人件費2割削減、スポーツ活動休止、生産量2割減……赤字転落の日産でゴーン氏が断行する「コストカット」

2009年02月10日 08:00

カルロス・ゴーン氏イメージ【日産自動車(7201)】は2009年2月9日、2009年3月期連結決算の業績見通しの下方修正を発表した。営業損益(本業の損益)が2008年10月の予想2700億円の黒字から1800億円の赤字に転落し、純利益(最終的な利益)は1600億円の黒字から2650億円の赤字に下落するというもので、これに伴い未定とされてきた期末配当は無配に転落することも確定した。営業利益が赤字に転落するのは14年ぶりで、かのカルロス・ゴーン氏がCOO(最高執行責任者)に就任してからははじめてのことになる。また、これを受けて日産では大規模な構造改革を実施すると発表した(【業績予想リリース、PDF】【グローバル危機に対応する新たな改善策】)。

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決算予想は次の通り。

・売上高……+8兆3000億円(+9兆6000億円)
・営業利益……-1800億円(+2700億円)
・当期純利益……-2650億円(+1600億円)

※()内は前回予想


【不況が変えるアメリカのカーリース市場】でも触れたように、景気全体と、とりわけ自動車市場の急速な冷え込みは、ゴーン氏にとっても大きな驚きを隠せない規模とスピードで迫り来るものであり、日産にもその影響が大きく出てしまったことになる。

また、14年ぶりの営業赤字・期末配当無配転落は大きなショックであることに違いは無く、行動計画の提示とそれに向けた「馬車馬的な」まい進で知られているゴーン氏率いる日産は同日「グローバル危機に対応する新たな改善策を発表-環境悪化に耐え抜く組織に変更-」を発表。この事態への対策を明示している。簡単にまとめると、

【日産自動車、「電気自動車」の開発促進などで「環境にやさしい車」のリーダーを目指す】で触れた新五か年経営計画「日産GT2012」は中断。ただし品質、セロ・エミッション車への注力は継続。
・経営体制の変更。
・人件費削減。高コスト国合計で8750億円を2割減の7000億円に。
・2008年度の役員賞与はナシ。2009年3月以降は状況改善があるまで「取締役及び執行役員の報酬を10%、日産と国内関係会社の全管理職の基本年俸を5%」引き下げる。
・ワークシェアリング導入の検討。
・人員を世界規模で2万人削減し21万5000人とする。
・企業スポーツ活動(硬式野球部、卓球部、陸上部)の休部。
・在庫管理を強化し在庫を2割圧縮。
・勤務シフトの調整、休業日の設定、稼働時間の短縮等で、生産調整を行う。世界規模の生産台数を当初計画から20%減。
・2008年度の設備投資を前年度から21%節減する。2009年度には更に14%圧縮。
・モロッコとインドで予定していたルノーとの共同生産プロジェクトを見直す。
・インドのチェンナイでは工場立ち上げスケジュールを調整する。
・モロッコ タンジール近郊の工業プロジェクトへの参画は一時中断する。
・一部の新車プロジェクトの中止を含め、商品投入計画を見直す。2009年から2012年の間には、新規のAプラットフォームを採用したエントリー・カーのラインアップと電気自動車を含め、平均で毎年10車種の新型車を発売する。
・買掛金と売掛金を中心に運転資本の改善を図る。2009年度には1300億円のキャッシュフローを生み出す。
・ルノー・日産アライアンスの更なるシナジー効果創出を目指す。商品・技術への投資、サポート機能、購買コスト削減を中心に詳細を検討。


など、「とにかく手がつけられるところは片っ端から手をつける」「本業で儲けを出すためには何でも切り捨て圧縮する」感がある(かつて「コストカッター」と呼ばれていた氏だけのことはある)。まるでゴーン氏が日産のトップとして就任した直後のような状況が見受けられる。

前回はゴーン氏の手腕が(氏自身の過去の経歴同様に)発揮され、また景気の好転も手助けする形となり、日産は業績を回復。株価も急騰する結果となった。今回の「世界的な景気後退に伴う日産の斜陽化」に対し、ゴーン氏のらつ腕が再び日産をよみがえらせることができるのか。その動向から目が離せそうにない。


(最終更新:2013/09/04)

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