米自動車大手ビックスリー、95%超で「5年以内に債務不履行」との分析

2008年08月09日 12:00

株式イメージ【ブルームバーグが8月5日】に伝えるところによると、ヨーロッパの大手総合金融グループの一つウニクレディト・グループがCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)に基づく分析をしたところ、アメリカの自動車メーカー大手三社「ゼネラル・モーターズ(GM)」「フォード・モーター」「クライスラー」のいずれかが5年以内にデフォルト(債務不履行)に陥る可能性は95%超えという結果が出たことが明らかになった。

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CDSとは【最近よく聞くキーワード「CDS」とは?】で説明しているように、破綻時の債務保証の仕組みを金融商品化したもの。保険の仕組みと同じで、事象が発生する確率が高ければ高いほど保証コストも跳ね上がる。GMの1000万ドル分の社債の保証コストは「当初支払い470万ドル+年間50万ドル」まで跳ね上がった。これはデフォルト確率84%を示唆するという。同様にフォードの社債のCDSは破綻率75%。これにクライスラー社のものを加え「3社いずれかが債務不履行におちいる可能性」は実に95%を超えたという。

CDSの解説でも触れているが、保証先が万一破綻した場合、CDSの売り手には大きな負担(債務保証分)がのしかかる。しかし債務不履行の確率高しとして保証コストも跳ね上がっているため、元記事にいわく

3社すべてのCDSを売った売り手は仮に3社のうち2社が破たんしても利益が出る。この見方は、3社の債務、合計3000万ドルを5年間保証するCDSの価格が1800万ドルで、想定回収率が少なくとも25%との想定に基づく。


とのこと。ざっくばらんに表現すれば「この5年のうちに3社のうち2社が破綻しても何ら不思議ではないと、CDSの市場は判断している」ことになる。

少なくともCDS市場では
5年以内にビックスリーのいずれかが
95%超で破綻すると判断している

一方でこのビックスリーのうち1社でも債務不履行におちいった場合、CDSではなくCDO(債務担保証券、Collateralized Debt Obligations )市場は評価損と損失の波に襲われるだろうと分析している。2005年にGMとフォードが投資適格の格付けを失う前に組成されたCDOの80%超には、両社の「その時点での」CDSが組み込まれているからだ。もちろん現状の経営危機を反映した保証コストに基づくCDSではないため、万一債務不履行となれば大きな損失が生じ、それはCDOそのものの価値を大きく損なうことになる。そしてCDO市場は実に1兆2000億ドル(130兆円)にも及ぶ。

要は「小刻みにされた不動産担保による金融商品のうち、サブプライム部分が破綻したが、小刻みにされたがためにどの部分が不履行状態になったのか分からず、全体的に価値が下がって買い手がつかなくなった」というサブプライムローン問題のCDS・CDO版が発生しうるということになる。

「ビッグスリーのいずれかの5年以内における債務不履行確率95%超」はあくまでもCDS市場の現状から類推した数字であり、それぞれの会社の内部事情や政治的要因、財務・市場状況をそのまま反映したものではない。しかしCDS市場における売買や値付けは、それらの要素を元に行われるため、「間接的には」反映されていると見なしてよい。

日本では「現時点では」あまりなじみの無いCDS・CDOではあるが、今後先の「サブプライムローン」同様に馴染み深い(しかもありがたくない方面)ものになる可能性はある。アンテナを張り巡らせ、十分に注意しておく必要があるだろう。


(最終更新:2013/08/03)

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