ネットワークゲームの課金、これまでとこれから(下)

2006年09月23日 20:00

ゲームイメージ【ネットワークゲームの課金、これまでとこれから(上)】に続く、ネットワークゲームの課金についてのあれこれとしたまとめ的コラム。ネットワークゲームを解析するに当たってはこの課金システム・ビジネスモデルの他に、「注力時間とプレイヤーの拘束」も重要なポイントになる。課金体系とも関連が深いのだが、これについてはリクエストがあればまた日を改めて、ということで。

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『真・三國無双 BB』イメージさて、ゲームショー内のパネルディスカッションでは、【コーエー(9654)】による新作【『真・三國無双 BB』】の課金方法も説明されていた。これは先の2スタイルの中間にあたるモデルで、クライアントソフトが無料ではあるが特定プロバイダとの契約が必要、アイテム課金ではなく月額基本料金に、戦闘参加の時に限り追加課金が必要となる(※月額基本料金には数回分の戦闘参加の権利も付随している)。

『真・三國無双 BB』の課金スタイル
『真・三國無双 BB』の課金スタイル

これらの動向を見るに、ゲームそのもののスタイルによって特徴付けや違いはあるものの、

ユーザーに出来るだけ強制的な金銭負担をかけず、ユーザー側から「お金を出してもイイ!」と思わせるサービスを提供し、喜んで料金を払ってもらうというスタイル


に移行しつつあるようすがうかがえる。たとえるのなら、「お盆のお祭りで広場にて開かれている縁日の屋台に顔を出すのは誰でも無料だが、水風船で遊んでいたり金魚すくいに興じている様子をながめていたり、綿菓子やイカ焼きの香りが鼻の臭覚細胞を刺激すると、自然にふところの財布から小銭を出してしまう」というところだろうか。

先に【職業・デザイナー、供給先・世界中、お店・ゲーム内……仮想世界のビジネスチャンス】でも紹介したが、ある意味究極のネットワークゲームとして知られている【セカンドライフ(Second Life)】では、さらに一歩先行くシステムを導入し、成功している。

『セカンドライフ』の課金スタイル
『セカンドライフ』の課金スタイル

『セカンドライフ』イメージ図解からも分かるように、『セカンドライフ』ではゲーム内世界をまったくの「独立した別世界」として位置づけ、ゲーム運営会社はそこと現実世界との行き来を一手に引き受ける管理会社としての役割を果たしている。ゲーム内に登場する仮想貨幣「LINDEN DOLLARS」と現実世界での現金のやり取りはすべて運営会社のコントロール下にある。運営会社にしてみれば、(もちろん経済的なコントロールは必要だが)ゲームの運用だけでユーザーの求めに応じていくらでも新たな仮想貨幣を産み出せるのだから、これはもう「ネット内の独立国家」が成立しているに等しい。

また、『セカンドライフ』では時として新しい土地の売却が行われることもある。これも世界を管理する管理会社側が自由に土地を生成してユーザーに提供するわけで、最小限の費用(サーバの拡張や管理費・人件費の追加、プログラムの変更)で販売できるのだから、美味しくないわけがない。

もちろんこれらの「仕組み」が成立するためには、多くの会員を獲得しゲーム内経済を活性化させる必要がある。多くのユーザーを集めるために魅力的で安定し快適で理不尽さの無いコンテンツの提供を続けねばならないし、ゲーム内の国民、いや住民に飽きを感じさせない演出をしなければならない。また、経済バランスの監視と調整も必要だ。

住民には「パンとサーカス」を与え、さらに「神の見えざる手」に気を使う必要があり、さらにプログラムのバグやハッキングとの戦いを続ける作業。果たして現在主流の課金スタイル、さらには本物の国家運営とどちらが簡単なのか、考察するのも一興だろう。

今後、オンラインゲームがますます多様化し、さらに家庭用ゲーム機や携帯ゲーム機でもオンラインが常識化するのは間違いない。それに伴いネットワークゲームとその課金周り(収益構造)も、これまでのスタイルを踏襲、あるいはまったく新しい発想のスタイルが登場することだろう。

当方としては、海外での新ビジネスモデルの提案はもちろんだが、約10年のネットワークゲームに向けたエネルギーチャージをした上で大攻勢を行っている最中の[任天堂(7974)]が、じっくり、慎重にではあるが、新たな「ネットワークゲームの課金スタイル」を提案してくれるのではないかとひそかに期待している。その一端があるいは新世代機「Wii」で垣間見れるかもしれない。

(了)

■一連の記事:
【ネットワークゲームの課金、これまでとこれから(上)】
【ネットワークゲームの課金、これまでとこれから(下)】

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