読者がトルコライスよりカレーライスを選ぶワケ

2008年05月29日 06:30

コラムイメージ先月後半から当サイトの記事作成プロセスを、少々意図的に変えている。とはいえ大きな変更ではなく、また表記レベルではなく元ネタ抽出の段階におけるものだから、おそらくほとんどの人は気がついていないはず。その変更内容とは「一つの記事の主張はできるだけ一つに絞ろう」というもの。

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きっかけは、かの人の一言

きっかけはまなめ王子こと【まなめはうす】の中の人の次のような発言。4月26日に当サイトの【「ニュースサイトに対しての不満」を自問自答してみる】に対するレスポンスとして次のような意見が寄せられていた。

一つの記事に一つのニュース。そうでないと、うちのような羅列型ニュースサイトで紹介しにくいw


さりげない一言だったのかもしれないが、当方にとって深く考えさせられる内容だった。「紹介しにくい」をそのまま受け取ってよいのだろうか。

「まなめはうす」のような羅列型ニュースサイトにとって、紹介される一つ一つの記事は「自分が他人に紹介したい」お勧め記事であり、何らかの形で共感を持つ部分があることになる。今流行のソーシャルブックマークも同じ。【「共存を」40.40%、「閲覧するだけなら抵抗感ナシ」45.14%~動画投稿サイトの意識調査結果】でも触れたが、人は自分が満足した内容のものを他人(自分の好きな人……サイト運営者なら「読者」)に勧めたくなるもの。逆に考えれば、他人に勧めているものは自分が満足した内容のものといえる。

「紹介しにくい」

「読まれにくい」?

記事構成で紹介されにくい。言い換えれば「記事の'構成'次第で記事そのものが満足されなくなる」ということではないだろうか。そこまで考えが及んで、ハッとしてしまった。

そしてサイトやブログを持っていない人でも、インターネット上の記事に目を通し、時間をかけて読み通すのは、興味関心共感を覚えているからに他ならない。仕事なら別だが、趣味趣向の時間に苦痛を感じつつウェブサーフィンをするなど、マゾヒスト以外考えられない。そのような人でも、頭の中に「面白い」という付せんを貼り付け記憶に残るものになるためには、もしかしたら「一つの記事に一つのニュース」が基本なのかもしれない。

ひとつの記事に、ひとつの主張とたくさんの主張

思い返してみれば、インターネット上の記事は文章量の制約がないからか、タイトルでほぼ内容を語り、そのタイトルが表している事柄の説明で1つの記事が終わっていることが多い。一つの事柄を説明するために付随的な別の用件を加えることはあっても、最終的に語りたいことは一つ。そしてたとえボリューム感に欠けるところはあっても、その方が印象に残ることは多い。

逆に一つの記事で複数の主張、事件が語られていた場合、それぞれの内容が興味深くとも読み終えたときに「はて、なんだっけ?」ということになる。これはそれぞれの印象が「一つの記事を読む」過程でごちゃごちゃに混ざり合い、それぞれが打ち消しあってしまうからだ。書き手は「語りたいことを存分に伝えたぞ」と満足しても、読み手は「結局'この記事では'何をいいたいの?」と思案してしまう。

複数の主張・論点が
互いを打ち消しあう
可能性も


もしかしたらこれまでの記事制作過程、特にソースの抽出過程でこんな単純なミスをしてきたのではないだろうか。書き手は満足していても、読み手が「主張が多すぎて一つ一つがぼやけてしまい、それぞれの面白みが半減してしまう」。そんな状況を生み出していたのではないだろうか。

さらにもう一つ、先週【ホームページを作る人のネタ帳】の「ニュースって結局、普通でないもの、常識的でないもの」という記事に目を通し、確信に至った。ニュースは単独でニュース足りうる。ならばニュースの素材である「伝えたいこと、話したいこと、説明したいこと」は、たとえ複数の内容が一つのソースからのものでもまとめずに、一つ一つ分割した方が分かりやすい、伝えやすい」ということ。どのみち、紙媒体のように紙面に制限など無いのだ。分かりやすいのなら、ページ(記事)数を倍にしても何の問題もない。

カレーライスとトルコライスイメージ記事タイトルの「トルコライスよりカレーライス」とは、カレー味ピラフ、ナポリタンスパゲティ、ドミグラスソースの盛り合わせの「トルコライス」よりも、単体の「カレーライス」の方が一つの味の印象が強くなり、分かりやすくなるということ。インターネット上の記事についても同じことがいえるのではないだろうか(※ちなみに美味しさそのものの点でトルコライスが劣っているというわけでは決して無いので、念のため)。

記事のソース抽出方法、記事の書き方を変えてみる

そこで先月からは意図的に、一つのソースの中に「これは紹介したい」「解説を加えたいな」「ぜひとも伝えねば」という内容・ニュースが複数存在した場合、それぞれのニュースを別個の記事に展開してみることにした。

