テレビ局からスポット広告を減らした業種を調べてみる(2009年3月期第2四半期編)

2008年11月17日 08:00

テレビ広告イメージ先に【主要テレビ局銘柄の第2四半期決算をグラフ化してみる……(1)スポット広告と下方修正】に始まる一連の記事で「主要テレビ局のスポット広告がますます激減している」ことに触れた。景気後退が現実のものとなる中、どの業態の広告主が広告を減らしていったのか。各社の第2四半期短信や関連資料の端々から表現をくみ取り、探ってみることにしよう。

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タイム広告とスポット広告
タイム広告とスポット広告(再録)
タイム広告……一極集中
スポット広告……ばらまき

まずは簡単におさらい。先日紹介したばかりだが、今記事は半独立しているということで改めて説明する。図と右のまとめ文でほぼ理解できるはずだが、「タイム広告」とは「番組提供広告」とも呼ばれ、放送される番組を「広告出稿(広告枠を購入すること)」によって「提供」するもの。広告費をテレビ局経由で番組に提供してその番組を後押しする代わりに、その番組内で自社の広告を出す、というもの。放送時間や視聴者性向を絞れるため、効果的な広告展開が期待できる。一方、人気のある・効果の高い番組の広告費は高い。

タイム広告とスポット広告イメージ対する「スポット広告」とは、番組と番組の間に存在する時間帯(ステーションブレークと呼ばれる)に放送されるもので、どこの番組にも属さない。「番組の色がほとんどつかない、ばらまき式広告」と考えれば良い。その性質上、短い時間に広域展開したい広告(新製品の発売間近な時、期間限定のキャンペーン)に使われる。

それでは早速、キー局5局の2009年3月期(2008年4月~2009年3月)・第2四半期決算短信から、スポット広告の動向(特に減らした方面)に関する言及をすくい上げてみる。

スポット広告はその性質上、一番最初に削れられる宣伝広告費でもある。ある業界からのスポット広告が減ったことは、その業界において「予算的な余裕が無くなった」か「もっと効果的な予算配分の方法が見つかった(例えばインターネット広告)」傾向があることを示唆する。またはそのテレビ局との相性が変化したのかもしれない。

なお各テレビ局ごとで、業界の区分に違いがある。これには注意が必要。また、別記ない限り数字は前年同期比。

【日本テレビ放送網(9404)】
・記事執筆時点で第2四半期関連資料の公開ナシ。短信では「スポットセールスは、テレビ広告市況の予想以上の冷え込みを反映し」との表記があり、想定外の広告減であったことがうかがえる。
・月次のIRレポートの最新版(【10月末発行分、PDF】)によると、9月は「電気機器」「食品」「映画」などが前年比プラス、「輸送機器」「金融・保険」「運輸・通信」「非アルコール飲料」などが前年マイナスとのこと。マイナス項目は第1四半期のマイナス項目とも一致しており、引き続き軟調さが継続していることが分かる。

【TBS(9401)】
・「業種別売上高では、「総合電気機器」「精密機器・事務機」等の業種が前年を上回ったものの、売上高の大きい「酒・飲料」「食品」「化粧品・トイレタリー」といった分野での落ち込みが目立っています」(四半期決算短信より)
・伸び率では「エンターテインメント・趣味」が11.1%と大幅に躍進したものの、「金融」が-27.6%を筆頭に「化粧品・トイレタリー」が-16.2%、「食品」が-12.5%など大幅に減少している項目が多い。

【フジ・メディアHD(4676)】
・「衣料・身回品・雑貨」+31.9%、「通信」+20.4%、「交通・レジャー・観光」が+10.6%などが大きく伸びる。特に「衣料・身回品・雑貨」ではアパレルの出稿が好調。一方で、「自動車・関連品」-28.8%、「流通・小売業」-26.5%、「化粧品・トイレタリー」が-20.7%などが大幅な減少。増加分も減少分も前年同期比で大きな変異が見られる。

