アメリカ自動車産業の実情の片りん……フリート販売実績をグラフ化してみる

2009年01月13日 06:30

レンタカーイメージ直前の記事「ビッグ3に忍び寄るもう一つの「販売不振」・レンタカー業者の憂鬱」の元記事【(レンタル車の業者は2008年において所有台数を減少、2009年はさらに減らす予定)Rental fleet sales down last year, 2009 will be worse】をチェックしていた際に、気になる表記が目に留まった。レンタカー業者の専用サイトfleetcentral.com(業者・会員向けのため一般利用者は内部データ取得不可能)からのデータということで、「アメリカ国内における自動車の販売スタイルの一形態『フリート販売』における最新データ」などが掲載されていた。2008年6月時点のものとのことで、少々古いものではあるが、アメリカの自動車産業の実情を推し量れる一つのデータでもあり、ここにグラフ化・図式化して紹介することにしよう。

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「フリート販売」とは

まずは「フリート販売」について。これはレンタカー業者への販売方法の一つとして、アメリカの自動車業界では当たり前の方法となっているとのことだが、要は「何年後にいくらで買い戻しをします」という条件がついた販売のこと。もちろん買い戻しをする時の価格は売り渡し価格より下なので利益は出るか、非常に薄い利益しか得られない。買戻しの期間は半年~9か月、あるいは数年とのこと。もちろん返却された自動車は中古車市場にまわされる(が、利用者が不特定多数のため、一般の中古車よりは相場が下がるのが常となる)。

一般販売とフリート販売の違い
一般販売とフリート販売の違い

フリート販売は主にレンタカー業者、そして政府や企業向けに行われる。いずれにしても一次レンタルのような販売スタイルと考えればよい。そのメリット・デメリットは次の通り。

●メリット
・販売台数が稼げる。
・工場の稼働率を上げることができる。

●デメリット
・利幅が少ない。
・買戻し価格は大抵において市場中古車価格より高いので、経営を圧迫する。


元々フリート販売経由にそれなりの需要があること。そして一般販売でディーラー経由で売れれば問題はないのだが、それがかなわない場合にフリート販売に「廻して」一時的にでも売上・販売台数を計上しようという意図が「一部の」メーカー側に多分にあること。この2点がフリート販売の存在理由といえる。逆にいえば、一般販売において「この自動車を保有したい(レンタカー、リースの使用では無く)」という需要が高ければ、各メーカーはそれほどフリート販売に頼らなくても済む計算になる。

フリート販売市場の実情をグラフ化してみる

さてそれでは本題の、フリート販売市場の市場データをグラフ化してみよう。今から半年ほど前の2008年6月のものだが、現況を知るには十分に鮮度の良いデータといえる(本来なら昨年末のものの方がよいのだが、自前でデータを取得できない以上ぜいたくは言うまい)。

各社それぞれの全車両販売に対する「フリート販売」の割合(売上高比)
各社それぞれの全車両販売に対する「フリート販売」の割合(売上高比)
「フリート販売」における各社シェア(売上高比)
「フリート販売」における各社シェア(売上高比)

長年フリート販売に傾注していたビッグ3が大きなシェアを持っていること、起亜自動車の自社販売売上に占めるフリート販売の割合が非常に大きいこと、そしてホンダがきわめて低い値を示していることが把握できる。

フリート販売の売上比・シェア比が高い原因が「レンタカー業者からの需要増加」「経営戦略」「直接の販売で売れない」「車種の特性による」いずれか、あるいはどの比率が高いのかはこのデータからだけでは分からない。しかしいずれにせよ、フリート販売が一般販売と比べて利益が薄いことを考えれば、いずれの値でも高い企業の方が「苦戦しているのでは」という推測をせざるを得ない。

特にビッグ3が大きなシェアを占めているのが見て取れる。これはフリート販売の相手がレンタカー業者だけでなく、企業や政府も含まれること、そしてそれらの相手では「国産車」を選ぶ傾向が強いことも一因なのだろう。

ホンダの強さは……?!

データから、一つ気になることを見つけた人もいるはずだ。両方のグラフともホンダの値が異常に低いのだ。これはホンダの戦略として、原則的にフリート販売を抑えている(しない、ではない。レンタカー業者にフリート販売はしなくとも、企業からのニーズはあるからだ)のが大きな要因と思われる。

ホンダ・フィットイメージフリート販売を実質的にストップすることで何が起きるのか。レンタカー業者に使われた中古自動車が無くなるため、ごく少数の企業などによるフリート販売経由の中古車以外は、一般の利用者が乗り潰した中古車のみ市場に出回ることになる。当然、フリート販売経由の中古車がひしめく他メーカーの車両と比べて、その数は少なくなる。ホンダは元々人気がある車種からなのか、ブランドイメージを確保するための戦略としてフリート販売をしていないのかは不明だが、ホンダの車両が中古車市場では高い値で取引される(=人気がある)のは事実である。

実際、【米 商品魅力度、ホンダが3車種でトップ…JDパワー調査】【米国、新車の魅力度調査でホンダが1位を取得】などの調査結果を見ても、ホンダのブランドイメージは高い。アメリカ国内における日本からの進出企業中では、販売実績でははるかにトヨタに及ばないホンダではあるが、フリート販売絡みの戦略もあわせ、面白い状況にあるのかもしれない。


■関連記事:
【アメリカ自動車メーカー「ビッグ3」の最新販売実績などをグラフ化してみる(上)】
【アメリカの「全時代を通じてもっとも価値ある自動車」たち】

(最終更新:2013/07/31)

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