アメリカ自動車業界の「ビッグ3」の影響力をグラフ化してみる

2008年11月19日 12:00

廃車イメージかつてアメリカの国力の象徴だった自動車大手のGM(ジェネラル・モーターズ)が財政的な危機に直面していることは、すでに各種報道でご存知のはず。すでに自力再建は不可能に近く、公的資金の大規模な投入が無ければ来年1月にも破たんの可能性が高いというのが現状。そのGMも含めたビッグ3(GM、フォード、クライスラー)に関する記事が【USA TODAY】に掲載されていた。今回はその記事に添付されていたデータをグラフ化してみることにする。

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元記事の本文内容はといえばいつもの通り、「うちらに金をどんどん政府の資金を投入しやがれ、さもなくば数百万の失業者を撒き散らすぞ」というGMなどの恫喝に等しい主張と、それに対する救済案の検討、それらを是とするか否かに関するお話。どの選択肢を選ぶにしても「非常に難しい判断('Very difficult judgments')」が求められる状況に変わりは無い。

GMの現状をざっと箇条書きにすると

・小回りの利かない商品(自動車)の展開を続けていたため業績は不調。2007年末決算で3兆円の赤字。アメリカでは常識的な株主配当も停止。
・アメリカでは公的年金や(退職者)医療制度があまり整備されておらず、企業がまかなうのが普通。GMではこの負担が大きく、2008年9月末時点で6兆円以上の債務超過。
・2008年10月のGMの新車販売台数は前年同月比-45%。他社(例えばトヨタ23%、クライスラー35%)と比べても大きな減少率。
・2008年9月末期の売上高は前年同期比で-13%。債務超過額は6兆円以上。この額は6月末時点の5兆7000億円からさらに拡大。
・手元資金は6月末の2兆1000億円から、9月末には1兆6000億円に減少。
・9月末の時点で「このままでは来年頭には破たんする」宣言。


※レートは1ドル=100円で計算

ポイントは「経営陣も労働者側も現状の体質を変えようという積極的な意思が見られないこと」「業務自身の不振よりも、企業年金・企業医療保障による負担が大きい」。この2点で、財務的に身動きが取れない状態になっている。

USA TODAYでは記事の補足データとして、GMを含めたビッグ3が抱える雇用者数と、自動車販売のシェアを数字として提示していた。今回図にするのは、それらのデータ。図式化することで、状況が分かりやすくなるはずだ。

ビッグ3が抱える雇用者の変遷
ビッグ3が抱える雇用者の変遷

リストラや合理化を果たしたこともあるのだろうが、かつての人数と比べれば随分と減っていることが分かる。

この雇用者数をアメリカ全体の労働者数で割った、「ビッグ3が抱える労働者の全アメリカ国内労働者数に占める割合」を算出したのが次の図。

ビッグ3が抱える雇用者の変遷が、アメリカ全体の労働者に占める割合
ビッグ3が抱える雇用者の変遷が、アメリカ全体の労働者に占める割合

1998年においては雇用者数が増えているのに全体に占める割合が減っている。これはアメリカ全体の雇用者数が増えたからに他ならない。一方で2008年においては大きく割合を減じているが、これはビッグ3の雇用者数が減っているのが主要因(もちろん不景気でアメリカ全体の労働者数も減っている)。

元記事タイトルでは「うちらがとんだら数百万の職が失われるぞ」という言い回しが踊っている。数百万人であることには違いないようだ。ただし、失業率に直接与える影響は、かつての好調時期と比べると半分以下に減っているのもまた事実(二次・三次的影響を考えたら途方も無い状況に違いは無いが)。

一方で、ビッグ3の主要商品である自動車の販売実績シェアはどうだろう。アメリカ国内におけるシェアを過去三年にさかのぼって算出したのが次の図。

アメリカ国内におけるビッグ3のシェア変移
アメリカ国内におけるビッグ3のシェア変移

特にこの3年、とりわけ去年から今年にかけて、ビッグ3がシェアを落としている。理由はいくつも考えられるが、ガソリン高などで燃費の安い自動車のニーズが増えているにも関わらず、その対応が遅れていたことがもっとも大きな理由だろう(他にも自動車全体としての魅力が衰えているという話もある)。さらに直近データの10月時点ではビッグ3のシェア率低下は加速しているデータも出ているのが現状ではある。


元記事には実に2000近いコメントが寄せられ、熱い論議が交わされている。すべてを読み取るのは事実上困難だが、ざっと読んだ限りではビッグ3へ全面的な政府資金を投入・救済という意見に賛成する声は意外に少ないように見受けられる。感情的な意見もあるが、むしろ「日本をはじめとする他国が進出している工場の自動車でいいじゃないか」とし、20世紀終盤における「ジャパンバッシング」の時代からはとても想像できないような意見や、具体的な数字を挙げて「政府に金寄越せと言っているが、ビッグ3は従業員の給与はアメリカの労働者の平均所得の2倍以上で上層部も沢山の報償を得ている。まずはこの部分の見直しを推し進めてから、政府に援助を求めるべきでは」という話も目に留まる。

General Motorsイメージたとえシェアを回復するような商品を展開して営業利益がアップして業績が向上しても、ビッグ3が抱えるOBたちの年金や退職医療手当ての負担はそのまま残るため、財務面での先行きは真っ暗に近いものがある。根本的な事態の解決策がなければ、「砂漠にじょうろで水をまく」かのように政府の資金も吸い取られ、無駄に使われてしまうだろう。

どのような解決策が見出されるのか。【最新のロイター電】によれば、政府の手当てがなければあと2か月(そう、オバマ新大統領の就任時期だ)ですら乗り切れないとビッグ3は揃って主張している。どの選択肢を選ぶにしても、新大統領にとってビッグ3は大きな重石となることだけは間違いあるまい。


……きわめて余談。【「IMFへ1000億ドル」の意味と効力】で紹介した、世界最強の金貸しことIMF(国際通貨基金)に特例としてビッグ3を救済してもらうというのもアリかもしれない。さもなくば、早急に国有化して、もっとも大きな問題点である年金・退職医療手当ての部分を「どうにか」するしか手は残されていないようにみえるが、どうだろうか。

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