【更新】「配当課税10%継続」「譲渡益は3000万/年超の部分のみ20%に」証券税制で金融庁案提示

2007年12月08日 12:00

株式イメージ【ロイター通信】などが伝えるところによると渡辺喜美金融担当相は12月7日金融庁サイドの意見として、証券税制優遇措置の存続・撤廃・代替案の提示について、「配当減税はそのまま続行」「譲渡益減税は年間3000万円を超えた譲渡益への税率は20%に戻す」などの案を自民党の税制調査会に提出することを明らかにした。

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「証券税制優遇措置」とは株価低迷を是正するために2003年に導入されたもので、従来20%である株式の譲渡益・配当益税率が10%に半減されている。現状では譲渡益は2008年末、配当は2008年度末に廃止予定。現在アメリカのサブプライムローンなどに端を発する金融信用不安で株価が不安定な状況にあるため、市場に影響を与える可能性を考慮し、再延長・恒久化を求める声が高まっている。先に【「20%だが配当・譲渡益損益通算」「少額配当は10%継続」など・財務省が新証券税制案提示】でも報じたように、財務省側では「原則廃止。20%に戻すが通算制度を導入し、配当は少額の場合のみ10%継続。2008年中までに取得した株式の譲渡損益は10%を引き続き時限的に適用」という案を提示している。

今回金融庁側から提示されたのは次のような案。

・配当への課税率10%は現行維持
・譲渡益への課税率は、年間売却益のうち3000万円を超える分については20%に戻す。3000万円以下の部分は現行の10%を維持


当案内容について渡辺金融担当相は「財務省案では複雑すぎる。金融庁案なら分かりやすく、一般投資家は今までと同じ制度で投資が出来る。貯蓄から投資への流れは確実に進んでいく」とコメントしている。指摘の通りこの案ならば、「金持ち優遇」という批判に対処しつつ、投資家の市場からの逃避を避けることができる。

NHKや[日経新聞]の報によると、今回財務省・金融庁それぞれからの試案を受けて行なわれた自民党税制調査会においては、「3000万円というラインでは金持ち優遇の批判を避けることはできない」という意見が出され、調整が続けられているという。財務省側が提示している「株式譲渡損益と配当を通算して課税する金融一体課税の2009年1月からの導入」では意見が一致した一方、譲渡益・配当への税率についてはまだ意見の調整がつかず、各会派の駆け引きが行われているとのこと。来週後半の13日までには意見を集約し、来年度税制改正大綱を策定する予定。

3000万円というライン引きが妥当かどうかは過去の統計データを吟味する必要があるだろうが、金融庁側の提示案はきわめてシンプルで分かりやすく、しかも現実味のある内容といえる。「優遇優遇」と連呼されている現在の証券税制だが、【日本は譲渡益・配当益課税共に高い水準……国際競争力維持・強化のための「証券税制優遇措置継続」案】にもあるように現状の10%ですらアジア諸国の中ではむしろ高いほう、欧米諸国と比較してもほぼ同等で政府が求めている「中長期の投資スタイル」に対する課税率では日本が高い部類に入ることが分かる。

事務手続きの煩雑さなどの考慮もしなければならないが、感情論を抜きにすれば「配当課税は10%維持かむしろ軽減(二重課税を考慮)」「譲渡益課税は一定額を超えた分は20%に、それ以下は10%維持」「配当・譲渡益損益通算」という折衷案が無難なのではないだろうか。

「証券税制のみ優遇はいかがなものか」「金持ち優遇だ」「税率を元に戻せば単純計算で2倍に税収が増える」という意見は、それぞれ先の「日本は譲渡益・配当益課税共に高い水準~」、【「証券税制優遇措置は金持ち優遇税制」に異論、金融庁資料から】【「証券優遇税制廃止してれば7800億円超の税収増」にダウト!?】など、論理的に、あるいは具体的なデータなどから打破されている。にも関わらず相変わらず「国民感情云々で反対。廃止しろ」という主張があるのは、その方が(例え間違い・事実でないとしても、伝える・主張するマスコミや先生方からすれば)アピールしやすく、支持を受けやすいから、という事情があるからなのだろう。

「真実を伝える」という職務を放棄している一部報道や政争の具に利用している方々に負けることなく、「正しい」事実のもと、納得のいく証券税制改革を果たしてほしいものである。


(最終更新:2013/08/18)

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