ブッシュ大統領の景気刺激策、市場の反応は今二つ。多方面から独自案相次ぐ

2008年01月21日 06:30

株式イメージ先日アメリカのブッシュ大統領が発表した景気刺激策に対し、市場は「パワー不足」との判断を示した。大統領の記者会見の直後からアメリカ市場は売り込まれ、直前まで前日比プラスで展開していた市場も失望感から値を下げ、結局週末は前日比マイナスで幕を引けてしまった。

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発表時1月19日のダウ(上)とナスダック(下)の値動き
発表時1月19日のダウ(上)とナスダック(下)の値動き
発表時1月19日のダウ(上)とナスダック(下)の値動き

ブッシュ大統領が打ち出した景気刺激策は先に【アメリカの景気刺激策、15兆円の規模で実施へ】で伝えたとおりだが、概要を改めて挙げると「個人の所得税を還付する戻し減税(小切手で最大800ドル前後)」「企業の設備投資をうながす優遇税制」の2本柱で「50万人の雇用創出」を目指す。規模としては最大で1500億ドル(16兆円ほど)を予定している。また、現状では2010年に期限切れとなる所得税・相続税・キャピタルゲインなどの減税措置の継続も訴えている。

「16兆円」というとかなりの額のように見えるが、市場関係者からは「不十分である」という声が多数を占めた。額の不足はもちろんのこと、(野党との折衝があるため仕方ないのだが)内容が不透明な部分が多いこと、そしてなにより今回の「不景気」の問題となったサブプライムローン問題(金融市場の信頼問題、巨額損失を抱える金融機関の問題、氷点下状態の住宅市場問題)に対する根本的な打開策には何ら触れていないことが致命的だったようだ。

また、野党の民主党からは食料品の購入券増発、失業手当の給付額増額、公共投資の投入など、公的部門からの需要拡大や貧困層へのサポートの充実を求める声が相次いでいる。与党の共和党内からも反発する意見も見受けられ、例えば次期大統領有力候補のロムニー(MITT Romney)氏は減税を柱とする独自の景気刺激策を発表している(【発表リリース】)。対策規模は2500億ドル(27兆円)、「個人」「法人」「住宅ローン」対策の3本柱で構成されている。

・個人……所得税最低適用税率を10%から7.5%に軽減(400ドルの減税効果)。2007年に9万7500ドル未満の低所得に対し遡って適用。65歳以上の従業員に対する給与の所得税の停止。20万ドル以下の所得の人に対する貯蓄や金融資産の売却益、配当からの課税を撤廃(投資促進を後押し)。
・法人……法人税を2年間で35%から20%に引き下げる(アメリカの国としての競争力増強)。
・住宅ローン……連邦住宅公社(FHA)の保証適用条件を緩和し、多くの人が借りられるようにする。


ロムニー(MITT Romney)氏イメージその他にもブッシュ大統領が言及しているように、時限立法の所得税・相続税・キャピタルゲインなどの減税措置を恒久化することや二重・三重課税の撤廃などを訴えかけている。

リリースを見返してもこれら景気刺激策の費用をどこからねん出する、そろばん勘定をあわせるのか説明されていないが、恐らくは「景気回復により政府の税収が増えれば、それを充当して余りある税収増加と景気回復の効果が得られる」と読んでいるのだろう。

実業家でもあるロムニー氏の景気刺激策は財源問題さえクリアできれば、そのまま日本でも適用してほしいくらいのもの。特に証券税制について明確に「投資促進は国益につながる」として税率をゼロにしつつ、「金持ち優遇」の非難も回避できるという素晴らしいアイディアとなっている(20万ドル……2100万円の上限が「金持ち」と(明確なデータから目をそらされデマゴーグ的な世論誘導にだまされている)世間一般から反論されるのなら、その枠を例えば1000万に下げれば良いだけの話)。

ブッシュ大統領の景気刺激策は1月28日の一般教書演説までに詳細を決定し公表される予定。それ以前に各著名人・政治家などからさまざまな意見が提示されることだろう。そしてそれらのいくつかは議会で論議が交わされるに違いない。

「兵は拙速を尊ぶ」ではないが、景気動向は分進秒歩の状態にある。。今にもダウ・ナスダックの各構成銘柄は「さらに」急落しそうな雰囲気・兆候を見せている。一刻も早く手を打たねばならないのはいうまでもない。

このまま有効な対策が打たれなければダウは、半年以内に9000-10000の領域にすら達しうる。日本の市場もアメリカ市場との連動性を考えれば、(日本国内の内部的要因が無くとも)アメリカ市場の下げにつられ、日経平均で1万2000円代前半、最悪の場合1万2000円割れも十分に想定される(※根拠なしに数字を列挙しているわけではないので、念のため)。

「最善の手」というものは後の世ですら分かりえないもの。党利党略や自己顕示欲、私益に捕らわれることなく、自国、そして周辺国にとってベスト(が無理ならベター)な手を導き出し、それを速やかに実行に移してほしいものである。……少なくとも様々な方面からの横槍で政治が半ば麻痺している日本よりは、はるかに政治決断スピードは速いはずなのだから。


(最終更新:2013/08/18)

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