【テレビ朝日(9409)】
・「一般産業機器」+58.3%、「精密・事務機器」+11.5%などが堅調。
・「基礎材」-59.7%を筆頭に「卸売」「出版」「住宅・建築」など-20%以上の下げを示しているセクターが多い。

【テレビ東京(9411)】
「運輸・自動車・食品・薬品などの業績が低調だったことから」(四半期決算短信より)


各テレビ局で、堅調・軟調な主業種のみを抽出しなおすと次のようになる。

・日本テレビ
  ○……「電気機器」「食品」「映画」
  ×……「輸送機器」「金融・保険」「運輸・通信」「非アルコール飲料」

・TBS
  ○……「エンターテインメント・趣味」「総合電気機器」「精密機器・事務機」
  ×……「金融」「化粧品・トイレタリー」「酒・飲料」「食品」「化粧品・トイレタリー」

・フジ・メディア
  ○……「衣料・身回品・雑貨」「通信」「交通・レジャー・観光」
  ×……「自動車・関連品」「流通・小売業」「化粧品・トイレタリー」
・テレビ朝日
  ○……「一般産業機器」「精密・事務機器」
  ×……「基礎材」「卸売」「出版」「住宅・建築」

・テレビ東京
  ○……言及なし
  ×……「運輸」「自動車」「食品」「薬品」


さらに例として、「主要テレビ局の「スポット広告の減り具合」をグラフ化してみる」でもグラフ化した際に判明したように、スポット広告の減少額がもっとも売上に大きな影響を与えているTBSと、第二位のテレビ朝日における業界別のスポット広告の増減を見てみたのが次の図。

TBSの業界別スポット広告の増減
TBSの業界別スポット広告の増減
Tテレビ朝日の業界別スポット広告の増減
テレビ朝日の業界別スポット広告の増減

これらの図やデータから言えることは次の通り。

・テレビ局によって(元々のスポット広告の配分の差もあるのだろうが)業界の対応が異なる。例えば前年同期比で「食品」はテレビ東京やTBSでは軟調だが、日本テレビでは堅調に推移している。
「金融」「自動車」「化粧品・トイレタリー」は多くのテレビ局で削減率が大きい。これらの企業は金額的にも出稿額が大きいため、与える影響も大きいものと推定される。


「金融」が広告費を大きく減らしているのは、「グレーゾーン」問題で消費者金融がスポット広告を出す余裕が無くなった・自粛したこと、そして金融商品取引法絡みで金融・保険業界が広告を出しにくくなったことが大きな要因。すでに数年前までの勢いも、ダンシングチームも可愛い犬の姿もない。「自動車」は急速な景気の悪化で販売実績が落ち込んでいるためで、昨今のニュースで減産報道をよく耳にしているだけに「なるほど」と思う人も大いに違いない。

テレビ広告イメージまた、【モスバーガーの「迷走」とテレビコマーシャルの打ち切り検討と】にもあるように、多かれ少なかれ各業態がテレビCMに対する費用対効果を見つめ直し、予算配分の優先順位を切り替え、出稿量を変更しているようにも見える。

さらに今回はスポット広告のみを対象にしたが、各局の短信の本文を読むとタイム広告にまで出稿量減少の影響が出ているという表現があちこちで目に留まる。短期的には営業強化で前年比プラスの局が多いタイム広告も、今後少なからぬ減少を見せることだろう。まずは期末決算におけるデータ公開を待ちたい。

タイム・スポット広告が減少したのは果たして出稿企業側のおサイフ事情によるものだけなのか、出稿先のテレビ局の質の問題にあるのか、それとも相対的に「より効果の高い」媒体への予算配分が増えたからなのか。いずれが正しいのか、あるいはいずれの影響が大きいのかは、契約スパンの長いタイム広告の変化の中で見えてくるに違いない。

■関連記事:
【ネットやケータイ増やしてテレビや新聞、雑誌は削減・今年の広告費動向】

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