元々当方(当サイト)ではプレスリリースや研究レポート、調査報告書を元ソースに記事を書く場合が多く、一つの報告書で複数の「記事にしたいこと」が見つけられる場合も多々ある。これまでは中見出しで区切ったり、大きめな概要で分割して記事にすることが多かった。この手法だと「伝えたい内容をもれなく伝えることができる」点ではプラスとなるが、先の通り自己満足の領域から出ていなかったのかもしれない。

ソース抽出手法、記事構成の考え方。一つのソースに伝えたいことが1つだけなら何の問題もない。しかし複数存在していた場合、一つの記事に複数の「伝えたいこと」を盛り込むと、全体としてぼけてしまうことが多い。そこで「伝えたいこと」を一つ一つ抽出し、それぞれを記事にすることに。
ソース抽出手法、記事構成の考え方。一つのソースに伝えたいことが1つだけなら何の問題もない。しかし複数存在していた場合、一つの記事に複数の「伝えたいこと」を盛り込むと、全体としてぼけてしまうことが多い。そこで「伝えたいこと」を一つ一つ抽出し、それぞれを記事にすることに。

むしろ伝えたいことはソースの中のあちこちに、要点として存在する。それらを抽出し、「ニュースにしたいこと」だけを抽出し、必要ならば肉付けをする。一つの調査結果から複数の事柄が見えてくれば、それぞれを別個に記事にする。関連性があればお互いをリンクで結び、そのつながりについても言及する。

このようにすることで、冗長な記事も比較的すっきりしてくる。なにより一つ一つの記事の焦点が明確になり、分かりやすい。後から記事を見直す場合も、タイトルと内容のリンクがはっきりしているので、抽出がしやすくなる。

読者も記事ごとの主張、ニュースの本髄が分かりやすく、読みやすくなるはずだ。書き手も読み手もプラスに作用するのなら、これほど素晴らしいことはない。

紙媒体の手法と、思い込みと、具体的なやり方と

元々「一つの記事に大量の主張を盛り込む」のは、紙媒体の記事構成や、学術上の研究レポートの執筆手法に近い。インターネット上で記事を展開する機会が増えてから、「文章の最初の一段落で、全体を大体は把握できるようにまとめておくのが、読者に対する親切心というもの」と教えられてきたが、もう一つの大切なこと「(ページ数に制限はないのだから)分かりやすいように遠慮なく記事を分割し、一つ一つの主張・伝えたい内容が分かりやすいようにするべき」を忘れていた。

一つのソースに
複数の「光るもの」があれば
それらを別個に
記事に仕立てる

「しっかりと説明、解釈、分析することが、他人には出来ない自分自身のとりえ」との思い込みが招いたミスといえる。いや、思い込みそのものには大きな違いはないのだろうが(自信過剰)、思い込みのあまり、もう一つの大切なことをすみに追いやるというミスを犯してしまったといえる。

具体的な手順は次の通り。発表リリースや調査報告書に目を通し、「これは気になった」という点をマークする。そしてその「要点」を箇条書きにする(これが記事のタイトルの原案になる)。それが出来たら優先順位の高い順、あるいは上から順番に一つ一つ、タイトル=伝えたいことを具体的に説明・解釈・分析していく、という具合だ(もちろん色々な要素があり、それらが全部あわせて一つの主張になる場合もある)。


意図的にこの方法にやり方を変えてから一か月。そろそろ新しいスタイルに慣れつつある。記事の焦点が鮮明化され、書き手としても書きやすくなるというメリットも生じた。書き終えた後「これって結局報告書の概略と変わらないのでは? 自分は何を伝えたいの??」という自問自答にとらわれることも無くなった。それだけでも大きな進歩といえる。もちろん最初から「概略を伝えたい」という場合には、これまで通り長めのものになるのはいうまでもない。

……難を言えば。伝えることが鮮明化されてますます当方の好奇心が旺盛になり、ピックアップするソースが増えたこと。そしてソースが増え、一つのソースが生みだされる記事も増えるため、必然的に作業工程も増えていること。ネタをまとめておくテキストファイルには、未消化のネタが日に日に増加し、賞味期限が切れて泣く泣く削除せざるを得ないものも大量に生じている今日この頃だ(別サイトのアイディアも続々浮かんでくるため、いくら時間があっても足りない)。最適化を図るためには、もっと経験が必要なのだろう。

ともあれ。あとはこのやり方が読者の方々にどこまで伝わり、受け入れられるかだろう。そのためにはますますの修練が、当方には必要だ。そしてレベルアップが出来たかどうかは、読者からの反応が一つの指針になるに違いない。

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