個人で6万円・夫婦で12万円~アメリカの景気刺激策、手にしたお金は何に使う!?

2008年04月16日 08:00

お金イメージ今年の5月から逐次開始されるアメリカの景気刺激策の一つに、税金の払い戻し策がある。納税対象者となった1億3000万人以上のアメリカ人に対し、個人で300~600ドル、夫婦で1200ドル、子ども一人につき300ドルあたりの税金が小切手で払い戻されるというものだ。元々消費の活性化のために行われた景気刺激策としての減税(払い戻し)策であるが、【USA TODAY】によると政府の思惑通りに「何かの購入に充てる」と答えた人はわずか21%に過ぎないことが明らかになった。

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USA TODAYによると税金のガイドブックや関連ソフトウェアを販売するCCHの調査結果として、今回の「景気刺激のための小切手」の使い道について、次のような回答が得られている。また別の機関H&R Block、全米小売業協会(NRF)の調査も合わせて掲載されている

■受け取った税金払い戻しの小切手を何に使いますか?(CCH)
・借金の返済にあてる……47%
・貯金する……32%
・何かを買ったり楽しむ……21%

■受け取った税金払い戻しの小切手を何に使いますか?(H&R Block)
・借金の返済にあてる……45%
・投資をする……18%
・生活必需品の購入にあてる……21%
・レジャーなどの娯楽にあてる……16%

■受け取った税金払い戻しの小切手を何に使いますか?(NRF)
・消費にあてる……41%(430億ドル)
・借金の返済にあてる……28%(300億ドル)
・貯金する……19%(200億ドル)


アメリカ人の
ローンやカードによる
平均借金額は
166万円

小売業協会の数字はやや身びいきのような気もするが、借金の返済にあてたり貯金をする割合はいずれの調査結果でもそれなりに多い。景気(消費)刺激策として提供された小切手すべてが消費に回されるわけではないことだけは確かなようだ。

元記事ではさまざまな家族の事例を挙げて、今回の「景気刺激策として受け取った小切手」をどのように用いるかについて解説を行っている。しかし「借金の返済にあてる」と答えた家庭の説明の中に「アメリカの消費者のクレジットカードや自動車、住宅ローンなどを合わせた借金の平均額は1万6640ドル(約166万4000円)で、前年から7.8%上昇している。住宅ローンを含めずに計算した借金返済のための金額は平均815ドル(8万1500円)(原文に明記はないが恐らく月額)」というくだりがあり、アメリカの消費性向を支えているのがカードやローンなどの借金であり、今現在はその返済に個人個人が苦しんでいるようすがうかがえる。

今回の景気刺激策に対しては「額が少なすぎる」との批判をはじめ、有効性についてさまざまな賛否両論が投げかけられている。家族の事例でも「借金の返済に充ててローンの支払いを軽くする」「貯金する」「高騰したガソリン購入に充てる」「医療費に充当する」など、「積極的な消費には充当しにくいのではないか」と思わせるようなものが相次いで掲載されている。

一方で過去における同様の景気刺激策実施(2001年)の際には「払い戻し後9か月以内に、払い戻し額より4割増の消費増が見られた」とする研究結果も出ている。この場合、手元に余力資金ができたことで、消費モチベーションが上がったことや、このタイミングに合わせて実施された便乗セールスが原因のようだ。

税金の払い戻しが
借金返済や貯金に

個人の負債破綻が減り
市場に投入される資金が増える

単なる消費以上の
経済活性化と
市場信用不信解消・安定化に
寄与する!?

ただし2001年の時と違い、原油をはじめとした物価高は続いているし、金利の下落も現在進行形で行われている。さらにサブプライムローン問題というやっかいな問題もある。これらの事情から、払い戻しの税金のうち2009年の終わりまでにおいても半分程度しか消費に使われないのではないか(残りは借金返済や貯蓄)とするという予測が元記事のまとめに取り上げられている。いわく「短期間の景気刺激にはなるが、(個人ベースでもアメリカ経済全体でも)サブプライムローン問題を解決するまでには至らない」とのこと。

ただし意外な効果も期待されている。借金の返済や貯蓄に充てられる額が消費に向けられる額より多いことで、個人ベースの債務負担が減り、貯蓄額が増えていくのなら、金融市場の信用不信にはポジティブに働く可能性がある(つまり個々の負債返済や貯蓄の増加で、それだけ安定感が増す)。この効果はもしかしたら「ショッピングセンターへ買い物に行き消費をするより、経済の安定化と景気刺激のためにはプラスに働く」かもしれない、とのことだ。

果たしてこれらの調査や予想通りに景気動向が歩まれるのか。今後、とくに5月以降のアメリカ経済に注目したいところである。


■関連記事:
【ブッシュ大統領の景気刺激策、市場の反応は今二つ。多方面から独自案相次ぐ】

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