上場廃止銘柄の取引市場創設について日証会の会長が言及「現実を補完する手段」

2007年04月21日 19:30

ファーザー(ズ)イメージ先に【上場廃止銘柄の市場創設に日証協が作業部会を設置・9月末までに具体案構築へ】で報じた、【日本証券業協会】が上場廃止株式を売買する市場を創設する方向で動いているとする報道について、4月17日に行われた記者会見の中で日証会の安東会長は「既存ルールで呼応できなかった投資家に対する補完的な役割を果たす」と構想中の市場について言及した。

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議事録にいわく「呼応できない投資家を救う」

これは4月18日に公開された議事録(PDF)内で明らかにされたもの。具体的な言及部分は次の通り。

(記者)
上場廃止銘柄の流通を円滑にするという新たな受け皿についての議論は今後本格化すると思うが、イメージとして、グリーンシート制度の「フェニックス」とは別に作るのか、あるいは「フェニックス」を改良してバージョンアップするのかお聞かせ願いたい。
(安東会長)
そうしたことを含めて検討することになる。上場廃止によって投資家が換金する機会が大幅に失われることを防ぐための措置を検討することを主目的としており、「フェニックス」をそのまま活用していくのか、あるいは全く別に作っていくのか、あるいはグリーンシート制度の中で考えるのか、そうしないのかを含めて検討を進めていくということである。
(記者)
今の上場廃止に伴う救済ということについて。換金の機会が失われるということは分かるのだが、上場廃止に至る前に簡単に言えば監理ポストがあり、それから整理ポストで1か月あるわけで、資本市場で取引する者はそのルールに従って換金すればいいのであって、そうしたルールがあるのに換金できなかった者を救う必要性があるのか。
(安東会長)
それも考え方の一つだと思う。周知徹底する期間が充分にあるのではないか、換金したい者は監理ポストや整理ポストでやればいいではないか、ということも言える。ただ、全ての投資家がそれに呼応できないということが残念ながら日本の現実だろうと思っているので、これを補完するための手段を持っていた方がいいのではという意味で、この議論を進めていくと理解していただきたい。


ちなみに「フェニックス」とは、非上場企業の株式などを売買できるよう、日証会が1997年から行っている制度「グリーンシート」のうちの区分のひとつであり、時価総額や株主数不足で上場廃止となったものの、売買の場が必要と認められたものを指す。当然ながら粉飾などの問題が発覚して上場廃止となった銘柄は指定されない。

真の意味で救済されるべき投資家は少ない。新たな「箱」を作って資金を投資する必要は!?

記者も指摘しているが、わざわざ周知期間のための「監理ポスト」「整理ポスト」が用意されているにも関わらず、そこからさらに「費用をかけて」廃止銘柄の市場を作ること自体がナンセンスではないだろうか。

これが仮に「整理ポスト発表から毎日成行き売り注文を出したけど売り切れなかった」「整理ポスト期間が短く、売りが間に合わなかった」というのなら、救済措置的市場の創造も理解はできる(しかしそれでも「フェニックス」で十分のはずだ)。しかしむしろ安東会長が述べている「救済すべき対象であり市場創設の存在理由」となる「既存のシステムに呼応できない投資家」とは、整理ポストに移行してからマネーゲームに興じて逃げ損ねたり、「もしかしたらリバウンドするかも」と欲をかいて売り損ねたという、いわば「自業自得な投資家」がほぼすべてだろう。

ライブドアの時のように、信ずべき財務諸表が粉飾されていたのならともかく、通常のシステムの流れの中で「呼応できない」投資家がいても、それは自業自得・自己責任の結果によるもの。さらにこれらを救済したのでは、モラルハザードが起きても仕方が無い。

また注意すべきこととして検討しなければならないのは、例え「救済措置的新市場」を作ったとしても、「上場廃止となった流動性が極めて低い株式」を購入する物好きがどれだけいるかということ。いくら市場を作って売り手の場所を用意しても、買い手がいなければ売買は成立しない。例えば西武鉄道のように「また再上場するかも」「地元だし」という、買われうる銘柄はごくわずかだろう。

むしろ日証会はこのような、意味が無いどころかムダ使いに終わりそうな「ファーザーズ」的な市場について云々するよりも、会長自らが指摘している「全ての投資家がそれに呼応できない」現行のシステムを改善する仕組みを考えるべきではないだろうか。


■関連記事:
【「ファーザーズ」市場新設!? 日証協が上場廃止株の市場創設へ・毎日新聞報じる】

(最終更新:2013/08/21)

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