ロボットらばBigDog、四足で山道を駆け登る

2008年03月22日 19:30

BigDogイメージ先日【株式系の画像掲示板】で腰を抜かすような動画に遭遇した。ハエが飛び交う、あるいはチェーンソーのような高音をバックに、謎の四足を持つ物体が山道を駆け上ってくる。2人の人間がしゃがみながら箱を被った、「欽ちゃんの仮装大賞」の練習かと思ったがまったく違う。四足で歩行機能をもつ、「四速歩行ロボット」だったのだ。調べてみると色々と興味深いことが分かったので、ここでまとめておくことにする。

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Boston Dynamicsに掲載されているプロモーション動画と同じものをYoutubeから。高解像版は会社ページにあるのでそちらもご参照あれ。

この「四足ロボット」、正式名は「BigDog」。直訳すると「大型犬」。【the Boston Dynamics】が開発している軍事目的用輸送ロボット。要は馬やロバのように荷物を運ぶ役割をこのロボットに担わせるのが目的のようだ。

「BigDog」はガソリンエンジンを動力とし、水圧式の駆動システムを装備。全長1メートル、高さ0.7メートル、そして重さは75キロほどのスペックを持つ。最新の動画では積載可能重量は400ポンド(181キログラム)とある。

荷物を運ばせている様子
荷物を運ばせている様子

BigDogには移動を制御するコンピュータやサーボ、センサー、ジャイロスコープなど各種「正常な移動を続けるため」の機能を搭載。どんな状況下においてもバランスを取り続け、指示された行動を続けるオートバランサーが働いている。当然内燃機関の調整(水圧やエンジン温度、バッテリーの残存量など)も別途行なわれているあたりは、通常の自動車などと変わらない。基本は遠隔操作だが、単純な歩行ルートなら放置していても良いらしい。

【解説ページ】によれば、BigDogは4mph(秒速1.8メートル・時速6.5キロ)で走行し、傾斜角は35度まで登れるとのこと。

Boston DynamicsではこのBigDogに対し、「人間や動物が足を運べる地球のどんな起伏のある場所でも、問題なく移動が可能なロボットを作る」という使命を与えている。そしてこの研究開発においてはアメリカ国防総省高等研究計画局(DARPA)から資金援助を受けているという。

ケリを食らったBigDog
ケリを食らったBigDog。
よろめきながらもバランスを取り、
体勢を立て直している

非常に興味深いのはこのBigDogが驚異的なまでの安定性を誇っていること。上記動画を見てもらえばお分かりの通り、斜面はもちろん横から突然ケリを入れられても、雪道のような足元が柔らかい場所でも、そして氷でつるつるな面やブロックが積み重なったような険しいぼこぼこ道でも、それこそホンモノの「らば」のように歩き回れる。さらに動画後半部分の研究室内でのケーブル付き走行部分にあるように、ちょっとした高さや穴ならジャンプして飛び越えることすらできる。

スノーウォーカーイメージ第一印象は冒頭にあるように「仮装大賞の練習」だったが、ロボットということが分かった上で頭に思い浮かんだのは、映画『スターウォーズ』に登場する【Snow Walker(スノーウォーカー、リンク先はペーパクラフト)】。現在は貨物輸送用として開発されているが、将来例えば上部に無反動砲などの砲身を搭載するようにでもなれば、ミニサイズのスノーウォーカーが戦車のように大挙して押し寄せる、という戦場の情景もありえるかもしれない。

しかも戦車と比べて悪路での走行も容易だから、機動性も高い(スピードは遅いが)。突然高音と共に大量の「BigDog」タイプの戦闘車両が現れたら、前線の兵員はそれこそ第一次大戦において戦車が初登場した時のように大混乱に陥ることだろう。そのような戦況が未来戦においてあるかどうかは別として。

ランニングコストや導入費用、耐久性など問題となる点はまだ多い。ただし最大のウィークポイントといえる「安定性」は見た限りではほぼクリアしているようなので、実用化の道のりはそう遠くないと思われる。現在はガソリンエンジンを用いているが、これを例えばバッテリー方式にして太陽電池を併用できれば、汎用性はさらに高まるだろう。

軍事用に限らずとも、例えば災害救助用としての用途はさまざまに考えられるし、山間部での開発現場でも活躍が期待できる。さらに話は飛躍するが月面などにおける宇宙開発の際にも十分に利用できよう。

二足歩行ロボットというと【ホンダのロボット「ASIMO」が自分で考え連係プレーも可能に】などで紹介したように日本の技術が一歩進んでいるようにも見える。しかしこのBigDogを見る限り、合理的に物事を考えて目的第一とした上でのロボット開発においては、このBoston Dynamicsが二歩も三歩も先んじているように見えてならない。もちろんそのような発想をするだけでなく、その発想に対してしっかりとサポートする体制や雰囲気が整っているかどうかという点でも、日本はまだ立ち遅れているのかもしれない。


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(最終更新:2013/08/10)

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