【更新】融資の総量規制で60万人が自己破産の可能性も

2007年11月07日 08:00

【NTTデータ経営研究所】は11月6日、正式には2009年末ごろから施行導入される改正貸金業法(「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」)による総量規制によって、新たに60万人の自己破産者が発生する可能性があることを明らかにした。リリースでは「セーフティネット整備に向けた取り組みが急務」としている(【発表リリース】)。

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今調査はインターネット経由で10月10日から12日、金融機関・クレジットや信販・消費者金融のいずれかから借り入れ経験のある人を対象に行なわれた。有効回答数は1100人。男女比は72対28。年齢構成比は30代が36%、40代が35%など。借り入れパターンは3業態すべてからが46%、消費者金融とクレジットや信販の組み合わせが21%など。

改正貸金業法(「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」)は2006年12月に交付され2009年末までに施行される予定だが、[改正貸金業規制法:「総量規制」前倒し実施 金融庁が方針(毎日新聞)]にもあるように、事実上今年末から「施行」(施行と同基準での「監督」実施)ことになる。

いわゆるグレーゾーン金利と共に改正貸金業規制法の中でも問題視されているのが、「総量規制」の問題。これは「総借入残高が100万円超の場合、年収の3分の1を超える貸付けの原則禁止」というもの。しかし現在借り入れのある人に対し、この規制に抵触する「3分の1」以上を借り入れている人は全体の41%に登ることが明らかになった。

世帯年収に対する借入比率
世帯年収に対する借入比率

超えている人が41%に加え「可能性がある人」も24%おり、年収の「3分の1未満」という人はわずかに31%しかいなかった。

属性別で見ると、「借り入れ総額が高い人、あるいは300~500万円の人」「主婦(主夫)」「男性より女性」「30代以降」に「3分の1以上を借り入れている」割合が多いことが分かる。

属性別借入比率
属性別借入比率

とりわけ「1000万円借り入れている人」の94%、「300~500万円借り入れている人」の90%、「自営業・農林漁業」の45%が「3分の1以上」というところが気になる。また、自分の収入があまりない「主婦(主夫)」の78%が「3分の1以上」であるのも見逃せない値だ。

「収入の3分の1以上借り入れている人」は総量規制が発動すると借り入れ枠に制限がかかり、追加で借り入れができなくなるだけでなく、新しい借入先も見つからなくなる。このような状況になった場合、どうやって返済を進めるかについてたずねたところ、73%の人が「節約して返済を進める」と答えた。

総量規制で新しく借り入れができなくなったらどうするか。
総量規制で新しく借り入れができなくなったらどうするか。

その一方、「自己破産などの法的な債務整理の手続きをとる」と答えた人が21%(全体では17%)にも及んでいる。

NTTデータ経営研究所ではこの調査結果と「現在において総量規制を受ける可能性がある人は消費者ローン利用者のうち41%、360万人」とを掛け合わせて概算すると、60万人強が法的債務整理による自己破産の道を歩むことになる。

「返せない額のお金を貸し出す方が問題だ」という観点から始まった一連の貸金業者への規制強化とそれに連なる改正貸金業法、そしてその中の総量規制。リリースで研究所が提言している「セーフティネット整備に向けた取り組みが急務」であるのと共に、「返せない額を借りねばならない人たち」の「借りねばならない理由」についても、再考する必要があるのかもしれない。

少なくとも数十万人の単位で新たな自己破産者が登場する前に。

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