今年倒産した上場企業をグラフ化してみる(10月31日版)

2008年11月01日 12:00

倒産イメージ(10月31日版)10月2日にマンション開発・分譲を行う【エルクリエイト(3247)】が自己破産を申請すると共に上場廃止が決定、上場企業の倒産(破産・民事再生・会社更生)は今年に入って20社目となった。これに前後して、とりわけ9月10月には上場企業が続々と倒産。帝国データバンクによれば、この倒産件数「27」は2002年の29件に続き、戦後2番目の多さとなるという。不動産関連市場の軟調さに加え、さまざまなマイナス要因が重なった不運があるとはいえ、株価動向とあわせ少々常軌を逸している。そこで今回は【今年倒産した上場企業をグラフ化してみる】のデータ更新版として、最新のデータを反映させたグラフを作成し、現状を把握できるよう試みることにした。

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まずは今年に入ってから、10月31日時点の上場企業における倒産企業一覧。エー・エス・アイは上場廃止後なので取り入れておらず、合計で27社となる。

2008年における上場企業の倒産一覧(10月31日時点)
2008年における上場企業の倒産一覧(10月31日時点)

なお「不動産」には直接の不動産売買以外に不動産投資、不動産関連事業も含めてある。詳細に分類しても今件においてはあまり意味をなさないから。

さて次に、セクター(業種)ごとに負債総額を累計し、負債総額全体に占める割合をグラフ化する。

2008年に倒産した上場企業の負債額区分(10月31日時点)
2008年に倒産した上場企業の負債額区分(10月31日時点)

不動産だけで7割強、建設も含めると9割超が「不動産・建設」という、不動産事業がらみの企業の倒産で生じていることになる。いかに今年の上場企業の破たんが、不動産業界と深い関係があるかが分かるだろう。

負債総額の上位10位を並べてみても、不動産業界の苦境が見て取れる。

2008年における倒産上場企業負債総額上位10位と負債額(億円)(10月31日時点)
2008年における倒産上場企業負債総額上位10位と負債額(億円)(10月31日時点)

上位10位中、8社が不動産、1社が建設。それ以外のセクターは10位のニイウス コー1社にしか過ぎない。……先月の時点ではニイウス コーは6位だったのに、いまや10位にまで後退している。それだけ不動産・建設の大型倒産が10月には相次いだということだ。

また、上場企業の倒産は今年後半にかけてペースを上げている。これは元々改正建築基準法絡みで審査が通りにくくなり新規建設物件の量が少なくなったことに加え、去年秋以降の資源高によるコストの高騰、さらには不景気による需要縮小で需給バランスが大きく崩れたこと、その上今年春先以降顕著になった金融信用収縮で「資金の借り入れが難しくなった」どころか「貸しはがしを受ける」企業が相次いでいることが要因として挙げられる。

2008年における上場企業倒産件数(10月31日現在)
2008年における上場企業倒産件数(10月31日現在)

特に10月の月末は連続して3件も相次いでリストに名を連ねるなど、半ば倒産ラッシュ状態となり、結果として「現在のところ」月間倒産件数では最多の8件を記録する事態におちいっている。

最後に「市場から失われた資金」を計算してみる。これは上場廃止告知日におけるその企業の株価に、その企業が発行している株式総数(ヤフーファイナンスから取得)をかけた、いわば「倒産告知時の時価総額」。倒産≒上場廃止となればその企業の株式の流動性はほとんどゼロとなるし、破産ならほぼ資産価値はゼロ、民事再生や会社更生でも上場廃止後に何らかの資産価値を得られる可能性は極めて低い(まれな例外として、上場廃止に清算された分配金が、上場廃止時の株価を上回る場合もある)。

そこでここでは、上場廃止告知日のその企業における時価総額を、「株価がゼロ」=「時価総額がゼロ」になると仮定し、その資金が市場から失われてしまうと考え(少なくともそれに近い額がそれぞれの株主から失われるのは確かだ)、計算してみることにした。仮に倒産告知前に何らかの「気配」が感じられていれば、投資家はそれに気づき手持ちの株式を売り抜けようとするので、自然に時価総額も下がることになる。

2008年における倒産上場企業の倒産告知日における時価総額(≒市場から「失われた資金」)(10月31日現在)
2008年における倒産上場企業の倒産告知日における時価総額(≒市場から「失われた資金」)(10月31日現在)
・「不動産」が半数突破
・いまだにプロデュースの
「突然死」の影響は大きい

相変わらず「その他」セクターの比率が異様に高い。これは先日【プロデュース(6263)、民事再生法適用申請・10月27日に上場廃止】でもお伝えした【プロデュース(6263)】に寄るところが大きい。株主が異変に気がつく、あるいは気がついても逃げ切る余裕なく倒産の告知がなされたため、株価が高い水準のまま破たんし、結果的に「時価総額」に大きく貢献することになってしまった。

ちなみにプロデュースの倒産告知当時の時価総額は160.7億円。負債総額ではトップのアーバンコーポレーションの140.8億円ですら上回る値である。プロデュースの事例がいかに異様であるかがあらためて理解できよう。

またその一方、不動産・建設セクターの割合が前回と比べ増加し、半数を超えているのが分かる。不動産業の倒産が相次ぎ、「失われた資金」が積み増しされているのが分かる。


前回「出来うることなら年末に「あれからデータは更新されることもなく年を越すことができました」と「株式市場雑感」あたりでコメントできると嬉しいのだが。」と文末に記したが、状況は改善されることもなく、10月末時点でこのような「まとめ記事の更新」をしなければならなくなった。恐らくは11月末・12月末も同様の記事展開をする必要が生じるだろう。

そうなれば2002年に記録した「年間倒産件数29社」という記録は確実に更新される。上場している中小不動産企業の動向を見るに、その予想は恐らく的中するものと思われる。国内要因だけでなく国外要因も大きくのしかかってくるから始末が悪い(先のバブル崩壊は大部分が国内要因によるところだった)。

望むことといえば、せめて「積み増し」される件数・額が少しでも少なくなること。今はただ、それを祈るしかない。


(最終更新:2013/08/02)

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