株主優待の継続保有の「優待」措置、増加中

2007年02月18日 12:00

【株主優待・単元変更速報】の項目で、逐次上場企業の株主優待に関する新設や変更、廃止の情報をお伝えしているが、最近そのそれらの記事編集で気になることがある。ここ半年の間、株主優待を実施している企業に「長期保有株主へさらに優遇をする株主優待」が増えていることだ。株主優待をさらに優待する制度、ちょっとマヌケな表現だが、考察してみることにした。

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最近の掲載情報で、「長期保有株主へさらに優遇をする株主優待」をピックアップしてみると次のようになる。

【ビジネスブレイン太田昭和(9658)】
100株以上でオリジナルクオカード。1年未満継続保有で1000円、1年以上2年未満で2000円、2年以上で3000円相当を年1回(会社側では優待金額の1割をユニセフに寄付)。
【NECリース(8793)】
100株以上を1年以上保有した場合にはフリーチョイスギフトの額を3000円に(それ未満の期間は2000円相当)
【船井財産コンサルタンツ(8929)】
(1)(略)
(2)2006年12月時点で2004年12月末から継続株主にうかい(7621)の食事券20000円相当分、または特選うかい牛肉引換券20000円相当分
【リコーリース(8566)】
100株以上で「保有継続期間1年未満」で3000円相当、「1年以上」で4000円相当、「3年以上」で5000円相当の図書カードからクオカードを年一回。


他にも、例えば【日本システムディベロップメント(9759)】のように、継続期間が長ければ長いほど、商品を購入できるポイントの付与が増えていくという仕組みもある。

このような流れの背景には大きく分けて二つ考えられる。一つは「企業買収対策」。最近は【米投資ファンドスティールパートナーズ、日本企業の株式続々買い増し】などで報じているスティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック(Steel Partners)の動きに代表されるように、特に外資による企業買収の動きが活性化していることに由来する。上場している以上不特定多数の「株主」の総意で企業は経営されるのだが、「株主価値の向上」などという名目で会社事業を切り売りされたり経営計画を振り回されるのは勘弁こうむりたいと考える経営陣も少なくない。

そこで「株主優待」というカードを切ってロイヤリティ(忠誠心)の高い株主を多くキープし、そのような流れに対抗しうる勢力を形成し、プロキシーファイト(議決権上の闘争)に勝利しようと考えるわけだ。ところが最近ではテレビなどで報じられるように、「権利確定直前に株式を購入し確定直後に売り抜け、優待ゲットだぜ」というにわか株主が増加し、いざという時には(企業にとって)頼りにならない株主が増えているのも事実。

そこで「短期売買の株主でも仕方ないけど、できれば継続して保有して欲しいな」とする企業の意志を示すため、長期保有者にはさらに「優待」する株主優待制度を設けることになったわけだ。

もう一つは一つ目の要素とも関係するのだが、「上場企業の株券の電子化」が大きな要因。これは【上場企業の株券の全面電子化、2009年1月からに決定】でも報じたように、証券実務のスリム化を目指し、2009年1月から上場企業の株券はすべて電子化され、紙の株券は無効(有価証券としての価値がなくなる)というもの。この仕組みが導入されることによって、企業では「本当の長期保有株主」と「権利確定時のみのにわか株主」とを明確に区別することができるようになる。企業としては後者よりも前者に優遇したいのは当然といえよう。

「本当の長期保有株主」を容易に調べることができるようになる「上場企業の株券の電子化」導入に先駆けて、あらかじめ優遇措置を制度化しておこう、というのが各企業の動きなのだろう。

このような動きをする企業は今後ますます増加するに違いない。それと共に株主優待への注目度がさらに高まるのと共に、株式売却益による利益を得る「中短期売買型投資」と、長期保有でじっくりと利益(配当や株主優待による)を堪能する「長期型投資」の二極化も促進されるに違いない。外資の攻勢による「企業買収の活発化」と「株券の電子化」が、投資スタンス・戦略にも大きな変換点をもたらすことになるかもしれないといえよう。

同時に「長期型投資」を望む個人投資家には、これまで以上に「長期保有をしても安心な銘柄」を選択するための選択眼が求められるに違いない。

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