温暖化現象!? クマゼミ分布の北上を確認

2008年09月08日 08:00

クマゼミイメージ【ウェザーニューズ(4825)】は9月3日、全国の一般の人からの協力を元にしたクマゼミの分布調査結果「全国一斉クマゼミ調査」を発表した。それによると温暖化が原因と思われる、生息地の北上傾向が見られることが明らかになった(【発表リリース】)。

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クマゼミとその鳴き声

クマゼミは平地から低山地に生息する、6~7センチの比較的大型なセミ。関東南部以西の東海、近畿、中国、四国、九州地方に生息しているのが定説。しかしここ数年、ウェザーニューズには、生息地と言われていたエリア以外からの目撃レポートが一般の方から多数寄せられていたという。そこで今回一般の人からのデータも収集した「全国一斉クマゼミ調査」を8月に行い、その実態を調査することにした。調査の結果、全国から1793件もの情報が寄せられ、それらを元にまとめられたのが今回の調査結果。

クマゼミ分布調査結果。生息地域が北上しているのが分かる
クマゼミ分布調査結果。生息地域が北上しているのが分かる

調査結果によると、従来生息エリアの北限と言われていた「関東南部」が、「関東北部~北陸」に変化していることが見て取れる。ウェザーニューズ側ではこの結果について「東京を中心とする関東圏において気温上昇が起こり、これによりクマゼミの生活できる環境が北上している」と原因を推測している。そしてその推測を裏付けるために提示されているのが、次のグラフ。

月積算気温の平均。要は毎日の気温を一か月分足していった合計。2004~2007年の大阪におけるデータがないのが悔やまれる
月積算気温の平均。要は毎日の気温を一か月分足していった合計。2004~2007年の大阪におけるデータがないのが悔やまれる

要は、「現在の東京」は「1970年代の大阪」に匹敵する暑さになっているということ。これが「クマゼミ北上化現象」の原因だと結論付けている。

クマゼミの生息地
北上以外に
個体数の増加や
夜間に鳴く現象も確認

さらにウェザーニューズでは、クマゼミの個体数そのものも増加を続け、アブラゼミを上回りつつあるのではないかとする推測も提示している。各地のレポートによれば東海から九州の一帯で特にクマゼミが増え、アブラゼミを上回っている傾向が見られたという。

加えてクマゼミの鳴く時間帯にも注目すべき傾向が見られている。通常クマゼミは、早朝から昼頃にかけて鳴くものだが、今回集計された各地からのリポートでは、昼の他に、夜の時間帯に鳴くとのリポートが多数寄せられている。この傾向は「夜でも気温が高いこと」や「照明により明るい状況が続くこと」などが要因として考えられるとしている。


クマゼミが夜間も鳴く傾向については、先に【今年はセミが去年の2倍、鳴き声うるさく夜間にまで】でも触れたように、特にヒートアイランド現象で気温が高く、照明が多い都心部で見られることが、ここ10年位前から報告されているとのこと。グラフや数字上のデータは提示されていないが、今回のウェザーニューズの調査結果でも、それが裏付けられたことになる。

また、温暖化現象を起因とする「北上化現象」については、【「関東以南でリンゴが採れない」「日本近海でサンマ収穫が出来ない」地球温暖化の影響を予想】で解説したが、農林水産省も昨年2007年末に警告を発する意味で分析レポートを発表している。あくまでも食用動植物を対象としているので、セミについては触れていないが、似たような現象が果物や野菜、穀物、魚介類などで顕著に見受けられている。

クマゼミイメージ温暖化現象そのものも、複雑な要素によってぶれが生じうる。一過性のものかもしれないし、今後急速に事態が悪化するかもしれない。さらに「温暖化そのものが事実なのかどうか」も含め、多種多様な意見が提示され、議論が交わされている。しかし「今わかっていること」を正しく見極めて整理し、その上で「将来はこんなことが起こりそうだ」という情報を発信することが重要には違いない。

クマゼミの繁殖地域北上化の現象も、地球の温暖化を裏付けうる一つの証拠として、提示できる。セミそのものは(通常は)食用とはならないので大きな影響は無いだろうが、彼らの生態の変化が何を意味しているのか、そのシグナルには耳を傾けるべきである。


(最終更新:2013/08/03)

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