川崎重工業、稲わらなどを使ったバイオエタノール製造の実証実験を農水省から受託

2008年11月20日 08:00

稲わらイメージ【川崎重工業(7012)】は11月19日、農林水産省が公募を行った「ソフトセルロース利活用技術確立事業(第2回ソフトセルロース利活用モデル)」において、秋田県農業公社と共に同社のグループ会社であるカワサキプラントシステムズが、「稲わら等を原料とするバイオエタノール製造実証事業」の実施主体に採択されたと発表した。食料自身と競合しない、しかも廃棄されている稲わらなどからバイオエタノール製造を行う技術の確立を目指していく(発表リリース)。

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現在バイオエタノールの原材料としてはとうもろこしが主流だが、元々とうもろこしは食料であるため、「食料生産を削って燃料にまわす」という事態が多発し、アメリカなどで食品向けのとうもろこし生産量が減少。食品価格の高騰を招く大きな要因となっている。そこで各方面で「食料供給とは競合しない資源」を用いたバイオエタノールの精製に力が注がれている。例えばアメリカでは【「安くても実はコスト高!?」 アメリカのバイオガソリン事情】で紹介したように、「スイッチグラス」という雑草を大量に繁殖させてバイオエタノールに精製してしまおうという計画が大々的に進められている。

今回カワサキプラントシステムズが採択された事業は、スイッチグラス同様に「食料供給と競合しない」未利用資源である稲わらや籾殻(もみがら)などのソフトセルロースからバイオエタノールを製造する技術の確立を目指すもの。稲わらなどの収集運搬実証や、稲わらなどを原料とするバイオエタノールの製造実証および走行実証の一体的取り組みを、農林水産省が支援することになる。

稲わらイメージさらに今回の事業では、秋田県の全面的な支援のもと、日本有数の稲作地帯である秋田県大潟村(八郎潟干拓地)で採れた稲わらを使用。収集運搬実証については秋田県農業公社が、そしてバイオ燃料製造実証および走行実証においてはカワサキプラントシステムズが事業主体となり、今年度から2012年度まで実験が行われる。

なお今回実験が行われるバイオ燃料製造システムにおいては、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)と共同開発中である新技術「熱水式バイオエタノール製造技術」が採用される予定。これは従来バイオエタノールを精製するさいに使われていた硫酸を用いず、熱水を使ってセルロースの糖化処理を行うもので、硫酸を使用する従来の方法に比べて、その分離・回収・固定のための設備を必要としないため、反応容器の腐食対策の低減や硫酸回収設備の削減などによってコストを抑えることができる。

この「熱水利用のバイオエタノール精製技術」は先の【2025年には日本が資源大国に!? 三菱総研「アポロ&ポセイドン構想2025」提示】でも概要の中に「従来硫酸などを用いていたエタノール抽出法には問題が多いため、電磁誘導で約170度に加熱した水蒸気を浴びせて一気に分解し、細胞壁を構成するセルロースをグルコースへと低分子化する手法を用いる」とあり(これが川崎重工業の技術であるかどうかは不明だが)、有効な精製方法の一つとして期待されている技術であることがわかる。

なお今回の実験で精製されるバイオエタノールの量は、1日あたり200リットル(年間112日稼動予定)を目標としている。

バイオエタノールの生産技術の確立には、製造が容易であることの他に、既存のとうもろこしのような「大きな弊害を生み出す」ものではないこと、そして何より「容易に原材料を入手でき、コストが安いこと」が求められる。稲わらなどの雑草が有効的に、コスト割れしないレベルでバイオエタノール精製の原料として使える技術が確立できれば、エネルギー供給にとって大いにプラスとなることだろう。特に「熱水式バイオエタノール製造技術」は雑草だけでなく上記の「アポロ&ポセイドン構想2025」にもある「海草・藻」にも応用ができるため、注目が集まるところだ。


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【お酒の発酵技術を応用した「スーパー酵母」でバイオエタノールを簡単に製造・月桂冠開発】

(最終更新:2013/08/01)

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