「ウォーレン・バフェットの溜息」

2008年04月28日 06:30

ウォーレン・バフェット氏イメージ先に【「ウォーレン・バフェットの憂鬱」】で[このリンク先のページ(Cnn.co.jpなど)は掲載が終了しています]で、かのウォーレン・バフェット氏と学生との対談内容の一部(アメリカ経済の不景気状況について)を掲載した。その対談全文には他にもアメリカ経済全体や選挙、減税政策がどのような影響を与えるのかなど、さまざまな興味深い話が寄せられている。今回はその中から、現在の株式市場動向とバフェット氏の投資スタンスに絡んだ部分を紹介し、注釈を加えたいと思う。

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Q:このような株価動向において、投資家にどんな言葉をかけるべきなのか。

A:その答えはあえていうのなら、「今日見聞きしたものだけが投資戦略においてもっとも重要である」わけではない、ということだろう。目の前にあるものばかりに注意を奪われてはいけない。

つまり「もし経済方面において過去に何が起きるのかを知っていたとしても、株式市場がどのような動きを示すのかを把握できたわけではない」。だからこそ「(今現在の状況を知り尽くしていたとしても)平均以上の利益を上げるであろう銘柄を選ぶことはできない」ということ。

チャートイメージ投資戦略は「株というものは長期間保有してこそ価値を持つもの」というルールにのっとるべきである。この考え方でいけば、株式投資においてしてはいけないことは次の二つ。「間違った銘柄に手を出すこと」そしてもう一つは「間違ったタイミングで売り買いすること」だ。そして投資における真実とは、「基本的に買った株式を売る必要はない」ということに他ならない。

しかし(サブプライムローン関連をはじめとする金融商品では)アメリカの資産価値がぶつ切りにされて市場に流れ、それらは結局その仕組みゆえに暴落を続け、それら金融商品を創造した人たちの思惑通りにはならなかった。一部の「素晴らしい価値を持つ」資産の部分まで台無しとなってしまった。そして今、投資に及び腰になってしまっている。

ご存知の通り私はいつも「皆が恐れている時に貪欲(どんよく)になりなさい、そして皆が貪欲になっているときに恐れなさい」と言っている。しかしそれを判断するには要素があまりにも多すぎて、タイミングを推し量るのは難しい。もちろん「皆が貪欲な時に貪欲になってはいけないし、恐れている時に恐れてはいけない」こともまた事実だ。

判断する要素が複雑すぎて状況が自分で判断できないときは、少なくとも相場から一歩引いて休むのが良いだろう。

Q:あなたのルールに従えば、今は「貪欲」になるべきではないか。人々はみな大変恐れている。

A:その通り。皆はみな恐れおののいている。だからこそ株価は低迷している。株価は一年前より、そして三年前よりも安価な水準にある。

Q:それでもまだアメリカ経済は長期的には成長過程にあると?

アメリカ市場イメージアメリカの経済は長い目でみれば成長を続ける。しかしここ数年、数週間、数か月のスパンではそうではないかもしれない。もしこの事を信じられないのなら、株を買う事は忘れるのが一番。

長い目で見れば、経済は積み重ねによって成長していくもの。そして投資家が失敗する数少ない方法とは、高い手数料(や税金)、変に裏をかいて大儲けしようとし、それに失敗してしまうことに過ぎない。


今回もまた前回同様かなりの意訳や付け加えが混じっている。また、誤訳の可能性もある。もし致命的なミスがあればご指摘いただけるとありがたい。

また今回はバフェット氏の基本投資スタンスがあちこちで垣間見れると共に、いくつか補足説明が必要なのでまとめてここで行うこととする。

「基本的に買った株式を売る必要はない」
「バフェット氏は買った株を永久に売らずに持っている」と誤解している人がいるが、これは間違い。単に値がつり上がり、株価指標(例えばPERなど)で「あまりにも割高だ」と判断した場合や、その企業の経営方針や周囲を取り巻く状況が変化し保有するに値しない(変化によって「割高」判定が下された)と判断した場合は積極的に売りに出している。最近の例では【相場傾向転換のきざし? バフェット氏が次々に「買い出動」】で触れたペトロチャイナ株の売却が挙げられる。

ウォーレン・バフェット氏イメージ「間違った銘柄に手を出すこと」「間違ったタイミングで売り買いすること」
バフェット氏の投資戦略は「長期保有に値する銘柄」を「バーゲンセール的な株価の時に購入する」。本文での説明はそれをまったくひっくり返し、「してはいけないこと」にしただけの話。

「投資家が失敗する数少ない方法とは、高い手数料(や税金)、変に裏をかいて大儲けしようとし」
【過去60年間の日経チャートと「7%」「20年サイクル」・本当に「長期投資」は必勝法なのか】のチャートにもあるように、アメリカの株価は幾度かの調整を経て右肩上がり。経済が「積み重ねで成長し」ていき、まっとうな銘柄ならばその成長に反映するだけの株価を示してくれるという前提がこの言にある。

またバフェット氏は手数料や税金を極端に嫌う傾向がある。自社の株式(バークシャー株)で配当を出さず会社の資産に回すのも、「大きな税金がかかり十分な還元が株主に出来ないから」という説明をいつもしている。上場廃止になったどこぞのIT企業の元社長も似たような台詞を語っていたが(笑)、バフェット氏は有言実行を果たしているので株主からの文句はほとんどない。


「皆が恐れている時に貪欲(どんよく)になりなさい、そして皆が貪欲になっているときに恐れなさい」という言葉は、日本の投資格言「人の行く裏に道あり、花の山」と意味を同じくするものである。また「判断する要素が複雑すぎて状況が自分で判断できないときは、少なくとも相場から一歩引いて休むのが良いだろう」は、これもまた「休むも相場」に該当する。こうして読み直してみると、バフェット氏の投資戦略はきわめてオーソドックスで長期投資における基本を、忠実に守っているだけということが分かる。

「人の行く裏に道あり花の山」
「休むも相場」

スウィングやデイトレードなどの投資スタンスと比べればいかにも古臭く、またインターネットの普及などで世の中がスピーディに動く昨今においては「我慢できない」「耐えられない」人も多いだろう。投資期間におけるリスク(短期間ならば失敗しても何度でも繰り返せるが、長期間の場合には時間的な取り返しがつかない)も考慮する必要がある。

それでもなお、数々の実績をあげて成功し続けているバフェット氏の言及には、学ぶべきところが多いのもまた事実。混迷を続ける株式市場の中で、自分の投資戦略に戸惑いを感じたら、もう一度自分自身を見つめなおすと共に、「成功者の言葉」に耳を傾けてみるのも良いかもしれない。


(最終更新:2013/08/06)

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