「派遣社員」「非正規社員」などは消費者金融での新規借り入れが困難に

2009年01月12日 12:00

借りるイメージNTTデータ経営研究所は2008年12月25日、改正貸金業法の影響に関する実態調査の結果を発表した。それによると改正貸金業法の完全施行により、とりわけ「派遣社員」「非正規社員」などは新たな借入が困難になる状況に追いやられることが明らかになった。法令の厳格化や利息返還請求の増加が、貸金業者側の態度を硬化させる大きな要因となっている(【発表リリース】)。

スポンサードリンク

今調査は2008年7月4日から8月18日までの間、日本貸金業協会会員に対して行われたもので、調査方法は郵送調査法、有効回答数は1419社。消費者金融業751社、事業者金融業435社、クレジット・信販その他が233社。

改正貸金業法は2007年12月19日から一部が施行され、2010年6月19日までに完全施行が予定されている。しかし各業者においては前倒しで事実上の施行が求められ、それに従う業者も多いのが実情。この法令の施行や利息返還請求の増加、利用者の借入意識の変化などにより、業者のほとんどが今後貸付が減ると予想しており、特にその傾向は大手ほど大きいものがある。

それに伴い業者側も貸付の際の初期審査を厳しくする姿勢を見せており、特にその傾向は大手ほど強い。

初期審査(新規借入申込者に対する審査)の状況・直近一年間と今後の見通し
初期審査(新規借入申込者に対する審査)の状況・直近一年間と今後の見通し

さらにこの「審査を厳しくする」と回答した業者に対し、具体的にどのような属性に対する審査基準変更の影響があるのかを尋ねたところ、「自営業」「パート・アルバイト・派遣」「年収400万円未満」「他社借入件数3件以上」などが影響を受ける、つまり新規借入を難しくせざるを得ないと判断している業者が多数を占めている(7割以上の回答)ことが分かった。

初期審査厳格化事業者による、完全施行に伴う与信姿勢の変化
初期審査厳格化事業者による、完全施行に伴う与信姿勢の変化

リリースではこのような回答結果を受け、「『定職がなく所得も低く、他社借入件数の多い』資金需要者は、貸金業法改正によって資金調達が困難となる度合いを増す可能性が高い」と説明している。

NTTデータ経営研究所では2007年11月に、利用者の立場から同様の調査を実施しているが(【融資の総量規制で60万人が自己破産の可能性も】)、そちらでも「法令の改正で60万人が借入できずに自己破産におちいる可能性がある」と指摘している。1年強経過した現在においては、法令施行に加えて「利息返還請求の増加」という新たなマイナス要因が加わったため、この総定数はさらに増加することが容易に想像される。

借入を必要とする人が
大勢いる層において、
消費者全体の「声」で
作られた法令や
利息返還請求で、
借入が出来ない
可能性が高くなる

さらに今回「貸し出し側」からの調査結果ということもあり、実質的に「借入できるか否か」を判断する側の基準において「自営業」「パート・アルバイト・派遣」「年収400万円未満」「他社借入件数3件以上」の貸し出しのハードルを高くするという意向が強く現れていることが明らかにされた。貸し倒れリスクの増加や法令順守を考えれば仕方の無いところではあるが、個々の事情はさておくにしても、これらは同時に「借入を求める場面が多い」人たちでもある。

いわば(貸し倒れの)リスクと(借入をしたい)ニーズの高さのバランスが、今回利用者側の声高な要求で成立した改正貸金業法や利息返還請求の増加で崩れつつある状況が見て取れる。具体的な影響が出てくるのはこれからになると思われるが、今後の動向が気になるところだ。


(最終更新:2013/07/31)

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