更することを5月21日に発表しているが、その発表からしばらくたった7月19日に、優待制度についてこれまで1000株が最低提供単位だったものを「100~999株で500円相当・1000株以上で3000円相当のオリジナルクオカード」と変更。単元変更で生じる、これまでより小さい取得単位で株主になった人にも配慮する制度を導入している。

最低取得価格が下がり、株主数が増加することが予想されるこのパターンで、最低取得単位の株主にも優待を新設するか、そのまま制度をつらぬくか(=1単元株主には優待ナシ)は、正直企業側の胸先三寸。傾向としては「単元変更で最低取得単価が下がった場合、その株主向けに優待を新設する」パターンが多い。しかし【日水製薬(4550)】のように、2006年5月に単元を1000株から100株に変更しても1年以上優待は元の単元の1000株以上のまま、というところもある。期待だけにすべてを賭けるのは単なるギャンブルに過ぎないので注意が必要。

なお可能性として「1000株・500株から100株に単元が変わった際」に併合を行い、かたくなに最低売買価格を固持する可能性も否定できない。ただ、余計な経費をかけてまで固持するだけの事由がない限り、100株へ単元を変更するだけで留まるだろう。

1株や10株などから100株に単元が上がる場合

一方で多少やっかいなのが、ティアのように「1株や10株などから100株に単元が上がる場合」。ティアの場合現在1株単位で取引が行われており、最低売買単価は8万円強。このまま100倍して1単元を100株にすると1売買単位が800万円強になってしまう。まるで現在の任天堂の株式のようだ。東証のガイドライン「売買単位は5万円~50万円の範囲内で」から見事に外れてしまうので、このパターンはまずありえない。現在単元が1株、10株、50株の銘柄の多くも「そのまま100株を単元にしたら、売買単位の金額が大きすぎてしまう」という事例が多数登場するはずだ。

この場合、かつて【三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)】が導入した手法が用いられることだろう。三菱~の場合、まず1株を1000株に分割した。そして同時に100株を1単元とする単元株制度を導入して調整を図っている。分割・単元制度導入前は1売買単位が100万円以上していた同社の株式も、現在は10万円強から手に入れることが出来るようになった。流動性は高まり、株主も増加していることだろう。

「分割」と「単元変更(導入)」を同時に行なうことで売買単位を調整するこの方法は、多くの企業で採用されることだろう。例えば上記ティアの場合、「100分割」と「1単元100株」を同時に導入すれば、単元変更前後で売買単位はまったく変わらなくなる。これなら優待制度についても、同時に現行の「1株単位」から「100株単位」に変更すれば、何の問題も無くなる。

「100分割!? ライブドア事件に懲りて大規模な分割はしないように指導されているのでは?」と指摘する人もいるだろう。確かに【東京証券取引所、1万円以下の投資単位を認めないように株式分割時のルールを見直しへ】にもあるように、東証では大規模な株式分割を制限している。しかしこれはあくまで「売買単位が1万円以下になるような株式分割」を制限しているのであり、同時に単元変更(導入)が行なわれて売買単位が規制範囲内にあるのなら、何の問題も要らない。ましてや「100株単位に」というのは東証側の意向。意向に従って分割をしたのに、その点でとがめられるいわれはない、というところ。

このように少数株数から100株に単元が繰り上がる場合、優待制度は基本的に「変更前後で同売買単位の株主に渡されるように」配慮されることだろう。例えば上記事例なら、現在1株単位から配布されていた優待が、「100分割・売買単位100株に変更」と共に、「100株から配布」になるといった具合である。


「株主優待大好き投資家」の立場からすれば、「100株統一規制」の導入でチャンスが生まれるのは、現行で1000株・500株の売買単位を採用している優待銘柄。繰り返しになるが、多くの銘柄が最低取得単価が下がった際に安い単価で優待が手に入るように制度を変更している。今後1000株・500株単位の銘柄には要注意、というところだろう。

一方単元が現在1株・10株の銘柄にもまったく可能性が無いかといえばそうでもない。先の三菱UFJフィナンシャル・グループでは単元変更に伴い、1単元株主からも優待を提供する優待制度を新設している。単元の変更が「多くの投資家に株主になってもらう」のを意図とするのなら、同時に優待制度を新設・拡充するのは自明の理といえよう。

もちろん株主優待のためだけに株主になると、色々な意味で痛い目にあうことも多い(そう、多いのですよ、まったく……)。あくまでも株主優待は株主の権利、投資判断基準の一つとして考えるのが無難といえよう。

もちろん制度が大規模に変わる「変革期」には色々とチャンスが生まれることも多い。その点では今後、大きな投資機会が生まれるかもしれない。情報アンテナを張り巡らせ、来るべき時に備えておくのにこしたことはないだろう。


※ティーオーシーやティアの事例はあくまでも「仮に」の話です。実際に両社がこのような形で制度変更を行なう旨の発表はしていませんのでご注意下さい。

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