2008年4月の新設住宅戸数、前年同月比8.7%減

2008年05月31日 12:00

住宅イメージ国土交通省は5月30日、2008年4月における新設住宅戸数のデータを発表した。それによると4月の新設住宅戸数は前年の同月比で8.7%減の9万7930戸に留まり、10か月連続して前年同月比で減少したことが明らかになった。先月と比べると前年同月比のマイナスポイントの割合が減少し、先月懸念された「再び状況の悪化」傾向からやや回復した形(【発表リリース、PDF】)。なお今回発表分から国土交通省の公開ページや文章ファイルのナンバリングフォーマットが変更されているので注意が必要。

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具体的な内訳は持家が7.8%、貸家は5.3%、分譲住宅は10.4%の減少。貸家の大幅減少傾向には歯止めがかかったようだが、相変わらずマイナスの数字ばかりが見受けられる。また、地域別では先月とうって変わって近畿圏の堅調さ(33.8%増)が目に留まる。先月の反動だろうか。

改正建築基準法の施行、そしてそれに伴う行政側の準備不足・不手際(特に「大臣認定プログラム」や審査担当者絶対数の不足)が昨年夏以降の住宅市場における混乱と、新設住宅戸数の減少をもたらしているのはいうまでもない。不動産・建設業界の住宅建設におけるプロセスの遅延は、資源高・賃金上昇などの要因と相互作用し、「官製不況」をより悪化させている。

新設住宅戸数の変遷
新設住宅戸数の変遷(2008年4月分まで)

昨年8月~10月の大低迷から上昇傾向を継続していていた前年同月比割合だが、3月には再び下落し、再度状況の悪化が懸念されていた。今月4月分はやや持ち直し、ひとまず一安心といったところ。とはいえ、自然回復以外にポジティブな要素は見つけにくく、予断を許さない状況に違いはない。

着工床面積概要(前年同月比12.5%減)では、事務所は増加したものの店舗・工場・倉庫は減少。用途別では製造・不動産用のみが増加している。特に金融・保険業用の面積が86.8%と大きく減らしているのは、昨今の金融市場動向とも密接な係わり合いがあるのだろう。

耐震強度偽装問題を教訓にした
「改正建築基準法」の施行

・行政の不手際などで
新築戸数などが激減
・昨年夏で底打ちに見える。
・3月再び下落・失速感。
4月は踊り場?
不動産業のみ拡張を続ける

国土交通省では同日、住宅着工に一か月ほど先行するといわれている建築確認件数も発表している(【「最近の建築確認件数等の状況について」発表リリース】)。これによると今回発表された4月分データでは4.5%マイナスとなり、3月分データの14.8%からは改善の兆しが見られる。直近では今年1月の水準にまで押し戻した状態だ。

国土交通省から今回発表されたデータも含め、いまだに前年同月比がプラスにならない状況を観る限り、改正建築基準法施行の影響の大きさ、そして資源高というタイミングの悪い時にやってきたネガティブファクターが、不動産業界を大きく揺れ動かしていることが分かる。そして昨年秋以降最悪期から順調に立ち直りつつあった状況も、足踏み状態となっているのが現状だ。【改正建築基準法で影響を受ける周辺業界たち】で挙げた周辺業界にとどまらず、不動産業の軟調さは多くの業界にマイナスの影響を与えつつある。

不動産・建設業界は3月末決算が多く、5月に入り多くの企業で2008年3月度決算短信が提示されるようになった。いずれも軟調な数字と文言を目にすることができ、特に昨年夏以降(とりわけ昨年末以降)顧客側の支払い渋りや値下げ交渉、さらには売れ残り物件の増加など販売計画の遅れが短信から読み取れる。先日も【帝国データバンクのレポート】にもあるように、一部上場のゼファーの100%子会社である近藤産業が332億5800万円の負債を抱えて自己破産を申請している。今後も不動産・建設業界においては、該当企業のIRを含め、定期発表される当データを注意深く観察し、動向を見守る必要があるだろう。

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