サービス産業の動向をグラフ化してみる

2008年07月16日 12:00

コンサートイメージ経済産業省は7月15日、特定サービス産業動態統計調査の5月分確定情報を公開した。それによると、対個人サービスの中でも娯楽系、特にパチンコや映画館などにおいていちじるしい下落傾向が見られることが明らかになった。また現在も事態が進行中のNOVA関連で、外国語会話教室の落ち込みも大きな下げが見て取れる(【発表ページ】)。

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今調査は調査内容によって全国及び特定地域を対象に、企業または事務所単位で計測され、該当業種の年間売り上げ総額の約7割をカバーする売上上位企業・事業所を対象に行われている。調査事由は行政施策の基礎資料、景気動向の判断材料など。調査対象数は2500程度で回収率は80%。調査方式は郵送及びネット経由。計測時期は毎月で、調査期日はその月の月末現在。

まず対事業所サービス業における売上高推移(直近三か月)をグラフ化する。

対事業所サービス業売上高推移(前年同月比比率)
対事業所サービス業売上高推移(前年同月比比率)
・クレカ普及の恩恵
・広告費の減退
(ただしネット系は躍進)

企業の事業動向が鈍くなっているせいか、物品賃貸業は軟調な傾向が続いている。また、経費削減のあおりを受けてか広告業もかんばしくない。一方で、クレジットカード業は高い伸びを示している。これは取扱高の推移を表しているので、カード利用者が増えているが増えているということを意味するのだろう。ただし消費者金融業務は-12.4%と大きく取扱高を下げている。

リースの中身を見ると、「情報関連機器」(サーバーなど)は前年同月比-27.9%という低い値を見せ、これは12か月連続の減少を記録している。競争激化のせいもあるに違いない。一方マイナスが続く個別部門の中でも、為替変動の恩恵を受け、輸出用機器は+17.4%と大きな伸びを見せる。

また、IT不況とも呼ばれIT新興企業の株価が思いっきり低迷している昨今ではあるが、情報サービス業は強め。資源高の影響を受けにくいことと、各企業のコストカット・効率化のためにはIT化が避けられないという意識からだろうか(中身を見ると受注ソフトウェアなど大企業向けのプログラムやシステム構築の部門での伸びが大きいことも、この仮説の裏づけとなる)。

広告業ではインターネット、海外広告などが躍進しているのに対し、既存媒体は押しなべて軟調。特に新聞は-13.6%と既存4大メディアの中でももっとも大きな下げ率を見せている。

続いて対個人サービス業。消費者レベルではこちらの方が身近な項目が多いはずだ。

対個人サービス業売上高推移(前年同月比比率)
対個人サービス業売上高推移(前年同月比比率)

多少のぶれはあるが、冒頭でも触れたように「NOVA事件」絡みで「外国語会話教室」の下げがキツい。この影響はしばらく続くことだろう。また、法律の改正や「グレーゾーン撤廃」など利息制限法・出資法の関係で資金調達が困難になったや機体そのものの規制強化もあり、「パチンコホール」の低迷振りが目立つ。

・映画館の低迷
・パチンコの下落ぶり
・コンサートやツアーが躍進

それにも増して気がかりなのは「映画館」の下落ぶり。邦画以外のヒット作に恵まれなかったこともあり、全体としての入場者数・売上高友に大きく落ち込んでいる(洋画にいたっては入場者数が前年同月比-51.6%に及んでいる)。一時期複数の映画館をまとめて一つの会場に納め、さまざまな娯楽施設とあわせて「シネマコンプレックス」形態を成す施設の建設ブームがあったが、今や多くのシネコンが閑古鳥状態であることが想像できる。

一方で「カルチャーセンター」「フィットネスクラブ」「ゴルフ関係」など、比較的ハイソなレジャーは多かれ少なかれ伸びの傾向が見受けられる。特に「劇場・興行場、興行団」は大きく増えている。内訳を見ると特に「興行団(音楽)」の伸びが著しい(売上高+74.8%、入場者+64.3%)。コンサートやツアーなどが大きな成長を示しているのだろう。

また、「学習塾」も地味ではあるがポジティブな動き。これは例え景気が悪くともわが子への投資を減らすわけにはいかぬという親心からくる結果かもしれない(【成長に 実感無くして 不安増え 焦りも増える 教育ママさん】)。


今回は5月分、及び直近三か月分のデータを参照してみたが、対事業所・対個人それぞれのサービス業のすう勢がある程度つかみ取れたことだろう。特に「パチンコホール」の目の前には相変わらず暗雲が立ちこめていること、カードの普及でクレジットカード業が堅調なことなど、いわれてみればうなづけるが、具体的なデータを提示されてはじめて「なんとなく」から「確かに」と確証を持てることも多いはず。

ふところ具合が寂しいと利用が減らされるサービス業と、さみしい中でも欠かせないサービス業。対個人・対事業所それぞれについて昨今の傾向が把握できれば幸いだ。

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