上場廃止企業銘柄換金の場、フェニックス銘柄制度を新設へ

2007年11月22日 06:30

ファーザー(ズ)イメージ日本証券業協会は11月21日、上場廃止となった銘柄の流通に関する制度整備について検討する協議会の報告書をまとめ、その公開を行なった。それによると店頭取引における新ルール「フェニックス銘柄制度」が年度内にも設けられることが明らかになった(発表リリース、PDF)。

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上場廃止銘柄株主に換金の機会を与える「フェニックス銘柄制度」についての動きは先に【上場廃止銘柄の市場創設に日証協が作業部会を設置・9月末までに具体案構築へ】【上場廃止銘柄の取引市場創設について日証会の会長が言及「現実を補完する手段」】【「ファーザーズ」市場新設!? 日証協が上場廃止株の市場創設へ・毎日新聞報じる】などでお伝えしたとおり。

今回発表された「フェニックス銘柄制度」は上場廃止となり、株主としての地位は維持されるが、換金(投資資金の回収)が困難になった株主・投資家を救済するのが主な目的。特に昨今、有価証券報告書の虚偽記載などの問題をきっかけに旧カネボウや西武鉄道など、大手企業で少なからぬ個人株主を抱えたまま上場廃止となる企業が相次いでいることから、対策が求められていた。

現在においても未上場株式を店頭取引する制度「グリーンシート」の中で、上場廃止株式を対象とする「フェニックス区分」があるが、今報告書ではその区分を新しい銘柄制度「フェニックス銘柄制度」として独立させることを提示している。また「フェニックス銘柄制度」が単に投資家救済だけでなく、企業側にとっても再生の機会を与え支援する意味合いがあると説明している。

ちなみに現在における「フェニックス区分」銘柄は次の通り。

・太陽毛絲紡績(株)(時価総額基準)
・チッソ(株)(債務超過)
・プラス・テク(株)(時価総額基準)
・太平化学製品(株)(資本金不足)
・(株)信貴造船所(時価総額基準)
・オリエント時計(株)(債務超過3期連続)
・三国商事(株)(債務超過3期連続、資本金不足)

※()内は上場廃止理由


現在、「新人予備群」的なグリーンシート制度の中に「退陣層」ともいえる上昇廃止企業銘柄の「フェニックス区分」が設けられていることで、グリーンシート銘柄制度そのものが分かりにくいという状況も指摘されている(いわば高校の野球部選手と、何らかの問題を抱えて選手生命半ばで引退を余儀なくされたプロ野球選手が、同じ草野球チームにいるようなもの)。今回「フェニックス銘柄制度」を新設することで、各銘柄に対する投資家や証券会社のアプローチをはっきり分けさせる狙いもある。

フェニックス銘柄制度では協会が「フェニックス銘柄」に指定することで、現在では未上場株に原則禁止している株売買の勧誘を証券会社に認めさせ、株主が株を売りやすくするというメリットもある。

「マザーズ」ならぬ「ファーザーズ」と揶揄(やゆ)されることもあったフェニックス銘柄制度。今回具体的に設立が公表されたことで、具体的に立ち上げられる方向で状況が進展したことになる。「監理ポスト」「整理ポスト」という猶予期間を経ても株式を手放さなかった個人投資家に、改めて換金の機会を与える必要があるのか、さらにはそのような立場の株主を「救済」する市場をわざわざ作るのは、労力のムダとなるばかりでなく、上場廃止そのものの意味が形骸化し、モラルハザードを引きおこすのではないかという考え方もある。今後も賛否両論が交わされることだろう。

ただ逆に考えれば、上場廃止理由によっては上場廃止後でも「株主になりたい」と思わせる魅力のある企業もないわけではない。少なくともそのようなニーズに応える観点からは、「フェニックス銘柄制度」は魅力的に見えるのかもしれない(「NEO」を活用すればよい、という考え方もあるのだが……)。

(最終更新:2013/08/18)

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