上場廃止銘柄の市場創設に日証協が作業部会を設置・9月末までに具体案構築へ

2007年04月18日 06:30

ファーザー(ズ)イメージ先に【「ファーザーズ」市場新設!? 日証協が上場廃止株の市場創設へ・毎日新聞報じる】で報じた「上場廃止になった株式を売買する市場を【日本証券業協会】が創設する方向で動いている」件について、ブルームバーグなどは4月17日、同協会が13日に作業部会を設置し、9月末をめどに報告書をまとめるべく具体的内容について検討に入ると報じた(【関連記事】)。日本証券業協会公式サイトでは今件に関する具体的発表リリースは見当たらない。ただ13日には各種パブリックコメントの募集が開始されており、この中に盛り込まれているものと思われる。

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元記事によると概要としては前回報じたものとほぼ同じだが、基本的な考え方としては「上場廃止となった銘柄の流通」の場を設けて自由売買の機会を失った(相対取引は可能だが個人ベースでは事実上不可能)個人投資家を救済するのが主目的。

日証協の安東俊夫会長は17日の記者会見の中で、「廃止銘柄を持つ投資家の換金するための機会喪失を防ぐための措置」「上場廃止銘柄の換金する機会が少なくなることを防ぐことを、制度整備の基本と考えている」「具体的なものとして、従来あるグリーンシート制度のフェニックス区分を活用するか、別の制度を作るのか検討している最中」などと語り、具体的な形式の考察段階に入っていることを明らかにしている。

先の記事でも指摘したが、現行の上場ルールでは上場廃止になる前に「監理ポスト」「整理ポスト」という猶予期間が設けられていて、その間に売りたい人は売ればよい、というシステムが整備されている。そしてよほどのことがない限り、この両ポストの期間はそれなりの時間があり、その間じゅうずっとストップ安で比例配分・売り切ることができない、という状態はない。

つまり、上場廃止の時点でその銘柄の株式を保有していた人は「原則として」自己責任によるもので、「株価が暴落したので売ると損をするから売れない」というのは言い訳にしかならない。そのような立場の株主を「救済」する市場をわざわざ作るのは、労力のムダとなるばかりでなく、上場廃止そのものの意味が形骸化し、モラルハザードを引き起こしかねない。

また、上場廃止となる会社自身や廃止後の買収を模索する第三者法人が買い取る以外(ライブドアでは実際に外資ファンドが買いあさっていたのが記録されている)、基本的に株の取引は「買い手と売り手」それぞれが存在して実現するもの。今回の報道を読み解く限りでは「上場廃止の企業の株式を持つ投資家を救済するため」という大義名分はあるものの、「ではその株式を売買する場を設けたとして、誰が買うのか。買った投資家は救済対象とならないのか。買っても自己責任というのなら、そもそもそのような株式を持っている売り手側自身に最初に自己責任を求めるべきでは」という疑念が沸いてくる。

今回開設を検討している「ファーザーズ市場」こと「上場廃止銘柄の取引場」では「個人投資家が売り買いを行える取引の場」ではなく、売り手は個人投資家、買い手は投資ファンド、証券会社や法人などの機関投資家に限定するといった案も検討すべきだろう。

もっとも西武鉄道の株式のように「上場が廃止されても(個人でも)株主の立場を維持したい、株主になりたい」という人もいるだろうから、そのような規制も一概に良いとは言い切れないのだが。

今「ファーザーズ市場」の開設については、十分以上の論議と世間一般からの意見を求め、検討すべきだろう。


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(最終更新:2013/08/21)

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