【更新】約束を反故にする大阪市、次々離れる企業。流出する人口……大阪はダメになってしまったのか

2008年03月10日 06:30

大阪イメージ先日[産経新聞]で少々驚かされる題名の記事を目にした。「『大阪市ほど信用できない組織はない』と近鉄 同意した海遊館の株売却が半年間塩漬け」というもので、約束を自らの都合で反故にした大阪市に対し、【近畿日本鉄道(9041)】があきれ返っているというものだ。また先に【日清食品が冷凍事業の新会社「日清冷凍食品」を設立・JTとの統合計画解消の結果】で報じた、[日清食品(2897)]の東京への本社機能移転の内幕も[読売新聞]に掲載されており、「大阪」という都市のバリュー(価値)はいったいどうなっているのか、という不安にかられてしまった。

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市長が約束したけど「儲けてるから売るな」と反発する大阪市議会

大阪市に対する近鉄の「『大阪市ほど信用できない組織はない』」発言の詳細は参照記事で確認してほしいが、簡単にまとめると「市長権限で売却に合意した3セクター事業の売却について、権限のない市議会から『黒字で優良施設だから売るな』『機能維持の保証がない』などとツッコミが入り、売却が延期されてしまった」というもの。原文にある通り、民間企業同志なら違約金ものの行為だが、代わりに大阪市が受けたのは民間企業からの大いなる不信感。

また、先日発表された日清食品の東京への本社機能移転については、安藤宏基社長は記者会見の中で、組織の効率化や行政関連の会合出席などの都合があると移転の理由を説明。そして大阪の「良さ」を認めつつも「道州制などで大阪に魅力が出てくれば、戻ってきたい」と述べ、「'今の'大阪には本社機能を維持するだけの魅力に欠ける」「(道州制の導入は現状では事実上不可能に近いので)大阪に戻ってくる可能性は低い」ことを暗に示唆した。

関西から人口が流出している現実

大阪は間違いなく関西圏の中心都市。関西で独立国家が形成されたら、大阪はその首都になるだろう。いわば大阪は関西全体と一心同体にあるといっても良い。その関西(≒大阪)において、人の流出が続き人口が減りつつあるというレポートが、奇しくも上記2記事とほぼ同じ時期の3月5日、【日本総研】から提示された。タイトルは【関西の人口移動】

レポートそのものは13ページに渡るものだが、簡単にまとめると次の通りとなる。

・関西からの、特に関東圏に向けての人口流出は継続中。
・密接な関係にある中国、四国、九州(西日本圏)との間では学生の流入が増えている。一方、就業の際の人口流出が増加している。
・本来関西を主軸として経済活動が営まれていた西日本圏では、それぞれの成長で関西との結びつきが薄くなっている。これが関西からの就業人口の流出の大きな要因。


都市圏の人口転入超過数推移。0以下の場合は減っているということ。大阪圏は1970年くらいからずっとマイナス(つまり人口減少)状態にある
都市圏の人口転入超過数推移。0以下の場合は減っているということ。大阪圏は1970年くらいからずっとマイナス(つまり人口減少)状態にある
2000年における関西圏の労働力などの転入超過数。0以下の場合は転出の方が多いということ。通学(縦線)の部分でプラスが多いが、あとはほとんどがマイナスであること、関東地域へ就業するために転出している人が多いことが分かる(あるいは西日本圏では関西圏をスルーしつつある、とも読める)。
2000年における関西圏の労働力などの転入超過数。0以下の場合は転出の方が多いということ。通学(縦線)の部分でプラスが多いが、あとはほとんどがマイナスであること、関東地域へ就業するために転出している人が多いことが分かる(あるいは西日本圏では関西圏をスルーしつつある、とも読める)。
上記グラフの1970年代におけるもの。関東圏への人口流出は今と同じだがその数は少なく、西日本圏からの就業者、つまり仕事を求めて・仕事に就くためにやってきた人が非常に多かったことが把握できる。
上記グラフの1970年代におけるもの。関東圏への人口流出は今と同じだがその数は少なく、西日本圏からの就業者、つまり仕事を求めて・仕事に就くためにやってきた人が非常に多かったことが把握できる。

さらにレポートでは「人口の減少は経済力の低下を導く。事態は深刻。最近は一時的に西日本圏からの人口流入が増えているが、これを維持するためには 1.成長分野の産業集積などで西日本圏の主軸としての地位を高める 2.域外から人を呼び寄せるような雇用拡大を図る 3.関西に集中している大学を単なる教育機関としてだけでなく、研究機関や就職などさまざまな面で強みを発揮させる などの改革が求められる」としている。

日本総研でのレポートでは、先にあるような施政の混乱については記載されていない。しかし近鉄への売却の件一つを見ても、「このような状況下で経済活動を続けても大丈夫なのか」と疑心暗鬼にかられ企業は少なくないだろう。さらに大阪を拠点として創業者から大阪を愛し続けていた日清食品をしても、(連絡や効率化の問題もあるが)「良さ」以上に語ることのできない「何か」があることを想像せざるを得ない。


大阪・関西は元々「日本のほぼ中心にある」というその位置関係から、特に船の移動において便利であるメリットを活かし、商業においても日本の中心的存在だった。「政治の江戸、商業の大阪」という言い回しは一度は耳にしたことがあるだろう。

交通機関が発達し、インターネットなどの通信網が整備され、距離的・移動経路的なメリットはほぼ無くなってしまったものの、大阪・関西がいまだに経済活動における中心足りうる場であることに違いはない。それにも関わらず、経済を支える最重要項目である「人間」が流出し続けている現実は、「何かがおかしい」あるいは「他地域と比べて努力が足りない」という推論を提示するのに十分な材料と考えて良い。

その「(努力すべき)何か」については、色々な噂や風の便り、推測があるが、ここでは例示しない。大阪・関西のそれぞれの該当部局の地位にいる人たちが、本来の「堺の商人」たる魂を持っているのなら、すでに分かっているはず、そして改善に向けて動くはずだからである。

今はそれを信じたいものだ。

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