「底打ち、今後への期待」!? 景気動向指数、現状11か月・先行き10か月ぶりに上昇

2008年03月11日 19:35

景気イメージ内閣府は3月10日、2008年2月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、消費者・企業・雇用関係などの各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいるものの、昨月よりはやや改善の兆しが見られている。基調判断も先月の「景気回復の実感は一段と弱くなっている」から「景気回復の実感は極めて弱い」と下落傾向が留まったかのような表現に変わっているが、予断を許さない状況にあることには変わりない(【発表ページ】)。

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現状は底堅く、先行きは春以降への期待
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値についてはまとめページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】上ので解説済み。そちらを確認してほしい。

2月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス1.8ポイントの33.6。
 →11か月ぶりの上昇。「悪化」が減り、「変わらない」が増えた(※底打ちの雰囲気?)
 →家計は節約志向の強まりに変化が無い中、気温の低さから冬物商品が、食の安全問題から国産食材へのニーズが高まり上昇。企業は受注量の確保から上昇。雇用は減少傾向が続くが一部での採用意欲が底固いことから上昇。
・先行き判断DIは先月比プラス3.7ポイントの39.5。
 →先月比プラスは10か月ぶり。
 →商品価格値上げで消費意欲減退は続く。映像関係商品の好調さに期待。


改善、というよりは下落停止の動き

それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
景気の現状判断DI

先月のデータで懸念された飲食関係、そして他のデータの月次報告で内需の弱さを再認識させられている小売部門についても上昇幅に違いはあれどプラスに転じている。また、改正建築基準法の混乱によって急降下した住宅関係についても大きくプラスに振れている。俗に言う「プラ転」一か月目であるため安心はできないが、喜ばしい話であることに違いはない。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

現時点ですでにITバブル崩壊後の不景気時期にあたる2002年~2003年(日経平均株価が7000円台を記録)の時期の水準に近いことがわかる。2月は反転の兆しがみられたが、これが単なる踊り場でさらに来月以降再び下落するのか、それともここで留まり上昇に転じるのか、注意深く見守る必要があるだろう。

・反転の兆し
・今回はまだ
「雇用と全体の下落逆転」が
見られない
→底打ちはまだ先?

注意すべきなのは1月の際にも指摘したように「前回の急落時には、家計や企業、雇用動向DIにぶれがあったのに対し、今回の下落では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」こと。さらに最底値の際には雇用関連の指数が全体指数より下側に大きくクロスして落ち込む傾向があったのに、今回はそれが見られないこと。雇用スタイルが前回においては正社員中心だったことに対し、今回の下落時は正社員や契約社員、アルバイトなど複合化したことによる影響があるのかもしれない。仮に前回同様に「全体指数より雇用指数が下回らないと底打ちしない」というのであれば、もう一段大きな下落に備える必要がある。

一方、景気の先行き判断DIについては、現状認識より良い数字が出ている。「いくら何でも今が底だろう」という期待感もあるものと思われる。

景気の先行き判断DI
景気の先行き判断DI

特に住宅関係の数字の伸びが著しい。大臣認定ソフトの進捗状況や規制の一部緩和、遅ればせながらも官庁側の対応がなされてきたことなどがプラスに働いているのだろう。

2000年以降の先行き判断DIの推移
2000年以降の先行き判断DIの推移

「現状判断」と比べて反発度が大きいのがわかる。ただしこれも初月のことであり、例えば2001年頭のように微妙な上昇をしたあとに急速に下落する、という可能性も捨てきれない。2003年以降よく見受けられるようになった傾向「雇用指数が全体指数を大きく上回る」がまだ確認できないので、安心はできない。

発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計に関して事例を挙げてみると、

・客数は横ばい、減少。ただし総消費単価は上昇。上向きの傾向(ホテル経営者)
・食料品や日用品の動きをみると、それほど悪いという印象がない。ただ、すぐには影響が出ないようなマスコミなどの情報に翻ろうされている面もある(スーパー企画担当)
・客の買い控え傾向は強く、特に中高年において顕著に表れている(商店街代表)
・本当に必要なものしか買わないという慎重な買い方が続いているが、特に最近は、何もかもが値上がりするので、少しは我慢しようという客の言動がより多くみられるようになった(商店街代表)
・新年度になり、入学進学シーズンの需要が期待できることに加えて、北京オリンピック関連の販促も行われることから、液晶テレビやDVDレコーダーなどの動きが良くなることが期待できる(家電量販店経営者)


など、物価上昇など現状をしっかりと認識した消費者が節約に努め、消費そのものが抑えられている一方で、季節や年度が変わり、消費活動のモチベーションの高まりに期待する声も増えている。また統計を取ったわけではないが、業種によって景気の良し悪しにはっきりと差が出つつある雰囲気もうかがえる。


一か月程度の時間経過では、前回指摘した不景気要因「資源高騰という外部要因」「雇用形態の違いによる消費者の財力の減退(内需を支える力の不足)」という問題は解決できるはずもない。むしろ一部状況においては前回よりも悪化している場面も見られる。

それにも関わらず現状認識・先行き判断共にプラスに転じたのは、「今が最悪期で、これから良くなるに違いない」という期待感が大きく働いているものと思われる。

国の経済の現状や先行きを示す指針の一つである株価が低迷している現在、経済の先行きにはあまり期待できそうにもない。4月以降に起き得るであろうさらなる物価上昇(年度の切り替えタイミングにあわせた価格改定や、4月からの小麦価格の引き上げ・継続的な原油高が要因)は、年度切り替えや季節の切り替わりによる消費活動の活性化でほぼ相殺できることだろう。季節的な上昇気運に支えられる春先が過ぎるまでに、何らかの形で抜本的な景気対策・株価対策が打ち出されることを心から祈りたいものである。


■関連記事:
【企業も消費者も「景気悪いね」~景気動向指数悪化・ITバブル崩壊後に近づく】

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