主要資源商品価格の下げ具合をグラフ化してみる

2008年11月14日 06:30

商品先物イメージ先に【4か月で20分の1に! スクラップ鉄の価格をグラフ化してみる】で鉄スクラップの下落振りをグラフ化し、それと共に去年夏以降の資源価格の高騰と、今年夏以降の急落の理由を簡単に説明した。鉄は生活には欠かせない資源には違いないが、他にも身近で価格が急騰し世間を騒がせた資源は多いはず。そこで商品先物のデータを抽出し、現状がどのような価格推移を経ているのかをざっと眺めるのと共に、今の価格が最高値からどれほどまでに下落しているのかを商品先物のデータを元に計算し、グラフ化することにした。厳密には各資源そのものと対応する商品先物の価格とは別物だが、価格動向についてはほぼ連動するため、流れをつかむことはできるはずだ。なおデータそのものは毎度お馴染みの【フジ・フューチャーズ】から無料公開されている部分を利用した。

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原油と小麦の動向をチャートで確認してみる

主要資源の商品先物の下落率の前に、もっとも気になるであろう「原油」と「小麦」の動向をチェックしてみることにする。原油は世界の原油市場に大きな影響を与えるWTIの値を見る。昨今の報道で(値上がりの時の数分の一の騒がしさだが)耳にするように、昨今の流れはずばり「急落」。直近データでは55.50ドル(1バレルあたり)をつけており、数年来の安値として2007年1月につけた49.90ドルに迫る勢いだ。

WIT原油価格推移(週足)
WIT原油価格推移(週足)

先の記事でも参考にした『週刊ダイヤモンド11/10号』によれば、需給状態を考えれば60ドルでもオーバーシュート(値上げの反動による下げすぎ)状態にあるということだが、現状価格ではその状態が継続・さらに進行する様相を見せていることになる。下げの原因となっているファンドの投売りがそろそろ終わり、反転するという話もあるが……。

続いてシカゴ小麦。【10月に再び30%値上げも!? 小麦売り渡し価格引き上げ示唆】でも説明しているように、日本では小麦は政府が商社経由で買い上げ、(国内の小麦農家への補助金にあてる費用を一定額上乗せしてから)それを企業に売り渡す方式を採用している。その価格は変更時の2か月前に行われ、決定においてはその時点の前月から直近8か月間の平均買い付け価格を元に売り渡し価格を試算する仕組み。海外の小麦価格の動向が、政府売り渡し価格、そして国内で流通する小麦価格に大きく影響を及ぼすことになる。シカゴ小麦の価格も、結局のところ日本の小麦価格と深い関係のあるものとなる。

シカゴ小麦価格推移(週足)
シカゴ小麦価格推移(週足)

こちらは案外早め、2008年2月に最高値1334.50ドルをつけたあと何度かリバウンドを経て下落を続けている。直近価格は533.00ドル。約2/5の値にまで落ちてる。この価格が継続し、政府の売り渡し価格に反映すれば、パンやめん類など小麦製品の大幅な値下げも期待できよう。

主要商品先物価格の最高値と直近値を確認し、下げ具合を計算する

さてそれでは本題の、最高値からの下落率。2006年7月末から表示できる週足でデータを確認し、その上で直近のデータと照らし合わせ、どれだけ価格が落ちているかを計算する。

抽出したデータ(価格単位は東京は円、それ以外はドル)
抽出したデータ(価格単位は東京は円、それ以外はドル)

種類によって最高値をつけた月、あるいは現在の価格の割合に違いはあれど、いずれも大きな値崩れを起こしているのが分かる。

これをグラフ化したのが次の図。

主要商品先物の2006年7月以降最高値と直近値の比率
主要商品先物の2006年7月以降最高値と直近値の比率

原油価格の38.1%が非常に大きなものとして目に留まる。また、金やコーヒーなどが意外に高値どまりしているのも分かる。しかし大体において、例の「半値八掛け二割引き」の話ではないが、その最初のプロセスにあたる「半値」に相当する50%前後の値引き状態にあることが分かる。むしろ現在値が「値引き価格」では無く需給にあった「正常値」で、直近(そしてほとんどの場合において史上)最高値の相場状況が異常だったのかもしれない。


ここまで急激に値がつりあがり、そして急速に値を落とし、現実経済を混乱に陥れている資源価格(今件は商品先物価格だが)の乱高下は、先の鉄スクラップ記事の後半で説明したように、「投資(投機)ファンドなどの投機マネーが狭い商品先物市場で暴れ、お尻に火がついたため潮が引くように去っていった」のが原因。彼らは大儲けできたかもしれないが、おかげで世界経済は大混乱におちいり、くだんの「金融工学」による金融商品と共に未曾有(みぞう)の大不況に突入する様相すら見せているのが現状。

せっかく資源価格が落ち着いても、それを使った商品を購入する消費者のふところが不況で寂しくなったのでは、高値で買い渋られた時と売れ行きはさほど変わらなくなってしまう。しかも通常の経済状態において需給のバランス調整を果たすはずの緩衝材の役割を果たす資金のかなりの部分が、投機マネーによって吸い取られ、場から奪われたままになっているため、状況が「自然治ゆ」するには相当の時間がかかるものと思われる。

ともあれしばらくは、資源・商品価格の動向に一喜一憂せざるを得ない状況が続くだろう。値が下げだした途端にニュースとしてほとんど取り上げなくなった世間一般の報道に惑わされることなく、自らの目と耳で現状を確かめ、事態をできるだけ正確に把握し、情報をそしゃくし、自分の頭で考え、知識として蓄積してほしいものである。


(最終更新:2013/09/05)

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