【更新】原油価格150ドル超なら漁業の4割が廃業・生産量は最悪半減へ

2008年06月11日 08:00

漁業イメージ[日経新聞]は6月10日、【全国漁業協同組合連合会】が同日に「燃料として使う中東産ドバイ原油価格が1バレルあたり150ドルまで高騰すると、現在12万5000ほどの漁業経営体の約4割にあたる4万5000が廃業する可能性がある」との試算を発表したと伝えた。年間漁業生産高も567万トンから約半減してしまうという。現在全国漁業協同組合連合会の公式サイトにはこの発表は掲載されていない。

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アジア市場では流通する原油の大部分は中東産原油で、その価格の基準となるのはプラッツ社の発表するドバイ原油・オマーン原油価格。そのプラッツ社の価格に影響を与えているのが、東京工業品取引所の中東産原油価格の先物価格。少々ややこしいが、「東京工業品取引所の中東産原油価格がアジア市場の指標」となっている。また世界的にはニューヨーク商業取引所のWTI原油価格(主にアメリカ)やIPEブレンド原油先物(主にヨーロッパ)の価格が指標として用いられる。

これらの価格は【東京工業品取引所のページ】で確認できるが、直近データでは1バレル(「樽」を意味する。159リットル)あたり130ドル前後で推移している。今回の報道によれば、この価格が150ドルに達すると燃料のA重油が現行の10万円強(すでにこの時点で2003年の2.6倍程度)から13万円にまで値が上がると試算。現状でも採算割れを起こしているため、さらに燃料費がかさむとなれば廃業に追い込まれる漁師が相次ぐとのこと。

1バレル150ドルで
漁業就業者の4割が失職
漁業生産高3~5割減

具体的には現在21万人ほどいる漁業就業者のうち、150ドル/バレルにまで値が上がると、最大で約4割の8万5000人が離職に追い込まれると試算。その結果、漁業生産高は32~48%減少するという。

水産庁でも【公式サイト内の燃油価格高騰対策ページ】にもあるように、各種対策を講じているが、燃料高騰のスピードに追いついていない状態が続いている。6月5日には漁業12団体が燃料高騰へ抗議するためゼネスト(一斉休漁)を検討していると報じられており([毎日新聞])、今回の発表もこれに連動したものと思われる。

すでにイカ釣り業者は6月18・19日のストライキを実施することを発表しているし、海外では【「ガソリン高すぎ!」 ヨーロッパ各地で発生するストライキやデモ】でお伝えしているように、ヨーロッパで同様の動きが広まりつつある。需給の関係から加速度的に原油価格が上昇している面とは別に、投機筋などによる影響が多分にあると考えられていることから、問題解決には過去の事例とは別の手立ても必要になることだろう。

また、正式なリリースが公開されておらず具体的な試算方法が分からないので、追加試算が出来ないのだが、【原油200ドルの世界】にもあるように一部では将来的に「1バレル200ドル」まで高騰するという可能性も示唆されている。この場合、漁業関係者がさらなる窮地に追い込まれることは間違いなく、事前対処のためには検討しておくべきなのかもしれない。


(最終更新:2013/08/05)

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