日本で広がる経済格差は世代格差

2008年10月25日 19:00

金持ちイメージ先に【拡大する経済格差、日本は14.9%が「貧困層」】で紹介した、経済協力開発機構(OECD)による報告書「格差は拡大しているか:OECD諸国における所得分配と貧困(Growing Unequal? Income Distribution and Poverty in OECD Countries)」では、主要各国毎の留意点をまとめたレポートも報告されている。今回はそのレポートのうち、日本に該当するものを紹介することにする(【発表ページ】【日本のレポート、PDF】)。

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・「日本における所得格差は過去5年間では多少縮小する傾向が見られるが、全体では拡大する傾向にある。また、日本の貧困水準(所得分布中央値の50%未満で生活する人の割合)はOECD諸国内では4番目に高い」

日本の貧困水準(所得分布中央値の50%未満で生活する人の割合)
日本の貧困水準(所得分布中央値の50%未満で生活する人の割合)

これは先の記事でも紹介したとおり。正確には14.9%の人が「貧困層」ということになる。

高所得者層は
バブル崩壊で痛手を受けたが
それでも日本の高所得者層は
OECD平均以上の所得を
手にしている

・「一世帯あたりの所得は過去10年間で減少。低所得層は1990年代後半がもっとも困難な時期。高所得層は2000年代前半に所得減少を経験した」
・「日本の所得下位10%の国民所得は6000ドル(購買力平価)で、OECDの平均7000ドルを下回る。上位10%の国民所得平均は6万ドルで、OECD平均の5万4000ドルよりはるかに高い」
 為替レートの変動(次第に円高基調)もあり、一概に低所得層の「OECDの平均以下」の部分はうのみに出来ないが、それを考慮しても上位10%の平均所得層の高さには驚かされる。要は「OECD加盟国の中でも日本は富裕者層のお金持ち度が際立っている」ということ。

・「給与と貯蓄から得られる所得の格差は、1980年代半ばから30%拡大したが、同時期においてOECD諸国の平均は12%増だった。日本よりも大きく拡大したのは、イタリアだけ」
給与所得と貯蓄(income from savingとあるので譲与資産も含めた手元にある資産からの配当、利息などだろう)がまとめてあるので判断が難しいが、バブル期以降格差の拡大度合いはOECD諸国内でも群を抜いている。その理由の一つが次の項目で語られている。

経済格差の拡大は
急速な高齢化も一因

・「日本社会は急速な高齢化が進行している。過去20年で高齢者の割合は2倍に増え、子供の数は3分の1減った。これらの変化が格差拡大の原因のひとつである」
 年功序列制の採用、非採用に関わらず、一般に高齢者の方が給与所得額は大きい。また、蓄財額も長生きしている分(無駄使い無ければ)大きくなる。さらに退職金や年金なども考慮すれば、さらに格差は広がる。富める可能性が高い人の数が増え、そうでない人の数が減れば、全体的に統計をとれば「格差が広がった」と見えるのは道理である。

・「1985年以降、子供の貧困率は11%から14%に増加したが、66歳以上の人の貧困率は23%から21%に減少した。これは、依然、OECD平均(13%)を上回っている」
若年層の貧困率が増加し、高齢者の貧困率が減少している。貧困率は所得分布中央値から導き出されるので、先の「一世帯あたりの所得は過去10年間で減少」とあわせて考えると、高齢者の所得減少率は比較的少なく、若年層のそれは大きいことが推定される。要は(結果論ではあるが)「高齢者の所得保護が優先され、若年層が後回しにされた結果」ともいえる。


これらのデータはOECD調査によるものだが、似たような結論は当サイトでも何度かとりあげた各種国税庁データからも裏付けられている。具体的には【景気回復はサラリーマンからは遠く……給与は9年連続減少、格差も拡大方向に】【「年収300万円以下の低所得者層」と「2000万円以上の超高所得者」の増加……二極化する給与実態】などがそれに該当する。

格差イメージ【日本の人口は2055年に8993万人へ減少、国立社会保障・人口問題研究所発表】にもあるように日本の人口構成が逆ピラミッドに近い形を描きつつある以上、ベンサムの「最大多数の最大幸福」ではないが、高齢者を優遇した政策が数多く取られるのも致し方ないところ。しかし一方でそのような施政が、若年層の社会全体に対するモチベーションを低下させてしまいかねない(あるいはすでに「させている」)ことも事実。

国全体の活力を維持するのはもちろん、さらに飛躍させるためには、年金問題に代表されるような「今の高齢層って社会の富のもらい逃げじゃん、俺らはバチ被るだけ!?」といった印象を若年層に持たせないような、仕組みを作る必要がある。「働いてもその大部分が取り逃げされるのでは働き甲斐も無くなる」、考えてみればごく当たり前の話ではあるのだが……。


(最終更新:2013/08/02)

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