三菱重工、国産ジェット機MRJの事業化を決定・事業会社「三菱航空機株式会社」を立ち上げへ

2008年03月29日 12:00

MRJ(Mitsubishi Regional Jet、ミツビシ・リージョナル・ジェット)イメージ【三菱重工業(7011)】は3月28日、次世代のリージョナルジェット機MRJ(Mitsubishi Regional Jet)の事業化を正式に決定すると共に、4月1日からMRJ事業を担当する新会社「三菱航空機株式会社(三菱航空機)」を設立、世界各国の航空事業への販売活動を展開していくことを明らかにした。日本企業がジェット旅客機の全機組立・販売事業へ進出するのは今件が初めて。三菱重工側では「当社がこれまでに航空宇宙事業で培った技術を駆使して、わが国航空機産業の悲願である国産旅客機事業に挑戦していく」とコメントしている(【発表リリース】)。

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MRJ(Mitsubishi Regional Jet、ミツビシ・リージョナル・ジェット)イメージMRJとは三菱重工業と国が共同で開発を検討している国産ジェット機で、【新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)】の助成事業として2003年から研究開発を進めている。高い経済性と快適性を兼ね備えた最新鋭の旅客機を目指して開発され、70人~90人乗りの小型ジェット機となる予定。全長は35.8メートル、翼長30.9メートル、全高10.0メートル。地域便向けの機体(リージョナル機)で、複合材の使用による軽量化を図り新型エンジンを搭載することで燃費の大幅な低減を実現し、収益性の向上に貢献している。

今回、先に【ANAが三菱重工の国産ジェット機MRJの25機購入正式決定】で報じたように【全日本空輸(ANA)(9202)】から正式な発注があったため、事業化の正式決定と新会社の設立が踏み切られたことになる。

設立される三菱飛行機ではMRJの設計や型式証明取得、調達や販売、カスタマー・サポートなどを担当。試作や製造、飛行試験は三菱重工業の名古屋航空宇宙システム製作所が行う。また三菱飛行機は当初資本金・資本準備金は30億円で三菱重工側が100%出資するが、事業が本格化するに従い増資し、最終的には1000億円程度にする予定。その際2/3程度は三菱重工が出資し、残りは[トヨタ自動車(7203)][三菱商事(8058)]【三井物産(8031)】【住友商事(8053)】、日本政策投資銀行に出資を願う予定で、すでに検討の要請をしているとのこと。なお同社の初代社長には三菱重工の取締役執行役員の戸田信雄氏が就任する。

三菱重工業側では新会社の設立で正式事業化したMRJについて、ANAの案件について2013年の就航を目指すとともに、各種商社や独立行政法人日本貿易保険の協力も得て海外での販売も拡大。民間航空機事業を軌道に乗せていくことで、三菱重工だけでなく日本自身の産業発展にも寄与していくと述べている。

日本の航空産業は第二次大戦の敗北以降一定期間の航空機開発を禁じられてしまい、技術の継承が一時的に事実上途絶えている。そしてその間に外資の航空機を利用する仕組みに取り込まれた関係で、国産機の開発が難しい状態(技術的、コスト的に)にある。かつてのYS-11型機はその苦難を乗り越えて果たされた「汎用旅客機」だったが、その後開発費用などの問題から再びこの分野は停滞時期を迎えていた。

今回のMRJに関するプロジェクトは元々がNEDOの助成事業であること、新会社に他の大企業や日本政策投資銀行の出資を求めていることなどからも分かるように、一種の国策事業と受け止めることもできる。エネルギー資源の高騰で省エネが叫ばれる中、ニーズは減るどころかむしろ増えつつある航空産業において、お得意の「省エネ」をアピールする形で日本発の機体が展開していくのはまさに「好機到来」といえる。

官庁間で下手な足の引っ張り合いをしたり、妙な横槍を入れることなく、スムースに事が進んでほしいものだ。そして10年、20年後には多くのMRJが世界中の空を飛び回るような状況を見てみたいものである。


■関連記事:
【三菱重工業(7011)、YS-11以来の日本国産ジェット機の概要を発表】

(最終更新:2013/08/09)

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